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くるみ割り人形:草刈民代、牧阿佐美バレエ   (2005.12.17)

クリスマスの雰囲気を少しなりとも味わおうと、例年通り、バレエ「くるみ割り人形」を楽しみました。
今年は、牧阿佐美バレエ団。牧阿佐美バレエ団の「くるみ割り人形」は、とても好きで、古くは学生時代に斉藤弘子さんの金平糖の精、数年前は上野水香さん・・・と、よく見に行っています。日本では、このバレエ団ほどたくさんのスターダンサーを輩出したバレエ団はありません。牧阿佐美さん、大原永子さん、森下洋子さん、川口ゆり子さん、酒井はなさん、志賀三佐枝さん、上野水香さん・・・。故橘秋子さんが、日本で初めての橘バレエ学校を開設し、「日本人の心」を大切にした日本人ならではのバレエを目指して、美しい身体表現のみならず美しい心をつくるレッスンを行い、単にダンサーを育成する場としてではなく、優れた人間形成を目指してきた結果でしょう。昔、真冬に、水が叩き落ちてくる滝の真下にダンサーを立たせて修行させ、「滝に打たれるバレリーナ」と話題になったこともあります。精神鍛錬のためとはいえ、今では考えられない大胆なことをやったものです。
でも、このバレエ団、ダンサーの多くが他のバレエ団へ移ってしまい、現在スターと言えそうなバレリーナは草刈民代さんひとり。やや寂しい気がします。
 
クライマックスの金平糖の踊りは、笠井裕子・京當侑一籠、草刈民代・逸見智彦、田中祐子・菊地 研のトリプル・キャストでしたが、やはりプリマの草刈民代さんの出演の日を選んでしまいました。
 
今回の「くるみ」、プティパ/イワノフ版を、三谷恭三氏が演出・改訂したもの。クララ役は関口敦子さん。とても可愛らしく、甲がきれいで、踊りは柔らかく丁寧で、仕草も自然でした。最初のうち、ちょっと表情が固まって、かなり緊張していたようでしたが、1幕後半から笑顔が戻りました。
雪の女王の橋本尚美さん、とっても素敵なダンサーです。美しい笑顔、比較的小柄ですが、スタイルもほっそりとしてグーという感じ。踊りも軽やかで、靴音をほとんどたてないのはさすがでしたが、ちょっと力任せと感じたパもあり、もう少し柔らかさがあったら、なお素敵だろうと思いました。
逸見王子、顔はちょっと女性にも見える中性的な感じなのですが、踊ると、これがまた頼もしい感じでとても良いのです。クララに向ける笑顔はとても優しいく、人柄が滲み出ているようですし、クララへのサポートも、とても良く気を使っていたようでした。
 
第2幕、草刈民代さんが登場して会場が沸きました。草刈民代さんはやっぱりスター。濃いピンクのチュチュがよく似合い、登場したとき、キラキラしてまぶしいほどで、上品で プリマになる為に生まれてきたというような「華」のある人でした。ただ、踊りは、マイムはとても優雅で美しかったのですが、ちょっと足が弱い感じがして、パ・ド・ドゥのヴァリエーションは特にそれが気になってしまいました。 アダージョは逸見さんのサポートに助けられて、とても優雅に踊っていましたが、アラベスクで高く上げた足が幾分曲がって見え、美しさを損なっている感じが残念でした。 それに、草刈さんのトゥシューズの音が、結構大きいのも気になりました。もう少し静かに着地して欲しかった。最後の決めのポーズの時に少しグラッとしてひやっとさせられましたが それは経験豊富な草刈さん、すぐに建て直し次のパへ繋いだのはさすがでした。
逸見さんは、アダージョでの草刈さんのサポートは丁寧でしたし、素晴らしいヴァリエーションを見せて、会場を湧かせました。また、コーダでは、やや二人の息が合わないようなところもありました。 でも、最後のフィッシュダイブ、飛び込んでくる草刈さんを、逸見さんはしっかり受け止め、大きな拍手を受けました。それまであまり表情が優れなかった草刈さんも、思わず「やった!!」というような笑みがこぼれました。 草刈さん、以前観た映像に比べると、やや調子が悪かったのかもしれませんが、あらためてプリマの貫禄を感じました。
 
その他では、スパニッシュの吉岡まな美さん、リズム感溢れた素敵な踊りでした。 ただ、雪の国や花のワルツなどの群舞では、振り付けが曲の美しさを生かし切れていないような気がしました。 特に花のワルツは、コールドバレエが不揃いなのと靴音が大きいのが気になりました。ここで盛り上がって、金平糖のグラン・パドドゥでクライマックスといくところですが、不揃いなコールドの踊りと大きな靴音が、この盛り上がりを損なっているように感じてしまいました。
一方、クララ役の関口敦子さんを筆頭に、子供たちの姿勢のよさと、綺麗な身のこなし、足のさばきに感心しました。少女たちが、かわいいつま先で、ぴたっとポジションを決めていました。
 
今回の「くるみ」、草刈さんの踊りには、やや期待はずれと感じたところもありましたが、プリマだって生身の人間、常に完璧とはいかないときもあるもの、精一杯踊ってくれた彼女に、これは贅沢というものでしょう。バックのオーケストラもヴァイオリンの音が特に綺麗で、雪の国の女性コーラスも美しく、久々にファンタジーなバレエを堪能できました。

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