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頑張れ!!。バレリーナ中村祥子・陽子      (2003.3.13)
 (情熱大陸「ウィーン国立歌劇場バレエの中村祥子と陽子」に感動)

"Toi,toi,toi”という爽やかな掛け声が、楽屋に響きました。
この"トイ・トイ・ト〜イ"はウィーン国立歌劇場バレエ団伝統の合言葉で、「うまくいくように祈るよ、頑張って」という意味だそうです。この合言葉を背に受けて、祥子・ミルタはウィーン国立歌劇場のステージに飛び出していきました。・・・・
 
かって、上野水香さん針山愛美さんを取り上げたTBSテレビの「情熱大陸」が、また素敵な番組を放送してくれました。ウィーン国立歌劇場バレエに在籍する日本人バレリーナ、中村祥子・陽子姉妹のドキュメントです。
姉・祥子は入団後わずか2年という早さでソリストの座を射止めました。そんな姉・祥子に対し、「天才肌」といわれる妹・陽子。姉より一年遅れて入団するも、ソリスト昇進への期待も高いそうです。
 
努力家の姉と天才肌の妹。「陽子はいつもライバルだった。妹が本気でバレエをやったら、私はかなわない。でも、本気でやって欲しい」と祥子。
「お姉ちゃんがいなかったら、ここまでやってこれなかった」と妹・陽子。
合言葉"Toi,toi,toi"で、二人は、姉妹の絆を確かめ合っているとのこと。
 
中村祥子がバレエ団のポスターを飾りました。日本人がこのバレエ団のポスターに載るのは異例のこと。さらに、年に一度選ばれるファンクラブ賞を受賞。中村祥子は、今ウィーンで最も愛されるバレリーナなのだそうです。
トレーニング・ディレクターのクリスチャン・ディビは、「祥子は、テクニックの素晴らしさはもちろんのこと、表現に暖かみがある。陽子は、日本人独特の繊細さがあって、祥子のようになる素質がある。」と二人に期待しています。
「ジゼル」本番の日。妹・陽子は、村娘の役で第一幕のコールド・バレエに出演。 姉・祥子は、二幕から準主役のウィリの女王・ミルタで出演。このミルタ、難しさは、主役・ジゼル以上とも言われています。女王の威厳を保って、完璧に踊ることを求められるからです。 出を待つ中村祥子は、プレッシャーと戦っていました。「なぜ、こんなに緊張するのだろう。緊張は何度踊っても鍛えられない。慣れることはない・・・・」と呟きながら。
ミルタのソロ、出だしから、見せ場があります。片足のアラベスクで立ち、ゆっくりと、前に体を倒し、もう片方の足を限りなく垂直近くまで上げていくものです。これを二回繰り返します。 もともとトウシューズは爪先で立つことに特化して靴底は極めて細くできている為、靴底で体を支えのには向いていない。 こんな靴底のトウシューズを履いて片足で立ち、他方の足を挙げていくのだから、足元は不安定になりがち。 ギクギクする足元を必死に堪え、他方の足を極限まで挙げていく舞姫の努力は大変なもの。 勢いあまって前につんのめったり、左右に飛び出したりしがちで、バランスをとるのがこの上なく難しいのです。
中村祥子、一回目のアラベスクをバッチリときめ、二回目、バランスを僅かに崩したものの、それに続くソロの長丁場を完璧に踊りきり、目の肥えたウィーン国立歌劇場の観客は総立ち、ブラボーの嵐、何度も何度もカーテンコールに呼び出されました。 トレーニング・ディレクターの「今回の祥子は『賭け』」の言葉に、見事に応えたのです。
でも終演後、ひとりうなだれている中村祥子の姿がありました。バランスの僅かな乱れ・・・これが「しょうがないけれど、悔しい」と祥子。食い入るように自分の踊りのビデオを見つめる彼女の目は真剣そのものでした。「一生、満足することはないでしょう」と祥子。 その後数年たって、中村祥子はテレビの番組で「バレエの喜びは『オフバランス』。 音を聴きながら、遊ぶ、挑戦する、音楽をひっぱる、自分のバランスをため、どこまでいけるか・・・・」と言っていましたが、この頃からバランスには拘っていたのでしょう。
 
「祥子と陽子、二人は有り余る自信とは無縁だ。しかし自信がないから成長がある」。ナレーターの窪田等の言葉が、重々しく、しかも快く、響きました。

中村祥子さん、陽子さん、頑張れ!!

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