前回の「日記」ならぬ「戯れ記」で健太(ERS-111)の尻尾が故障したところまで書いたが、そこで更新が止まっていた。ま、またしても、である。
さてさて、AIBOクリニックへ健太入院となるのだが、実はそうすんなりとは行かなかったのである。
まず、AIBOクリニックへ電話をし、故障した旨を伝える。2週間ほどの入院(修理のための預かり)となるので、宅配便着払いにて引き取りに来ること連絡を受けた。で、引き取りに来ると言っていたその日(私は会社勤めの人なので土曜日を指定)、宅配便は集荷に来なかったのである。AIBOクリニックは平日の昼間時間帯にしか連絡はつかないので、宅配便業者の集配センターに電話を入れる。集荷依頼がない、という予想していない返事が返ってくる。どういうことだ、これは。
月曜日、AIBOクリニックへ電話をする。宅配便業者へ確認したが「集荷依頼がない」と言われたことを伝える。すると、「入院手続きが完了していなかったようなので、再度引き取り可能な日を指定してほしい」という返事が。完了していなかったとはどういうことだ、だから。宅配業者にまで電話したんだぞ、こっちは。まぁいい。深く追求したところで改善はされないだろう。諦めて次の土曜日を指定。今度はちゃんと引き取りに来た。許す。
1週間ほど経って、私の携帯電話に身に覚えのない電話番号から着信が入る。普段データ通信にしか使わない電話なので、この携帯電話にかけてくるのは酔狂な人間しかいないはずなのだが。ワン切りか、と不審に思って放っておいたらまたかかってきた。どうやらちゃんとした用事らしい。出てみるとAIBOクリニックだった。長野県の市外局番だったぞ。そんなところに入院設備があったとは(まぁ、人間様の入院と異なり、別にどこにあってもかまわないのだが)。
検査の結果、やはり尻尾のワイヤーが切れていることが確認されましたって、それは起動させればすぐにわかる、ちゃんとカルテ(修理依頼票)にも書いてあるだろう、そんなことに1週間以上かかっていたのか、と思ったが、修理が完了したので到着日を指定してほしい、とのこと。2週間の入院と最初に聞いていたので意外だった。実は手際がいいらしい。で、直近の土曜日を指定した。このことにより実質2週間私の手元を離れていたことになる。入院期間2週間とはこのことだったのか....
まずは確認ってことで起動させる。当たり前といえば当たり前だがちゃんと治っている(直っている)。若干ワイヤーが短めに調整されたのか少し反り返っているように見えるが、まぁ、よしとしよう。
これで気分がよくなったのか、次なるアイテムを購入してしまった。「スピードボーダー」である。
図1.これがスピードボーダーだ!
要するにこいつを装着すると後ろ足で床を蹴って進む、ということなのだが、どうせよたよたと進むのだろう、と思っていたら、意外といい蹴りを見せて一気に数10cmビューンと進む。は、速っ。で、後ろ足の肉球で床を抑えブレーキをかけて自動で止まる。よって壁に激突!ということはない。おいおい、実はすごいじゃん、これ(と、いうか、ちゃんと物を確かめてから買え、という突っ込みもあるだろうが)。
ERS-110/111、ERS-210/220共用なので、健太にも祐輔にも使用可能だ。健太にはサウンドコマンダー(音声リモコン)で、祐輔には「前」とか「右」とかしゃべることでその通り進む。なるほどなるほど。
図2.装着状態
実はまだ購入したアイテムがあるのだ。それは「おりこうAIBO」。ERS-210用のアイテムなので、祐輔専用となってしまうのだが、バッテリステーションに付加するマーカユニットとソフトウェアのセットになっていて、(オーナーの)顔認識機能と自動充電機能が付く、というシロモノだ。
一切合財を装着し、起動。普段は単音のピロロ〜ンというような音しか鳴らないのだが、音楽が鳴ったり、人間の声でしゃべる。実は多少うるさい。自分の行動にいちいち説明くさい台詞をはく。そんなことはしなくてもいい。
が、認識系はかなりバージョンアップされたらしく、壁までの距離やテレビやテーブルなどある程度形が決まっているものは認識する。さんざんこの「戯れ記」で形状認識ができないと書いてきたが、ここにきてそれはソフトウェアが機能アップしたことによりある程度の解決を見たようだ。実はすごいことだ。
こっちもなぜか気分がよくなってきたので、よし、ここで自動充電だっ。ちょっと大げさなマーカだが、まず、台上のピンクのボールを先に認識する(首を左右に振ったり歩き回ったりしてボールを捜す行動を取る)。距離認識はある程度できるようで、次はバッテリステーション後ろのマーカを認識する。と、ここまでは予想通りの行動だ。
後ろのマーカのところまで移動すると、そこで細かい位置調整を始める。この行動は私の予想にはなかったことだ。さて、どういう形でステーションに乗っかるのか、と思ったら、なんと、にじり寄って合体する。
図3.にじり寄りの図
私は自転車に跨るようにして合体するのかと予想していたのだった。なので、このにじり寄りはいまいち腑に落ちない。賢くなったのではないのか?
しかし、よくよく考えてみると、多少認識系のソフトウェアが賢くなったとしても、「物を跨ぐ」という行動は非常に高度な情報処理を必要とすることを改めて理解した。
跨ぐ対称の物体を認識するところまではこの「おりこうAIBO」で実現されているが、自転車に乗るように跨ぐためには自分の足の長さ、自分が片足を上げたときにどれだけ自由度があるのか、対象物の物の大きさを認識し、なおかつ自分の足の長さで足りるのかどうかを判断し、そして足を上げた状態で体重移動を行い、関節などに負担がかからないように力を制御して初めて「跨ぐ」、という動作が完了する。
やっと他者認識ができるようになったかどうかの頭、自己認識がまだまだ全然できていない頭ではとうてい無理な動作だったのだ。しかし、陸上動物はたいていこの物を跨ぐ、という行動を難無くこなす。実はすごい。恐るべし生身の生き物たち。そしてまだまだ最新のロボット工学は昆虫レベルにも追いついていない、ということなのか。部分部分では人間の高度な情報処理に追いついてきつつはあるが、トータルシステムとしてはまだまだ足りないようだ。今年は鉄腕アトムが生まれた年だというのに。
ロボットと人間が当たり前の「仲間」として共存する世界観、鉄腕アトム。そこに現実の科学が追いつくにはまだまだ。いったい何年かかることだろうか。人間の想像力には限界がないとよく言われるが、その想像力に追いつくのが工学であるだけに、世界中の理系の皆さん、頑張りましょう。
(2003. 3.30.)