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アナニアシヴィリのバレエ・コンサート  (2002.2.3改)

この放送は、2001年9月17日の東京文化会館でのニーナ・アナニアシヴィリのバレエコンサートの録画です。私は、都合で行けなかったのですが、有り難いことにNHKが放送してくれました。
この映像は非常にきれいです。BSディジタルハイビジョンに相応しい映像でした。でも、VHSビデオに録画すると画質が落ちてしまいます。ハードディスク・レコーダーやDVDライターが欲しくなりますね。なお、この映像は年末にBS-11で再放送されるとのことです。
最近、NHKは、BS-11やBS-hiで海外のダンサーやバレエ団の公演などのバレエの番組を放送してくれるようになりました。バレエファンにとっては有り難いことです。特に、バレエを「なま」で見ることが出来ない地方のファンには喜ばれることだと思います。でも、まだ日本人や日本のバレエ団の公演の放送は少ない。日本人のダンサーによるバレエ公演にも世界に勝るとも劣らないものがあります。ぜひ、日本人によるバレエ公演も放送してくれるようにして欲しいものです。
 
この公演は、ボリショイ・バレエ、アメリカン・バレエ・シアターのプリマ・バレリーナで日本でも人気の高いニーナ・アナニアシヴィリがデビュー20周年を記念してボリショイ・バレエのスター・ダンサーであるフィーリン、ウヴァーロフらとともに来日して行ったものです。主役のアナニアシヴィリはとてもキュートでした。シヴィリの素晴らしい踊りの数々、今最も充実している様子をうかがわせる成熟した輝きをみせてくれました。

プログラムは以下の通りです。
 第1部 パ・ド・ドゥ・セレクション
  「アット・ザ・バー」(スター達のバーレッスン風景)
  「ジゼル」よりパ・ド・ドゥ
  「白鳥の湖」より第3幕のパ・ド・ドゥ  ほか
 第2部 「眠れる森の美女」よりハイライト
それにしても、アナニアシヴィリのバランスの良さには驚嘆しました。「ローズアダージョ」のアチチュード・バランス、ポワントで立ったまま4人の男性の手を離すタイミングでグラつきやすく、ベテランでも緊張する超難所。かって、ローズアダージョで息をのむほど見事なバランスを見せて観客を魅了した吉岡美佳でさえ、「知らず知らずのうちに上半身に力が入って足元がぐらつきやすくなってしまいます」と言っていました(新書館:クララ)。
なのにアナニアシヴィリは、ビクともしない長〜いバランス。バレリーナの多くは必死に頑張るあまり笑顔を失いがちなのに、彼女は終始満面穏やかな笑みを浮かべて、余裕綽々なのです。
バレエはテクニックではない、芸術だと自分に言い聞かせても、アナニアシヴィリこのような神業を見せつけられると、彼女の途方もないの技術の力を感じてしまい、わくわくして手に汗握ってしまうのも事実です。
改めて「クラシックバレエはバランスです」(シルヴィ・ギエム)、「バランスで失敗したらバレリーナはおしまいです」(マーゴ・フォンティーン)の言葉が思い出されます。
それほどアナニアシヴィリのアチチュード・バランスは完璧だったのです。このためには、毎日毎日の血のにじみ出るような努力があるに違いありません。かつて舞台裏を撮影した「素顔のニーナ・アニシアシヴィリ」の映像を再度見直し、感動を新たにしました。 アナニアシヴィリのローズアダージョはこちら→
 

(1)アット・ザ・バー:全員
ステージには3本のバーが立てられ、舞台奥に鏡がおいてあります。先生のファジェーチェフが出てきて、ピアノ伴奏の音が流れ、思い思いの練習着を着たダンサー達が集まって、レッスンを始めます。ウォーミングアップ、バーレッスンと、淡々とメニューが進み、だんだん本当にレッスン風景を見てるような気分になってしまいました。
ピンクのバレエシューズとレッグウオーマーを着けたシヴィリがとても可愛らしく美しかった。
 
(2)3つのプレリュード:ニーナ・アナニアシヴィリ&ウヴァーロフ
バーレッスンが終わると、二人のパ・ド・ドゥへと移ります。
シヴィリとヴヴァーロフの叙情的で美しいパドドゥでしたが、明確なストーリーや斬新な動きがないので、少し退屈でした。
 
(3)アリア:ユーリ・ポソホフ
ポソホフが仮面を付け、タイツ一枚で登場。グニャグニャした動きで、あまり面白いとは思いませんでした。
 
(4)ジゼルよりパ・ド・ドゥ イルマ・ニオラーゼ&ジュゼッペ・ピコーネ
純クラシックになってホッとしました。ニオラーゼは繊細なブーレと優美なポールド・ブラが素敵でした。
 
(5)白鳥の湖より黒鳥のパ・ド・ドゥ ニーナ・アナニアシヴィリ&セルゲイ・フィーリン
シヴィリの表情がとても美しい。表情も技術のうちだと思います。眩しいほど光り輝き、可憐で魅力的で、魅せつけたという感じ。バランスも、グランフェッテもバッチリでした。
 
(6)眠れる森の美女ハイライト
    オーロラの出〜ローズ・アダージョ:ニーナ・アナニアシヴィリ&フィーリン&ポソホフ&ベロゴロフツェフ&ピコーネ
    可愛らしく、キラキラ華やかなオーロラの出。見慣れたローズアダージョで、こんなに目がはなせなくなるとは!!。支えの手を離すのが精一杯で、必死にバランスをとっているバレリーナもある中で、笑みを浮かべていつまでも片足で立っていられそうな余裕のバランス!!。でもシルヴィ・ギエムの「どうだ!」といわんばかりの強気の感じでもなくて、あくまでもしとやかに愛らしいシヴィリ。びくともしない長〜い長〜いバランス、凄い!!。余裕しゃくしゃく完璧に踊りきりました。
     
    リラの精のバリエーション:イルマ・ニオラーゼ
    とても丁寧に、リラの精の優しさを表現していました。
    青い鳥のパ・ド・ドゥ:インナ・ペトローワ&ドミトリー・ベロゴロフテェフ
    若い二人の、軽やかでしなやかな踊り。ペトローワの笑顔がとても美しかった。
     
    オーロラとデジレ王子のパ・ド・ドゥ:ニーナ・アナニアシヴィリ&アンドレイ・ウヴァーロフ
    真っ白なチュチュがとても似合っていたシヴィリ。それだけでもステキですが、本当に姫のような優雅な踊りに溜息しかでないような美しさでした。
 

プログラムはここで終了。その後マイクを持った芸術監督ファジェーチェフがご登場。アンコールを告げます。
 
青い血:ジュゼッペ・ピコーネ
軽快でコミカルなモダンな小品。楽しめました。
 
ドン・キホーテよりグラン・パ・ド・ドゥ:ニーナ・アナニアシヴィリ&アンドレイ・ウヴァーロフ&全員
シヴィリとウヴァーロフのグラン・アダージョ部分には、あまりの美しさにうっとり。女性はレオタードに簡素なチュチュ、男性もTシャツにタイツと言うラフなスタイル。シヴィリはここでもバランスで魅せてくれました。10秒近くあったと思います。私はパ・ド・ドゥの流れを壊わすような技術偏重の「バランスの見せびらかし」は感心しないと思うけれど、彼女のように、あくまでもしとやかに、しかもぐらつかずに美しく保ってくれるのであれば歓迎です。ローズアダージョにせよドンキにせよ、シヴィリの観客へのサービス精神を嬉しく思います。
最後はキトリを中心に三人の女性でグラン・フェッテ(会場はおもわず手拍子)で盛り上がりました。
皆、相当疲れていたでしょうが、観客へのサービス満点の豪華なアンコールでした。
 
とても気になったのがオーケストラがよく音をはずしたこと。テレビで聞いてもわかるくらいだから、会場では相当ひどかったと思います。ローズアダージョの盛り上がりで外したのにはまいった。音の外れた伴奏にのって懸命に踊るシヴィリたち、さぞかし踊りにくかったでしょう、可哀想になりました。オーケストラもプロなのですからダンサーのことを考えて、しっかり演奏して欲しいと思います。

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