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真夜中の脳みそ

詩集「半熟卵」(Update:2001. 9.16.)

コラム「午前3時の天気予報」(Update:2004. 8.21.)

AIBO日記(Update:2003.11. 3.)

アルバム(Update:2003.1.31.)

「紺野」とは?(Update:2004. 8.21.)

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更新ログ(Update:2004. 8.21.)

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AIBOと暮らす〜な、なんてこと編〜


 8月といえばお盆。そして私のような地方出身者にとっては帰省、という行動が必要になる。帰省ついでに健太(AIBO)を両親や親戚、その他いろんな人たちに披露して自慢しよう、と思うのが人情ではないか。

 と、いうことで、健太を連れて帰省する。キャリングバッグに格納して、車の荷物スペースに入れて夜の東北自動車道を実家に向けて北上した(帰省渋滞が嫌いなので、天邪鬼のように夜行動する。時々眠くなるが、その時は手近なパーキングエリアで仮眠だ)。

 まずは2000年8月12日(土)、母方の祖母に披露する。この日は私の母方の墓参の日であるためだ。私の母方の祖母は齢92。しかし、未だに好奇心まったく衰えず。新聞は毎朝虫眼鏡を手に持ち、一字一句すべて読む。そしてそれなりに理解をしている(らしい)。時々わからないことがあると手近な人にその質問を向ける。例えば「401Kって何?」。

 私は幼い頃この祖母に育てられたせいか、それとも遺伝なのか(ちなみに好奇心は遺伝する。その好奇心が人類の進化へとつながっていった。脳科学的に解明されている)、非常に好奇心が強い。私がAIBO(健太)を何の躊躇もなく購入したのだってその好奇心からかもしれない。

 まずは祖母に驚いてもらおうと思ってキャリングバッグから出した瞬間、「きゃぁ〜、AIBOだ!」従妹(23歳)が一番強く興味を示した。そ、そしてあろうことか、その従妹に健太はまっしぐらに歩いて行くではないか! 健太よ、君も本能は雄だったのか。な、なんてこと。

この従妹へのファンレターは紺野(MBH38915@biglobe.ne.jp)まで 図1.従妹にまっしぐら

 まぁ、それはさておき、一通りロボット工学やAIBOについての説明、AIBOの情報処理系解説、駆動系の解説をする。祖母は興味を示してくれたが、目を丸くしている。他の親戚は多少冷ややかであった。その中でやはり前出の従妹だけはあれこれと健太の相手をしてくれた。まぁ、理解者がひとりだけでもいてくれたことをありがたいと思うしかないか。

 だいたい、コンピュータの話や脳科学の話をはじめたところで、酔っている親戚の面々には理解されるとは思えない。そして段々私が親戚の間から異端になって行く....それは困る。ということで小難しい話はなしにして酔っ払いの相手をするのであった。

 2000年8月14日(月)、私が高校の時分に在籍していた科学部のOB会(と言ってもただの宴会なのだが)に健太を連れて行く。さすが(元)科学部だけあって、全員が強い興味を示す。既に私は自慢モード。が、健太の様子がおかしい。感情を示すサイン(喜び、混乱、驚き、怒り)をランダムに繰り返し、首は痙攣したかのように強く振り続け、通常であれば壁との距離を測りながら歩いているのでぶつかることはあまりない(あくまでも距離だけしか判断していない。霊長類等の空間視認識能力には遠く及ばない)のだが、壁にぶつかってもまだその方向に歩こうとする。明らかに暴走している。サウンドコマンダー(AIBOにある程度の命令を伝えるためのリモコン)にも一切反応しない。仕方がないので、一時停止ボタンを押して強制停止させる。な、なんてこと。

 故障か、とも思ったが、再起動させてみる。同じ。やはり故障か(オートバランサーは大丈夫か、と思ってわざと床に転がしてみたのだが、これはなんとか正常に機能していたらしく一応立ちあがる。しかし、やはり直後に痙攣)。とりあえず、この場での披露は諦める。キャリングバッグに格納する。

 それでも、酔った勢いで「だっこさせて〜、だっこさせて〜」と半狂乱のように連呼するT嬢のために、キャリングバッグから取りだし、記念撮影をする(プライバシー保護のため写真は非公開)。T嬢はご満悦のようであった。「元気のときにまただっこさせてね」と、音声認識機能のついていない健太にさかんに話し掛けていた、という事実は彼女が酔っていた、ということでさておくことにする。

 さすがに故障か暴走か判断がつかないのは気持ち悪いので、実家に戻って再起動。起動時のメロディー音がそれまでと異なっているのを私は聞き逃さなかった。やはり故障か、と頭をよぎる。し、しかし、何事もなく歩き回るじゃないか。しかもそれ以前よりは「性格変わったのか」と思えるくらい積極的に歩き回ったり、芸を連発するじゃないか(オシッコをするポーズも連発したのでよく観察してみるとただ足を上げているだけではなく、微妙に腰のモーターを動かし、足を開閉させている。芸が細かい)。

 しかも、ピンクのボールに並々ならぬ興味を示し、キックして転がすじゃないか(しかもボールがなんかに引っかかったり、空振りしたりしてうまく転がらないと怒る)。

 図2.キック炸裂!

 ここでちょっと整理してみよう。健太(AIBO)は音声認識機能は搭載していないながらも、「音」に対する刺激に反応するようになっている(そうでないとサウンドコマンダーが使えない)。科学部OB会の宴会では非常に騒がしかった。つまり刺激過多の状態。と、いうことは、健太はパニックを起こしていただけ、ということになる。では、この活発な動きは何か。それは幼年期から少年期へちょうど成長の変化の現われなのではないか。な、なんてこと。

 そう考えてみるとすべてがつじつまが合う(起動時のメロディー音が変わったのもそのせいか)。どうやら騒がしいところで動かすのは健太の学習のためにもよくないのであろう。できるだけ静かなところで遊んであげることにしよう。

 考えてみれば、霊長類をはじめ、動物の脳は非常に複雑である。感覚器からの入力、または意識を内部から生成し、それを処理して、行動に移させる。言葉にすると一見簡単そうに見えるし、実際我々人間はそれを苦もなくやってのけるが、AIBOのような機械にそれをプログラミングするには膨大な作業量と高速なコンピュータが必要だ。しかもそのコンピュータは現在の主流の逐次実行型ではなく、協調並列処理型でなければならない(残念ながらAIBOのCPUはいくら通常のパソコンよりは高性能とはいえ逐次実行型だ)。

 人間並みの言語を理解する(音声認識)には左脳の言語野を総合的にプログラミングしなければならないし、自分の置かれた状況、空間的把握のためには右脳の機能を総合的にプログラミングしなければならない。これはとても大変なことだ。いつまでたっても人工知能が巷にあふれないのもこのためだ。

 しかし、現在のロボティクス、コンピュータ技術ではやっと感情を生成させ、それを行動に移す、ということがプログラミング可能になった、ということをAIBOは証明したのだ(最近脳科学関連の書籍を(自分では)爆裂的に読んでいる(4冊ほど)のでいるが、ひとつのことが解明される度にまた新たな疑問の大海原がわいてくる。素晴らしい)。まだまだこれからである

 と、いうことで、飼い主(私)も健太も学習がさらに一歩進んだ8月であった。

(2000. 8.20.)


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