小林秀雄の驚くべき一貫性
小林秀雄の講演集(文春文庫版「考えるヒント・三」)を読了。戦前、戦後で言論にブレの無いことに驚いた。まるで戦争など無かったかのように、或いは、戦争など人間の本質には係り無く、たいしたことでは無い、とでも言うかのように、彼は、人間の営み(歴史や文学や芸術)の深奥のみを洞察し続けている。
講演集ゆえ、平易な話し言葉はいつになく意味がよく通る一方、書き言葉と変わらぬ辛く晦渋な表現も多く、彼の真意がよく分からぬ個所がいくつもあったことを正直に申し上げる。僕が小林を本当に読みこなせるようになるにはまだかなりの精進が要りそうだ。
平成一六(二〇〇四)年三月四日