マルチチャンネルデバイディングネットワーク製作

ご注意 当方のチャンネルデバイダーは、基本的に完成品で提供しています。2ウェイ専用機開発後は、一枚基板に回路が搭載されているため比較的初心者の方でも製作しやすくなっています。

現在は基本的に動作確認済みの完成基板のみ頒布しています。コンデンサーの相互偏差も0.5%で選別しています。配線等も注意事項を守らないと誘導を受けますのでご注意願います

このページまたは、当方HP内に内部写真が多数ありますので参考にしてください。GICフィルターは逆差し出来ないものが正規品です。

このGIC方式のチャンネルデバイダ―は日本全国、北海道から九州までご愛用者がいます。マルチアンプを地道に増やしてきた実績があります。自作派のみならず音楽を聴くことに情熱を燃やす方々、そして喫茶店に至るまでご愛用いただいていることは、わたくしの励みになるところであります。

お願い すでに製作された方、および基板頒布なされた方へ一部変更があります。
御連絡または、変更をお願いいたします。

1、入力の分岐アンプ部の5番ピンをグランドに落としてください。
2、直接半田式フィルター基板を未挿入で使用する場合(2ウェイ、3ウェイ)は段間バッファアンプの入力ーグランド間に22KΩ〜100KΩの抵抗を入れてください。
3、コネクタタイプのGICフィルターご使用の方はブランクユニットを用意しましたのでご請求ください。または抵抗の足を曲げ直接コネクタに挿してください。
大変ご迷惑をおかけいたしますことをお詫び申し上げます。

はじめに

このチャンネルデバイダーの製作にあたってはGIC型フィルターに1984年に出会ったことから始まります。高級CDプレーヤー用に製造された11次のローパスフィルターが下の写真です。生産数も僅少なものでした。当時、私は、製造に携わっていて、この高次LPFモジュール設計者に帰還回路を通らない特性の良いフィルターと聞いていたのが、GICフィルター式チャンデバ製作の発端です。そのLPFは実際に一個ずつ特性を測定していたのですが見事にノイズレベルまで下降する様は、すばらしいものでした。ある測定機メーカーが、このGICフィルター測定用に計測器を開発した時期でもありました。その後エレクトロニクスライフ誌に特集最新オペアンプの活用ガイド(’86年3月号)チャンネルデバイダーの設計という記事があり、そこでGICフィルターについて理論から表をもとにした計算式まで解説されており、このチャンネルデバイダーが出来あがりました。自作で一からチャンデバを作るということは大変な事でした。4ウェイともなると比較的規模が大きな回路ですが基板の構成により簡単に組みたてられるように工夫した設計です。現在ではコネクタタイプで容易に周波数変更が可能です。当初ミューティングリレーは付いていませんでした(今はリレーユニットを付けています)のでマルチアンプ方式の常識ですが、電源を入れるとき は必ずチャンデバ次にパワーアンプの順に入れ、切る時は逆にしてください。なおこのチャンデバの製作およびご使用によるトラブルはご自身の責任でお願いします。当初は簡単に製作できると言っていましたが多数の製作実績から、必ずしもそうでありませんでした。耳とテスター1丁では完成は難しいです。動作確認済み基板頒布で大幅に難易度は改善されますのでぜひご検討ください。当初からご使用されている方の感想は、あえて載せていません。不思議なことに皆さん同じことを言います。そして長らく使っていることから一定の完成度はあると思っています。そして最近分かったことなのですが、入門用になどとある意味へりくだってお奨めしてきたのですが、オーディオ歴の長い方ほど満足されるようです。逆に初心者の方が使われますと、マルチアンプは簡単すぎるように思われるようです。

昨今のCMの【個人の感想です】 【全ての方に当てはまるものではありません】お金をもらって出演している俳優やタレントの声ですよ。これでは何の意味もありません。オーディオ評論家の言うそれと同じではありませんか?。今はデジタル全盛の時代です。チャンデバは高性能なものがデジタルではあります。しかしそのパラメーター設定の複雑さでお手軽にマルチは出来ません。かといって数万円のPAデジタルチャンデバでは満足できない人も少なくはなく、このため今でも、このチャンデバを製作、特注する方がいる訳です。


このチャンデバ製作の経緯

当時自作派の間でチャンデバは、簡単なCRだけのパッシブフィルターやメーカー品でも簡単なCRフィルターにバッファアンプを加えたものや、多段の帰還形フィルターのものが多くまた、簡単に周波数切替が出来るように多くの接点通過と言う音質には、あまり好ましくない状況でした。音も悪く友人たちとああでもないこうでもないとやっていましたが私の兼ねてからの構想もあり、いつものように無いものは作るの精神で、1台何とか作って仲間で試聴したらあれ〜全く違う音がするとなった訳です。製作にあたって周波数の計算は、数学の先生に聞きに行くから任せなさいと言う友人もいましたが、それは畑違いで断られました。結局当時ポケコンと言うのがあり、それで計算しました。その後はウィンドウズPCの出現で、表計算が普及し簡単に定数は計算出来るようになった訳です。


ご注意とお願い

GIC(Generalized Impedance Converter)回路で一部ネット上で、昔のカセットデッキのドルビーに対する15KHzのマルチプレックスフィルターに採用した機種で、GICのために、音が悪いような掲載が見受けられますが、GICそのものがが、音が悪いということはございません。またインピーダンス変換素子そのものなので、段間に挿入する緩衝アンプ回路は必要不可欠です。私が交換ユニットとしている部分は、GIC型FNDRフィルター回路そのものですので、この単品だけでは、負荷により特性がとれなくなってしまいます。CR、LCフィルターに、簡単に置き換えできるものではありません。前段の送り出し緩衝アンプは極めて低い50Ω以下の出力インピーダンスが必要で、送り出し側は数MΩの高い入力インピーダンスで受けることがが必要です。これらは帰還の掛ったOPアンプを使用すれば大抵OKです。○×式とか一般に言われる先生回路をいきなりつないでも、正常に動作しないことがあります。回路ブロック図を参照ください。その他基板の配置、OPアンプのパッケージの使用順など、安定動作、ノイズ防止のため考慮しています。

抵抗やコンデンサーなどの受動素子にこだわりのある方にはお奨めいたしません。巨大な抵抗コンデンサーは基板に収まりません。そういったものをご使用したい場合は独自に製作願います。またフィルター基板だけ欲しいとのご要望があり何度か頒布したことがありますが、バッファ回路の不適当による特性が取れない等の問題が生じてもご質問には、お答えできません。


GICフィルターでのチャンデバ製作のきっかけとなった11次GICフィルターユニット某メーカーのCDプレーヤーに採用されたが、数百台分しか製造されなかった。CDプレーヤーの開発競争が著しい時期で、すぐにデジタルLPFに移行し、このような高次のアナログフィルターは不要になったためと思われます。今思うと開発費や高価な特注計測機を用意したことを考えると恐ろしいです。CDプレーヤーも一般に売れるまで時間が掛かり、そのうちにチップセット搭載デジタルフィルター登場で消えて行ったいわく付きのモジュールです。これを見なかったら、GICには興味を持たなかったでしょう。

1 参考写真
製作した実機の紹介(1号機)私の現用機です。

4ウェイ実装の完成したチャンネルデバイディングネットワーク,ケースも小型にしてコストダウン。トランスも安い汎用品。これでもハム音などの発生は皆無。100V、一次側はガラス繊維のチューブをかぶせて配線。とかくメーカー品でもノイズの出やすいチャンデバですが幸いこの作品は、出ませんでした。トランスの向き合わせがおかしいと気づいた方は鋭い指摘です。磁束を打ち消すためには90度向きを変えるべきかも知れません。納まらなかったのでこうなりました。ガラスエポキシ基板で作った現用機です。試作した最初期型で25年以上安定に動作しています。友人も3ウェイ用で製作し同じく25年以上安定に動作しています。最初の作品ですので非常に苦労しました。
メインボードにフィルターを実装した状態、これだけ並ぶとなかなかの見ごたえです。
写真は4ウェイ用です。

フィルター基板、マザーボードを改良してクロスオーバー周波数を差し替え可能に改良したもの

製作当初は、自分だけ使うものなのでフィルター差し替えも半田付けで行えば問題なかったのですが、いろいろな方が自作(製作)されるようになるとやはりそうも言えなくなります。できるだけ安いコネクタ(ヘッダー)で差し替えしています。私は基本的に経済設計は嫌いですが不要な奢りはしない気質です。コネクタで共通に作ることで、フィルター測定なども受けられるようになります。(フィルターコネクタ方式試作機1号)
これがGIC型FNDRフィルター回路ユニット。現在は入手容易な定数でCRは選ぶようにしています。クロス周波数が、少しずれることは影響ないのでLPF、HPFで同じ定数にすれば周波数交差は同じなので心配いりません。各コンデンサーの相対誤差を小さくするため1%か2%の誤差のものを入手するか5%のものから選別します。好きな周波数が自由に作れるのが自作のメリットです。コンデンサーは最初はシーメンスでしたが入手できなくなりNCCに変えさらにニッセイAPSの1%誤差に変えた矢先に倒産、市場在庫限りとなりました。残るは5%級のフィルムコンから選別か?、考えないようにしないと絶望的になります。
これが現在の基板一式製作例です。基板一式のご予算は10万円〜。ケース約1万〜、入出力コネクター、電源トランス、ボリューム、ツマミ、他小物が他に必要です。4ウェイ2チャンネル可能のチャンネルデバイダがケースを含めても15万程度で実現するのですからかなり安いものです。デジタルチャンデバの安いものに走る方も多いですが、ノイズ等の問題もあり、安心して音楽が聴けません。音的にもアナログフィルターは私は好きです。大量生産でコストダウン効果のあるものと、自作品を比べて高いと思う方は自作はできません。特注品と自作品を比べることで対等な評価となります。無いものは自分で作るというくらいの挑戦が必要です。たっぷり基板組込みに3日は覚悟が必要です。
新旧基板の比較。写真に写っている定規が15pですので小さいことがおわかりいただけると思います。

2 回路ブロック図  現在のコネクタタイプ

2009年最新版製作例

2009年6月製作、試聴用可搬タイプとして製作した例です。
当時試聴機で聴いた後、自分で製作することを薦めていた。
右端にあるのは、周波数ボード簡単に差し替え可能
500Hz、800Hz、1200Hz、7KHzを作って差し替え可能となっている。
製作前に試聴したい方は、貸し出しすることも可能です。
(09年11月試聴貸し出し 不帰決定09年12月お買い上げ)

2010年最新版製作例


試聴用に2010年3月製作
ミューティング回路、外部電源方式と製作費を意識しないで製作
(試聴貸し出し機不帰決定10年3月お買い上げ)

2010年6月製作例

試聴用に2010年6月製作
ミューティング回路、外部電源方式と製作費を意識しないで製作
(試聴貸し出し機不帰決定10年7月お買い上げ)

2010年6月製作例の内部

内部構成マザーボード、出力バッファ付きボリューム基板
出力ミューティングリレー基板(8回路)
フィルター基板は実装2ウェイ分

2010年9月急遽試聴機製作例

4ウェイ分フィルター添付
(試聴貸し出し機不帰決定10年9月お買い上げ)
試聴用を目的にしているためケースを高級にしていないが、音質では好評な実績があるので、高価な見栄えの良い箱に入れれば良いかも知れない.
これは以前貸出サンプルに限界的に小さく製作したもの
この大きさでもきちんと4ウェイで2チャンネルかなり小型です。
早い話が送料軽減です。(これは自作する人向けなのでミューティングリレーは設けなかった)
3ウェイ分(8枚)のGICユニット実装例。ハイパスローパス共、同じ基板だが実装部品位置が違う。両用基板にしてある。基板の裏には面実装のオペアンプが付いている。ここのオペアンプは音質に影響はない。
周波数ボード差し替え式にしてあるので、すっきりしている。
2ウェイから4ウェイまで1台で対応。調整ボリュームの後ろの負荷影響を避けるためにバッファアンプを付けてある。1号機にはつなぐパワーアンプが決まっているので、これがない。
分配、段間の緩衝アンプはOPA2134を実装。製作当初は市場にOPA2604が出たばかりで、1個1000円もした。物珍しさで使ってみたがNJM5532の方が聴いた感じで良い人も多かった。今ならOPA2134が妥当な石だと思う。大抵の物が使えるが、中には使えないものもあるので2回路入りなら差し替えれば良いというものではない。この部分は些細な音の違いである。
本機も貸し出し試聴き後、帰らぬ物となった。

組立てと構成

メイン基板にモジュール化したローパスフィルターとハイパスフィルターを立てることにより、簡単に構成しています。もし全回路一枚の基板に組んだとします。そうすると簡単に、クロスオーバー周波数の変更が出来ないばかりか、かなり複雑な基板になります。穴あき基板製作したら間違い探しに大変なことになります。自作であるがゆえにフィルターを交換出来るメリットです。基板コネクターで自由に抜き差し出来るように改善しましたが少々コストアップになってしまいました。。なおフィルター基板は両面に部品が付いています。このGICフィルターの回路についてはA社のGIC型チャンネルデバイダーカタログに全く同じフィルター回路が説明されています。この回路を1986年にエレクトロニクスライフ誌に寄稿されたのはA社の技術者のかた監修の特集でした。その本では、製作記事ではなく簡単に2分割のデバイディングフィルターとして設計記事として書いてあり、計算式と理論が述べられていました。GICの回路を勝手にインターネット上で公開するのは工業所有権などの問題が発生するかも知れません。核心のフィルター回路はとりあえず載せません。間違いを減らすためこのフィルター基板では基板内で定数を決めるCRはバタワース特性では基板内で全て同じになるような配慮をしてあります。このことはフィルター基板を抜いて部品交換すれば周波数変更が容易だというメリットです。最近では高次の連立フィルター として雑誌でもたまたま見かけますので、大きな問題はないかも知れません。私のこのページでは基板構成の参考として公開しています。なおGICフィルターについては、かなり複雑な理論ですので、くわしくは、専門書を参照してください。そのほとんどの引用(参考)文献は同じ外国の図書の様ですM.E.VanValkenburg著、柳沢健監訳;アナログフィルターの設計1985年、図書館で探さないと無いかも知れません。

フィルター動作確認

さて作ったものの測定器が無いのでどうしましょう?という問題が出ます。レベル計が必要ですがわざわざ用意するのも・・・後々使うものでもないし・・・という声が聞こえてきます。ここで本ページで好評なVUメーターを1台製作しておきます。なんとか-40dB位読むことができます。あとは低周波発振器ですが、CDROMに記録されたものやPCソフトで対応すれば良いかと思います。動作試験済みフィルター基板ならその必要もありません。


3 基本となっている基板の構成 旧タイプ 最近までこの構成(参考)

4ウェイのチャンデバでもメインボードはこれしか部品が載っていません。 初心者でも組みたてられるレベルです。これにフィルター基板を必要枚数挿入して作るのです。だから簡単なのです。自作のメリットを最大限に生かしています。
必要なフィルター数
2ウェイ=4枚
3ウェイ=8枚
4ウェイ=12枚
写真は製作を容易にするため紙フェノールで作りました。
部品実装前の基板 OPAMPを実装 ローパスフィルター ハイパスフィルター
これがGICローパスフィルターとハイパスフィルターのモジュール、共通基板に設計したため楽に製作できる。基板裏面には面実装デュアルOPAMPが実装されている。抵抗は直列や並列接続で同一抵抗値にした。尚18dBオクターブで計算通りにぴったりと−3dBでクロスします。誤差は数十HZです。使ったOPAMPは新日本無線のNJM4560MA(選別品)
電源基板は、汎用の電源トランスを用いるため2段構成にしてある。これは音質の配慮より整流後の電圧が高いための策です。ノイズを考慮したのとオーディオ用部品の採用で結構割高となった。

この機器の組みたて構成上の特徴

1 モジュール基板化によりフィルター基板の交換が出来る。任意の周波数でクロス出来る。(正確な−3dBのクロスポイント)
一枚当たりのフィルター製作費が安いのでたくさん用意して交換できる。(はんだ付け要す)
2 共通基板化、ローパス、ハイパスの基板を共通にしたため基板製作の工数を削減と製作費の低減。
3 フィルタ基板は汎用部品の大幅採用(抵抗も直列、並列接続で同一化)コンデンサーも一般品ですが再現性が良く安定動作
4 カップリングコンデンサーは好みの物または後段のバッファアンプの関係であえて基板に乗せていません。  

参考文献  エレクトロニクスライフ ’86年3月号P34,35,36,37,38,39

トランジスタ技術 SPECIAL No44 特集フィルター設計と使い方 第4章 LCシュミレーションアクテブフィルター 


秋葉原の部品事情

秋葉原のオーディオパーツの入手事情は相当に悪くなっています。現実にこのチャンデバを作ろうとすると困難にぶつかることが判明しました。現実はかなり流通状態が悪くなっています。プリント基板製作も難しくなりました。基板製作参照。


実機の特性

シュミレーションによる特性

プリント基板パターン図

プリント基板の製作

皆さんの製作例紹介

製作しやすく工夫したので作りやすいものとなりました。