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眠りの森の美女:アスィルムラートワ、キーロフバレエ    (2005.05.15改)

私のバレエ映像のコレクションでは、「眠りの森の美女」が、全幕ものだけでも20種類ほどと圧倒的に多いのですが、その中で、これは、最も好きなもののひとつで、主役は、アスィルムラートワとザクリンスキーという美男美女のカップルです。私はキーロフ・バレエ団出演の「眠りの森の美女」(全幕版)を合計4本持っていますが、この中でも内容的に最も充実していると思います。 ちなみにキーロフ・バレエの「眠りの森の美女」の主役のオーロラ姫は、映像の古い順に、アラ・シゾーワ、イリーナ・コルパコワ、リラッサ・レジュニナそして、今回のアルティナイ・アスィルムラートワです。なお、このビデオは輸入版で、おそらく国内では発売されていないと思います。
 
オーロラ姫のアスィルムラートワ、デジレ王子のザクリンスキーは、実際のカップル。相愛の夫婦による主演で、また違った楽しみがあります。私は、アスィルムラートワの「ラ・バヤデール」と「海賊」の映像を持っていますが、このオーロラ姫が、最も彼女に合っているように思います。
プロローグが終わって、第一幕のオーロラの出。スレンダーで美しいアスィルムラートワが軽やかなステップで登場。明るい笑顔がとても輝いています。思わず素敵なオーロラだなと感じる一瞬です。
ひとしきり踊ってローズ・アダージョ。お目当てのバランスの場面にさしかかると、それまで白い歯も覗いていた明るい笑顔が一転険しい表情に変わりました。でも、踊りは素晴らしかった。 一般に、ロイヤルなど西欧のバレリーナに比べて、キーロフやボリショイ等ロシアのバレリーナは、離した手を高く上げず、バランスも長く保たないのが普通ですが、このアスィルムラートワは、しっかりアンオーまで手を上げて、たっぷりと長〜いバランスを見せました。プロムナードの回転中、王子の手を握っている時は、支えの腕がかなりギキギクと揺れて、体を支えるのにかなり苦労しているようでしたが、手を離して独り立ちのポーズにはいると揺れをグッと堪えて、ピタッと決めるのです。 それにしても、笑顔を忘れて懸命に難しいバランスに挑んでいる彼女の努力には感動を覚えます。思わず頑張れと言いたくなる瞬間ですv。無事踊り終えてのレヴェランス、ホッとした美しい笑顔が印象的です。観客も興奮したのでしょう。一度引っ込んだ彼女、観客の拍手はなりやまず、また舞台に引っ張り出されました。
ローズ・アダージョでは、バランス以外にも、新しい発見がありました。求婚者達から貰った花を貰った花をポーンと投げるのではなく、大事そうに床に広げるところなどは、非常に丁寧な感じで良かったと思います。
 
また、第一幕終盤、オーロラ姫がカラボスの毒針にさされて倒れる場面。すごい迫力です。針に指された痛そうな表情。必死に「大丈夫、大丈夫!!」と言っているようにしながら、ついに倒れてしまう。アスィルムラートワ、入魂の名演です。 どんなに彼女が精魂込めて踊っていたかは、倒れた彼女、息絶え絶えになるくらい大きく胸が波打っていたことからもわかります。 
 
第二幕の幻想の場、アスィルムラートワは、恋を知った乙女をとても巧く表現していると思います。ザクリンスキーのサポートもとても丁寧で上手でした。
 
そして第三幕グラン・パ・ド・ドゥ、アスィルムラートワの魅力全開といったところでしょう。終始にこにことして、踊るのが楽しくてたまらないといった感じ。彼女は、結婚式の幸せ一杯の気持ちを、体全体で表現していて、見ている方もうれしくなってしまいます。アスィルムラートワとザクリンスキーは私生活でも新婚早々の頃でしょうから、おそらく彼女自身も、物語の中で、自分自身の幸せに浸っていたのではないでしょうか。 また、王子のザクリンスキーは、このうえなくノーブル。といってもなよなよしているわけではなく、踊りはとてもダイナミック。アダージョでは美男美女が息がぴったりのすてきなハーモニーを奏でます。うっとりとして見とれてしまいます。ザクリンスキーは、アダージョでは長身のアスィルムラートワをデリケートに、しかも、しっかりと支えていて、アスィルムラートワもザクリンスキーを頼り切っているようで、本物のカップルでなければこうはいかないと思わせる、微笑ましさを感じさせます。 アスィルムラートワがポーズを決めた時、サポートしている背後で「うまくいって、よかったね。」と、やさしげに語りかけているかのようなザクリンスキーの表情が美しかった。 そして極め付きは、アダージョのフィニッシュでフィッシュダイブを決め、観客の拍手の中、ザクリンスキーがアスィルムラートワを抱き起こした時、二人は感極まったのでしょう、思わず口付け。なんとも、微笑ましい光景でしたv
 
もうひとつ、青い鳥のパドドゥのフロリナ王女をイェレーナ・パンコーワ、サファイアの精をラリッサ・レジュニナが踊っているのも楽しみです。フロリナ王女のパンコーワも良いですが、サファイアの精はキュートなレジュニナにぴったりの役だと思います。 この映像撮影より数年前、主役のオーロラ姫を踊った映像がありますが、この時はまだ18才でハラハラするくらい心許ないところもありましたが、このサファイアの精は生き生きとしていて非常にかわいらしくて素敵です。
 
ただし、このビデオは映像が非常に暗いのが残念です。特にプロローグがひどい。見えるのはスポットライトのあたっている部分だけで、奥の方などは全くみえません。せっかくのキーロフの豪華な舞台が台無しという感じです。最近古い映画でも、リマスタリングで見違えるように美しい映像に蘇ったものもあります。ぜひこのビデオも新しい技術で改良を施し、DVDで再発売して欲しいものです。
 

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