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ジゼル〜第2幕:宮木百合子、篠原聖一     (2007.2.18)
 第1回日本バレエフェスティバル(1984)

宮木百合子と篠原聖一の「ジゼル」第2幕からの映像があります。1984年の第1回日本バレエフェスティバルの記録です。
篠原聖一はこの頃は30代半ばで、日本には数少ないダンスールノーブルとして女性に人気があり、篠原聖一と踊りたいと願う女性ダンサーが後を経たなかったと聞いています。その後下村由理恵と結婚、下村由理恵と二人三脚で出演しながら、下村由理恵バレエアンサンブルで後進の育成に努め、最近は演出・振付の分野で活躍しています。
宮木百合子は篠原聖一との共演はこの時が初めてとか。いわば篠原聖一と踊れた幸運のダンサー。そのせいか、顔の表情こそ、この悲恋の表現のでしたが、篠原さんと踊れることの喜びが自然に全身に現れているような美しい踊りでした。宮木百合子は、清楚な中にたおやかさを感じさせる美しく静かな物腰、バレリーナの為に生まれてきたような天性としての資質を持っているような美しい女性。他のダンサーとはひと味違った育ちの良さを感じさせます。 このジゼルは本当に可愛らしく美しい。フワッと風のように踊る姿は精霊そのものです。デヴロッペして足をアラズゴンドに上げグッと堪えた後、軸足をそのままでアラベスクの一回転。これがとてもスムーズなのです。 続いて至難なアラベスク・パンシェ。足元がふらつきかけながらも、ゆっくりと体を前に倒していきます。今にもつんのめりそうになるまで、歯を食いしばって必死に堪えた極限のバランス。自らの限界のポーズに挑むバレリーナの姿、本当に美しいものです。 また足を細かく交差したて飛び続ける難しいアントルシャも巧みに美しくクリア。この世のものではなく、精霊という、はかない風のような存在のジゼルを実に軽く美しく表現しています。厳しい訓練の賜物でしょう。本当に素敵なダンサーです。
それにしても篠原聖一のサポートは本当に上手いと思います。宮木百合子の動きを事前にキャッチして適切な支持の仕方をとっさに考えているようで流石です。宮木百合子がバランスを崩しそうになっても、しっかり支えて、ビクともしません。また、とても丁寧にかつ力強く宮木百合子をリフト。宮木百合子も安心しきって空中で思う存分美しいボーズを決めていました。篠原聖一はなんてパートナーに対して思いやりの深い人なのだろうと思いました。 パ・ド・ドゥは二人で踊りますが、所詮、女性の踊りで男性はその引き立て役です。女性が最高の美を表現できるように助けるのが男性の役目で、それができる人こそダンスールノーブルと思います。 篠原聖一は、真のダンスールノーブルだと思います。派手なジャンプなどで観客の目を引き付けても、アダージョで女性のサポートを疎かにするような男性は、とてもダンスールノーブルとは言えないでしょう。 踊り終わってのレベランス。二人とも息を弾ませ、額や首筋には汗が光り、力を出しきったという感じでしたが、暖かい大きな観客の拍手を受けて、二人の表情はさわやかでした。 こんな舞台で踊らせてもらえてありがとうというように観客への感謝の気持ちに溢れていました。観客を大事にする二人の性格の良さを改めて感じました。
 
インタビューで、篠原聖一は、尊敬している方と踊れて幸せと言えば、宮木百合子もとても気持ち良く踊れましたと、お互いを讃え合っている姿は本当に美しく、とても気があった素敵なパートナーと感じました。 その証拠にこの二人は2年後の日本バレエ協会の「眠りの森の美女」で共演しています。ただ、この公演は森本由布子・赤木圭組とのダブルキャストで、森本由布子のデビュー公演でもあったため、私は、森本由布子・赤木圭組の方を見に行き、宮木・篠原組の舞台は観ませんでした。プレッシャーと戦いながら懸命に踊っていた森本由布子の舞台は楽しめましたが、今から思うと、宮木百合子・篠原聖一組の方も見ておけばよかったと後悔しています。
    第1回 日本バレエフェスティバル
    1984年8月15日 郵便貯金ホール


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