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マーゴ・フォンティーンの「眠りの森の美女」   (2019.11.15)
バレエの魅力にとらわれてから現在に至る50年間で、最も感動したのがこのステージです。 マーゴ・フォンティーンが「眠りの森の美女」で東京バレエ団と共演した舞台です。 私は、半年前にチケットを買い、この日がくるのを今か今かと待っていましたが、期待に違わず素晴らしい舞台でした。
 
第一幕、フォンティーンが小走りに階段を下りてきたところから、舞台に釘付けになってしまいました。。 フォンティーンのオーロラは、初々しくて、可愛らしくて、既に50歳を越えているなんて、とても信じられませんでした。
ローズ・アダージョ」が始まった途端、ドキドキし、息をのむアチチュードのバランスは時間が止まったようでした。私は、体が硬直したようになって見入っていました。
「ローズ・・・」が終わった時、グッタリとして力が抜けた感じでした。それほどフォンティーンの「ローズ・・・」は魅力的だったのです。
森下洋子さんの師である松山樹子さんはフォンティーンの踊りに刺激されて、徹底的にローズアダージョのバランスを研究したそうです。 それほど、フォンティーンのバランスは素晴らしかったのです。松山樹子さんの言葉を引用させて頂きます。 「フォンティーンは、それほど高く足を上げているわけでもないのに、美の極致を見せてくれました。 ところが私たち日本人がこのポーズをとると、自分の短い足をカバーしたいが為に、必要以上に高く足を上げようとしがちです。 そのため、バランスをとるのが非常に難しくなってしまいます。フォンティーンの踊りを見てからは、私は『踊り方を考えなければならない』と真剣に思い悩みました。 日本人に合ったポーズについてそれこそ夜も眠らずに考えました。チョットした腕の使いよう、手指ののばし方、首のかしげ方などによって、 実際より何センチか長く見える工夫もしました。少しでも完璧に、という思いで一生懸命でした。」(松山樹子「バレエの魅力(講談社)」
 
舞台は進んで第三幕、オーロラ姫と王子の「グラン・パドドゥ」。デジレ王子役の永田幹文さんは、緊張して青ざめているようにすら見えました。 若い永田幹文さんにしてみれば、マーゴと踊れるというだけでコチコチになってしまったのも無理もないと思います。 でもマーゴは、そんな永田さんを優しくリードして、二人でとても息のあった美しいパドドゥを見せてくれました。
 
マーゴの踊りには、決してテクニックを駆使するような派手なところはありません。むしろ地味なくらいです。
しかし、とても丁寧で、とても品があって、やはり誰も真似の出来るものではないと思いました。
 
マーゴ亡き今では、彼女の踊りは映像でしか見ることは出来ませんが(→「眠りの森の美女」のDVD)、彼女の踊りをじかに観ることができた私は、バレエ・ファンとして最高に幸せだと思います。
  
1973年6月:東京バレエ団公演
オーロラ姫:マーゴ・フォンティーン
デジレ王子:永田幹文
この舞台より数年前のマーゴ・フォンティーンの映像が、YouTubeに載っていました。画質は良いとは言えませんが、50年前の感動が蘇りました。
コメントには、『50歳のマーゴット・フォンテインの1969年の映画だと思うものから、新たに復元されたビデオです!。彼女の確かなテクニックはまだそのままだったが、もっと明らかなのは、彼女が描写する完全な喜びと正しい音楽のテンポだ。あまりにも頻繁に今日の音楽は、バレリーナが彼らの足を高く上げることができるように、超遅いテンピによって破壊されます。しかし、これは振り付けのドラマとロジックを台無しにします。』と、ありました。
YouTube(John Clifford)より

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