スタッフの支援活動には、個人的な活動と専門家としての2種類があります。
前者は「補佐役」といえば最も分かりやすいでしょう。後者は法律、広報活動、市場調査などの専門家(エキスパート)ともいうべき性質のものです。
しかし、スタッフ(補佐役)を企業風土的に解釈すると、後継者であったり、秘書役、補佐役、あるいは参謀役として、職場に大きい影響力を秘めています。
企業経営の規模が小さく、トップ(経営管理者)の目が隅々まで行き届くような段階では、スタッフの個人的職務には「小間使い=補助業務」の類(コーヒーやタバコをとりに行く)から、業務が発展し、人員、組織が複雑化すると、管理者としての、意志決定を実行するトップの補佐役に、近いものまでいろいろあります。
一般的に、多くの組織には管理者の補佐役がおります。場合によっては、参謀役と評される人物が、検討中の問題に関する情報を収集したり、計画の立案を助けたり、上役の命令を部下や同僚に伝えたり、上役のために特別な課題に取り組んだりしているほか、小さな懸案に関しては、意志決定まで下しております。
例えば、内閣には、総理大臣の補佐役として官房長官がおります。ところが、最近の官房長官は、総理大臣に代わって政府の方針などの意思を決定した発言をしています。また、希な例になりますが「最高スタッフ」の職務を設けて、絶大な影響力と、権力を持たせている組織もあります。かってニクソン大統領とA・キッシンジャー氏との関係などにその例がみられます。
補佐役(スタッフ)は、経営管理の補助が重要な役割ですから、資質として戦略(目標−計画)がなければなりません。自社の位置、方向性、商品開発能力などを、いつでも把握しておきます。
民間の調査機関が、各業界の大、中小企業のトップを対象にしたアンケート調査では、補佐役、参謀に対して求めている能力は、次のようなものです。
1) 企画力
2) 専門知識
3) 実行力
4) 判断力
これは、事務処理能力や社会・一般常識が強く求められる秘書とは、かなり違った能力を求められているわけです。
通常、自由業である弁護士、公認会計士あるいは、医師などの専門家は、自分の専門分野の問題に限定して他の分野には関与しません。同様に、企業内組織においても、専門スタッフは、自分の領域内の問題に限定して他には関与しないのが当たり前になっています。
企業組織においてスタッフ(補佐役)の役割を見ると、専門家(スペシャリスト)には
(1)顧問団
(2)ラインへのサービス
(3)管理スタッフ
(4)機能スタッフ四通りの役割形態があります。
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1.顧問団としては、外部のエキスパートに委嘱、招請して問題を研究したり、助言を与えたり、ラインマネージャーの ために実際に計画を立ててやったりします。
- その場合、ライン・マネージャーは専門家スタッフの提案の全部または一部を受け入れたり拒否したりできる権限を持っています。
活動の成否にかかわる責任は、あくまでライン・マネージャーが負わなければなりませんから、ライン・マネージャーは、拒否権を持つ必要があります。
しかし、専門家スタッフからの提案が、トップ・マネジメントの支持を得ている場合は、ライン・マネージャーとして、それを受け入れることはできても、拒否することはなかなかできません。スタッフの仕事が優れていれば、ライン・マネジャーにとって時間、金、労力の節約になり、健全な意志決定を下すことを可能にしてくれることになります。
このとき、参謀役はトップの助言者の立場にあるわけですから、トップの意思決定に影響を与えることになります。アドバイスが不適格であれば、組織は崩壊しかねません。トップが迷いに迷って、決断をしないようなときは、進むべきか、止まるべきかをハッキリ提言しなければならないのです。
混迷しているとき、混乱している場合であればあるほど、トップは旗色をハッキリさせます。どっちつかずの中立では、決断しない、気力がない、役に立たないと、トップの座を見放されます。
ですから、トップの意思決定は、重く、しかも、助言者として選ばれた参謀には、トップと組織に対して責任感が重く、常に自分の能力を磨いて的確なアドバイスをするように、処理されています。
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2.ライン・マネジャーへのサービスの際には、スタッフ部門が助言するのではな く、積極的に特定の職務機能を果たすようにします。
- 人事部の例では、実際に人を雇ったり、職務説明を書いたりすることが職務であって、仕入れ部の場合は、ライン・マネジャーから原料や設備の請求を受け、実際の仕入れ活動を行います。
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3.管理スタッフとしては、ライン各部が基本成果基準を満たすように確実な管理 を実施します。
- 品質管理部がこれを担当します。
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4.機能スタッフとしては、スタッフ部門の専門技術がラインの計画を成功させる ために必要になるケースがあります。
- ライン・マネジャーが行使する通常の権限は、計画化の処理を行うとき、より優れた能力を持つ専門家スタッフに委任されます。
この例は新製品の発売にみられます。例えば、(普通は、セールス・マネジャーに対して報告義務があります)セールスマンを統制下におき、新製品の発売が適切に行われるようにします。機能的権限を、プロダクト・マネジャー(スタッフ)に与えることがあります。プロダクト・マネジャーに与えられるこの権限は、特定の製品一種類にしか行使出来ません。それも一定期間だけです。機能的権限はこのように限定するか、あるいは、ライン・マネジャーの職位を、大幅に下げるようにするか、しなければなりません
その理由は、ライン・マネージャーのトップと一体化して発揮する次のような能力の成長度です。
1) 情報収集力・分析力
2) 戦略形成力
3) 企画調整力
4) 洞察・先見力
5) 判断・行動力
6) コミュニケーション能力
7) トップにたいする補佐能力
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