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「古典派からのメッセージ・2005年〜2006年」目次へ戻る
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皇統をめぐる議論に違和感あり

 

 

「皇室典範に関する有識者会議」の吉川弘之座長の発言にとても違和感を覚える。吉川氏によれば、今回の有識者会議では、皇室の歴史や伝統は議論せず、「現在の民意」の反映を心がけたとのことであるが、これは欺瞞である。そもそも、皇統をめぐる「現在の民意」なるものがアプリオリ(先験的)に存在しているのだろうか。私を含め民衆は、知識の持ち合わせも少なく、はじめからこの問題について明確な意見を持っていることなど少ないだろう。まさにそうした白紙の民衆に対して、歴史や伝統をよくよく勉強し消化し噛み砕いて説明するのが吉川氏ら「有識者」の役割ではないのか。それをしないで、一体彼らはどういう源泉と根拠から、あの「女系も可」「男女を問わず第一子優先」との結論を出したのか?

 

新聞の世論調査では、民意は彼らにおおむね賛成しているという。しかし、「有識者」が、男女同権であるべきだとか、現実に愛子さまがいらっしゃるとかいった民衆に口当たりの良い見解だけを出せば、民意は「特段反対する理由は無かろう」という程度の反応をするに決まっている。この世論調査の民意は、そんな消極的な民意に過ぎないだろう。歴史や伝統を踏まえた上で民意を問うてみるがいい。きっと違う結果になるに違いない。民衆は馬鹿ではない。民衆は歴史や伝統についての適切な説明を受ければ、それを鋭敏に察知する感受性を持っている。それに対して、歴史や伝統を嫌い、男女同権とか愛子さまの存在とかいった上っ面の事象しか反映させまいとするのが、「進歩的」な表情を装う無定見な日本の新聞なのである。要は、彼ら「有識者」たちは、歴史を踏まえた正統で保守的な見解を出して新聞的世論に反発されるのを恐れただけではないか。「有識者」たちの発言や立ち居振舞いには何の見識も性根も美意識も感じられない。一方では自信無さそうなおどおどした視線と表情、一方ではそれを打ち消そうとする高飛車な物言いと態度・・・。僕には、テレビを通じて、彼らのそんな姿しか見えてこない。

 

平成一七(二〇〇五)年一二月二〇日