鉄写るんです 4-M 〜 ケータイでも鉄写るんです! 〜

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田原坂の朝 (田原坂付近 2003.12)

恒例の当コーナーもいよいよデジタル化。といってもすでにデジタルが本コンテンツ画像の主流を占めているのはご覧の通り。ですから当然ただの「デジタル鉄写るんです!」では無いわけで……。

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当代「写ルンです」周辺事情

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(フィルムの)使い切りカメラ市場は元気がない。

当然だろう。「撮ってすぐ見られる」デジタルカメラの進出、それを追ってカメラつき携帯電話の普及。今ではカメラのついてないケータイのほうが珍しくなった――と以前なら書いたはずだがそれはもう昔、すでに「メガピクセルカメラのついてないカメラつきケータイのほうが珍しく」なってきてしまった。

VGA以上の画素数を持つデジタルカメラならWebコンテンツ作成等には十分な実力を持っている。SXGAとなるとその4倍の精細度だ。印刷もA4だとさすがに厳しいけれど、はがきやLサイズなら十分。

それだけの能力をもつメガピクセルケータイの、実際の力はどの程度なのだろう、鉄道撮影にも使えるだろうか?

ということで今回「鉄写るんです!」のターゲットとして選んだのは、作者所有のNTTドコモ「N505iS」のカメラ。撮像素子は有効122万画素(1280×960)のCCD。焦点距離は不明だが広角レンズ、35mm判換算での35mmくらいと思われる。F値は4(固定)。


メガピクセル・ケータイで「鉄写」

あれこれいうより現物を見るのが早いだろう。

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この光景も昔語りに (水俣 2003.12) [i-Shot(L)] 国鉄色の復活が相次ぐ (網走 2004.3) [i-Shot(L)]

基本撮影スタイル。メールで送れる"i-Shot (L)"サイズである。「ヨコ撮り」方式も増えてきてはいるが、多くのモデルでは縦位置での撮影が基本なので、「キヨスク写真」には好適である。


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栢山-開成 2004.3 [SXGA] 武蔵小杉 2004.2 [SXGA]

フルサイズ(SXGAモード)で撮影した画面(リンク先は原画像)。小さいレンズに撮像素子だが、なかなかの描写を見せている。


「画」を作り込む

……とこれだけで終わっては面白くもなんともない。無理を承知でもっと踏み込んだ「鉄道写真」に挑戦しないと。

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登戸-中野島 2004.2 [i-Shot(L)] 新横浜 2004.1 [i-Shot(L)]

走行写真。シャッターラグが大きいので、来るとわかっているちょっと手前でのレリーズ操作が必要。さじ加減は何度も試行して会得するしかない。

夕方〜夜なら「流し撮り」はどうだろう。先頭部を一点に止めるようにファインダー像に注意して、ゆっくり振り切る。

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箱根登山鉄道 (小田原 2004.3) [SXGA]

「夜景モード」での撮影 (リンク先は原画像)。約1秒の露光でこのような画像となる。暗部がノイジーだが、車体はなかなかよく表現している。

長時間露光だから、当然本体の保持が問題となる。この場合は手すりに本体を置いたり押しつけたりして撮影した。N900iでは充電ホルダーに三脚穴がついているそうだ。


そうは言っても……

ということで、いまどきのケータイは「デジタルカメラ」としてなかなかの実力を備えていることはおわかりいただけると思う。しかしケータイであるがゆえの弱点や、まだまだ作り込まれていないなという部分も存在するわけで……。

画質

レンズ、画像生成エンジンなどは、さすがに本格的な一眼レフや中〜上級コンパクトカメラとは比べること自体酷だ。AFも出てきているものの固定焦点距離が中心とあって平板な印象を与える。画角も広いので長焦点の特徴である圧縮効果は得られない。

レンズ一体型のデジタルカメラではほぼデジタルズームを備えているので、見かけ上の望遠撮影は可能。ただ、画素を間引き補間しているので、当然ながら画質は落ちる。元サイズで撮ってトリミングするのとどちらが良い画像か、思案のしどころだ。

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SXGAからトリミングしたもの i-ショット(L)サイズでデジタルズーム

マナーがいろいろ言われるケータイならではの宿命か。撮影すると(たとえマナーモードでも)レリーズ音が派手に鳴り響く。ケータイでの盗撮が問題になっているからしようがないけれど、車内とか、静かな所での撮影はどうも気が引ける。まだ一眼レフのほうがマシだったり……

スミア

強い点光源が画面に入るといわゆる「スミア」、CCD光スミア現象が生じる。撮像素子に入ってきた光はCCDで電荷に変えられるが、光が当たりすぎると電荷があふれ、構造上あふれた電荷は隣の素子、そのまた隣の素子……と影響してしまう。

太陽が入ると簡単にこの現象が発生してしまうので、夕空のシルエットなどはまだ苦手のようだ。

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強烈なスミアが発生した場合 (開成-栢山 2004.3) [SXGA] 夕陽が雲の後ろに隠れた (栢山-富水 2004.3) [SXGA]

タイムラグ

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大失敗! (朝里 2004.3) [SXGA : デジタルズーム(x2)]

本来カメラではないしもともとスナップ目的だからそれを要求するのは筋違いというものだが、何にしても個々の操作に対する反応が「遅い」。

撮影後、JPEG画像を作るのに2秒。登録ボタンを押して2秒。再起動に2秒。自動登録にしたとしても、保存するのに最低5〜6秒は要する。連写など望むべくもない。

一番弱いのは肝心のシャッターレリーズだ。ボタンをおして0.3秒。うるさいシャッター音が鳴り響いてからようやく撮影となる。これで何度チャンスを逃したことか! って、そういう用途に使うものでないと言われればそれまでだが……。


で、結論…

というわけで、風景の中を走るとか、正面がちにとらえるといった用途にはなかなか「使える」ものではないか……という、ある程度当たり前ともいえることが、今回のテストから得られた結論である。

といってもこんだけのものが撮れるんですね。1995年のQV-10からまもなく9年。あのころのデジタルカメラに比べたら格段の進歩です。

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ドーム駅の表情 (淀屋橋 2004.1) [i-Shot(L)] 日本海を横に (朝里-張碓 2004.3) [i-Shot(L)]
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春の息吹 (開成-栢山 2004.3) [SXGA]