北陸東海私鉄探訪 part-1
都会のローカル線
金山 6:41-6:44 神宮前 6:50-6:56 大江 7:20-7:23 東名古屋港 7:25-7:28 大江 7:37-7:47 金山 8:08-(5208F)-8:53 豊橋
7月22日。いくぶん雲が多いが、きょうも暑くなりそうだ。
大江から東名古屋港に向かう名鉄築港線は、純通勤路線で朝夕の時間帯しか運転していない、とか、横にHSSTリニアモーターカーの実験線がある、とか、途中に旅客線としてはめずらしい90度の平面交差がある、など数々の特徴をもつ「都会の中のローカル線」である。これらは結構知られているが、ここで純粋な「スタフ閉塞」の取り扱いが行われていることはあまり知られていないようだ。
スタフ閉塞とは非自動閉塞の一種で、単線の閉塞確保に「スタフ」という頭に印 (この区間の場合は「△」) をつけた棒を通行手形に使用する。スタフは1本きり、入れる列車も1本きりで安全が確保されるという、もっとも原始的な閉塞の形態である。
終端駅での運転取り扱いをしなくてよいので、ほかは自動閉塞でも末端だけスタフ閉塞にしているという例は数多い。今回の旅程内でも、のと鉄道(珠洲〜蛸島)、越美北線(越前大野〜九頭竜湖)、長良川鉄道(美濃白鳥〜北濃)で使われている (北鉄石川線 鶴来〜加賀一の宮は?)。似たような純通勤路線で、つい先日までキハ35が走っていた山陽本線「和田岬線」(兵庫〜和田岬)もスタフ閉塞。
棒を使ってこそスタフ閉塞なのだが、取り扱いの簡便化から大抵はタブレット (真鍮の玉) で代用されているので、見た目には通票閉塞と区別がつきにくい。しかしながら、理由は不明だが、ここでは本物のスタフを使っていた。話には聞いていたが、実物を見るのははじめてである。タブレットとは比較にならないほどデカい。その分キャリア(輪っかの部分)は小振りだった。
3分で着く東名古屋港は実質的に無人で、そのまま折返した。運賃の精算は大江の乗りかえ通路で行う。ことごとく「和田岬線」と似ている路線だ。窓口で買ったきっぷは硬券だった。
伊那山中ゆっくり模様
豊橋 9:05-(21M:伊那路1号)-11:29 飯田 11:34-(1425M)-13:56 岡谷
2001年4月1日、飯田線の天竜峡付近で、天竜川の河岸改修に伴い線路が移設された。私の「乗りつぶし方」は、改キロがある線路移設では走破記録が無くなる。移設区間は3kmあまり、そのために200km弱の飯田線を全線通るというのは避けたかった。バスで飯田を訪れてどうにかしようとも検討したのだが、結局飯田線全線を経路にした。〔伊那路1号〕は指定席の差額がちょっともったいないかなというほどの空きよう。
飯田線特急〔伊那路〕の表定速度はつい最近までJR特急のワースト記録であった。それもそのはずで、特に豊川〜飯田の間は勾配に急カーブ、短い駅間にスプリングポイントと25km/h制限、見通しの悪い第4種(無警報機、無遮断機)踏切……高速化を阻む要因だらけの路線なのだ。名古屋〜飯田は高速バスが直結するので、鉄道ではもとより勝負にならず、どちらかというと観光列車と言える。
列車は天竜川に沿って北上する。一時期その名前からブームになった小和田は、いまはひっそりとしていた。天竜峡を発車するとすぐに新線。改キロがあったのは川路〜時又(1.9→1.8)だが、移設区間は天竜峡〜時又(3.4→3.3)である。途中、移設した川路駅にはトイレがないそうだ。「列車内で用を済ませてほしい」とはJR東海。JR西日本や四国ではトイレ無し、用は駅でという様子で、JR内でも会社によりトイレの考えに微妙な差が見られる。ところできょうの〔伊那路〕、3両編成に一つしかないトイレ・洗面所が故障して水が出ない。たまたまきょうは空いていたからいいものの、優等列車でそれはマズいと思うんですけど。さておき、列車はまだ白い道床がそれと示す新線を軽やかに走り、時又を通過して全線完乗を回復。これのために都合5時間……自然災害、別線復旧ということもあり得る、これからまた悩まさせてくれそうな長大ローカル路線である。
飯田から岡谷までは普通列車、ここにしか走っていない119系にはじめての乗車。中央の戸袋窓が片方だけ埋められているのは何故? 各駅停車で約2時間は次第に乗客が増えてなかなか身動きが取れず、また辛抱の道中。北端に近い伊那松島では基地見学会が行われており、ED11・EF58などが並んでいた。
岡谷 13:58-(1539M)-14:23 松本 14:30-15:00 新島々 15:22-15:52 松本 19:18-(8054M:あずさ84号)-21:58 立川
辰野まで来るとなんだか西の雲行きが怪しい。塩嶺トンネルを抜けると大粒の雨が車窓を打ちだし、またたく間に吹き降り。しかし塩尻を過ぎると止んだ。松本から松本電鉄上高地線にのりかえ。するとまた雨が降りだし、下新付近で前も見えなくなるくらいの大雨に。車輪が空転し、床下のモーターが唸りをあげる。それもつかの間、三溝であがり、新島々につくころには再び日が射しこむほどに……。
連休最終日、上高地方面から帰る人で車内はかなりの混雑。下り電車の撮影でもしようかと三溝で降りようとしたが、その一つ前、森口駅で交換してしまった。しまった、間隔が短いことを新島々で確認していたのに。結局そのまま松本へ戻る。留置線には新〔あずさ〕E257系、構内に国鉄色の183系、185系〔はまかいじ〕が停車していた。さて、帰りの〔あずさ〕まで約3時間。なかなか行く機会のなかった、松本城に行ってみようか。