2002〜2003私鉄まだまだ走破中

六甲・東播のりつぎ行 - 神戸電鉄・三木鉄道 -


小倉 8:11-(ひかり360号)-10:23 新神戸 10:41-10:48 湊川公園/湊川 11:01-11:46 (神)三木…(三)三木 12:38-12:51 厄神 12:53-13:06 粟生 13:08-13:30 北条町 13:40-14:02 粟生
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抑速ノッチを備える神戸電鉄1100系の制御器

小郡付近まで降っていた雪のため定刻から5分ほど遅れて、「ひかりレールスター」で新神戸に降り立った。2003年1月4日。今日と明日で神戸付近の私鉄を乗り回す。

まず地下鉄山手(やまて)線で湊川(みなとがわ)公園へ向かう。改札を出て連絡通路の先、やはり地下駅の湊川が神戸電鉄の始発駅となっている。電車は一駅先の新開地(しんかいち)まで足を延ばしているがここは神戸高速鉄道の区間で、前に乗ったことがある。

標高約5m(地表)の湊川を発車した電車は地下トンネルを抜け、さらに勾配を登る登る。「50パーミル」 = 1000mにつき50mの高低差という全国屈指の勾配で、標高約300mの鈴蘭台まで一気に駆け上がって行く。JRの最急勾配は40パーミル、私鉄でもこれを超えるというと、80パーミル(箱根登山鉄道)、90パーミル(大井川鐵道、アプト式)いずれも観光向けの鉄道だから、都市鉄道としては最も急な坂であるといえる。当然というべきか、電車はすべて抑速(よくそく)ブレーキを持つ。

鈴蘭台から三木線に入っても山坂道が続く。トンネルを掘りたくなかったのだろう、多少の山は勾配で乗り切ってしまう。都心から離れるにつれのどかな風景が車窓に広がってくるが、駅に近づくと規格化された住宅地が出現するのが大都市近郊らしい。そんな光景をくり返して約40分、窮屈そうにカーブした駅の三木に到着した。


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美嚢川

神戸電鉄の三木駅と三木鉄道の三木駅は、美嚢(みのう)川をはさんで反対側にある。行かないと知らないもので地図を見るまで気づかなかった。乗り換え案内を何度調べてもこのルートが出てこないはずだ。1kmもないので歩いて行く。河原に出ると風が強いが、陽射しのあるあいだは暖かい。


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まだ国鉄の香りが残る (三木) 折返し中のミキ300
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昔の雰囲気を残す改札口 (三木)

終点の粟生から北条鉄道を先に乗るか、三木鉄道から先に回るか。どちら周りでも所要時間は同じで、北条鉄道から回ると厄神(やくじん)と三木でそれぞれ30分の待ち時間、三木鉄道を先にすると三木で50分ほどある。お昼時でもあるしまとめた方がよかろうと思った。

川沿いをすこし歩いて南に向かうと古びた駅舎が見えてきて、それが三木鉄道 (国鉄三木線) の三木駅。しばらくすると厄神からの列車が到着し、スタフと思われる通票を渡してしばらく休憩する。三木線は全線1閉塞だ。

30分ほどの休憩ののち発車、途中乗降のない駅はドアを開けずに発車する。約10分で厄神、加古川(かこがわ)線上りが到着しており、すぐに下り列車もやってきた。全線の電化が決まり、すでに架線柱になると思われる鉄柱が立ちはじめていた。10分程度で加古川線上り、神戸電鉄そして北条(ほうじょう)鉄道の車両が集う粟生(あお)に到着した。


純正レールバスに酔う (本当に!) - 北条鉄道 -

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北条鉄道レールバス (粟生)

粟生で待っていた北条鉄道の車は純正レールバス・フラワ1985-1だった。バスボディも生産する富士重工の製作した第二世代のレールバス「LE-Car」で、前面は1980年代の路線バス風、側面は横引き違い窓で観光バスの風貌だ。

「レールバス」とはその名の通り線路の上を走るバス = バスボディの鉄道車両で、1950年代に国鉄ローカル線向けに登場した。バスなのでアクセルペダルやシフトレバーを運転席に備える。長さや幅も鉄道車両よりずっと小さいバスサイズ。大きさが中途半端なうえ2軸単車で乗り心地も悪かったのですぐに消え去った。以後、南部縦貫鉄道に長く残っていたのはご存じの通り。赤字ローカル線省力化の切り札として期待されたらしいのだが、ローカル線ともども消えていったことになる。

第二世代が登場した1980年代は国鉄の特定地方交通線廃止が始まった頃で、引き受ける第三セクターの経営を維持する低コストの車両が求められた。今度はさすがにもっと鉄道車両然としていて、運転席はマスコンとブレーキハンドルで重連も可能だし、枕バネは空気バネ、車内は冷房、とサービスレベルは向上している。

しかし第二世代も三セク創始期の数線 (樽見鉄道、三木・北条鉄道、名鉄) に投入された程度で、以降はボギー車、さらに大きな (国鉄標準型よりはすこし小さめの) もう「バス」とは呼べない車両が標準となった。結局、レールバスは鉄道としての輸送力には足りず、レールバスでやっていける輸送量だと鉄道そのものが向いてない、ということを再度明らかにしただけのような気がする。三木鉄道はボギー車に置き換えずみ (1両残っているという話だが所在不明)、北条鉄道も残りはこの1両だけになった (1両が紀州鉄道へ譲渡)。


実際走り出すと長続きしなかった理由がわかる。どうしても左右動が大きくなるところで空気バネの弾性からフワフワと大きく振られ続ける。振子車でも特に酔わない私だがこれにはちょっと気分を悪くした。通常乗り心地がもっとも良いとされる中央部に座っていたのに、暖房のせいもあったのか。

25分で北条町に到着、ふと見るとスピードメーターが0km/hと20km/hの間を激しく行き来している。バスのタコメーターをそのまま使っているのだろう。北条町は駅前に道路を整備していて、駅舎も建て替えられていた。ほかに交通機関も見当たらないのでそのまま折り返す。座席の端に座った。どうせならしっかりと振られたほうがいいみたいだ。終着粟生でふたたび加古川線と神戸電鉄の車両が集う。

「レールバス」という名称自体は時刻表や各鉄道の案内にちらほら残っているが、それは単行ワンマン気動車ということとほぼ同義で、JRでもワンマン化を押し進めている今では再び死語となりつつある。


さらに乗換え行は続く - 北神急行・神戸市交通局・神戸新交通 -


粟生 14:14-15:04 鈴蘭台 15:10-15:45 横山 15:51-15:59 ウッディタウン中央 16:04-16:16 三田 16:27-16:45 有馬口 16:48-16:52 有馬温泉 16:55-16:59 有馬口 17:00-17:11 谷上 17:14-17:22 新神戸 17:48-17:50 三宮…三宮・花時計前 18:20-18:29 和田岬 18:38-18:42 兵庫 18:45-18:48 神戸/ハーバーランド 19:24-19:35 新長田 19:43-19:54 三宮/三ノ宮 20:06-20:13 住吉 20:20-20:31 マリンパーク 20:33-20:44 住吉 20:55-21:01 三ノ宮

新神戸から計14本の電車・気動車を乗継ぎ谷上(たにがみ)に到着、となりのホームに停まっている地下鉄線直通列車に乗り換えた。乗り換え用ホームを間に作り、神鉄の上下線とも同じホームにつけて利便を図っている。

北神(ほくしん)急行は六甲山を貫くほとんどがトンネルの鉄道、発車するとすぐにトンネルに入った。途中左にリス、右にカモメの照明が流れていることはかなり前にニュースに取り上げられたのでどんな風に見えるか気になったが、すぐに終わってしまい、つまらない。長大トンネルのため避難所が南北2ヶ所に設けられている。建設当時の斜坑を避難路として使用できるのだろう。

8分走って新神戸に着くと乗客がどっと増えた。運賃の高さが災いして旅客が伸び悩み、経営悪化した北神急行は2002年4月、鉄道施設を神戸高速鉄道に譲渡して第2種鉄道事業者になった。平面のりかえと言わず、いっそ直通すれば高くても利用が見込める気もするけれど、神鉄・地下鉄のどちらも特殊な車両で、軌間も異なっていてはそう簡単には行かない。


三宮・花時計前(という駅)から地下鉄海岸線で和田岬(わだみさき)へ向かう。海岸線が開業した後の存廃が取りざたされた山陽本線・和田岬支線。意外にも電化して「アーバン・ネットワーク」の仲間に入ってしまった。

この路線は気動車「キハ+キクハ」の時代に乗っているが、電化後の様子も見ておこうと再び訪れてみることにした。朝夕にしか列車がない、しかも休日はたった2往復ということで有名だが、きょうは土曜日ダイヤのはずなのでまだ列車はある、とコンコースを急いで地上に出る。

8分程度で乗継げるかと思ったら、出口のすぐ先にJRの和田岬駅……と、駅名標の照明が消えている。もしや日曜扱い? と思ったが、列車待ちの人がいる模様。しばらく待っていると、向こうから前照灯が近づいてきた。

いつもなら退勤客でもっと多いのだろうが、きょうは数人。103系の6両編成で運ぶような数ではないが、気動車と違って途中では切れない。

カーブにさしかかる頃、川崎重工の車両工場脇を通る。完成間近の近郊E231系と思われるステンレスのボディが左に見えた。高架の下、専用ホームに到着。電化直後はあったという通票キャリアは見当たらず、しばらく後に自動化されたらしい。実質「無賃乗車」なので、兵庫駅の専用改札脇で和田岬発の乗車券を買う。

東海道本線の終点および山陽本線の起点駅であるJR神戸から、再び海岸線 (ハーバーランド) に乗り込み新長田へ。全国3番目のリニア地下鉄だ。ところで神戸の地下鉄では国内ではじめて女性専用車を「終日」設定していることが特徴(現在は試行期間)。まだ昼間など必ずしも守られているとはいえないようだが……。


六甲ライナーを今日行くか迷ったが、結局三ノ宮からJRに乗り込み住吉に向かった。すぐ上にライナーの駅がある。ポートライナーと同じシステムで、先頭部は前向き座席になっている。

アイランド中央でほとんど乗客も降り、終点のマリンパークでは一人。駅を出たが特に大したものも見当たらないので、また改札を入った。無人運転、乗客もいないので先頭部に座ると、前に神戸の夜景が広がった。六甲山の中腹まで灯が見え、すぐ背後に山が迫る地形と都市化の強さを実感する。左のガラスがすこし見えにくいと思ったら、「瞬間くもりガラス〜一部区間でくもります〜」という表記が。開業直後、沿線住民から「車内から部屋がまる見え!」とクレームがついて、西側の窓を自動的にすりガラス状にする装置が導入されたと記憶している。