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第28回 コラム:ここ1ヶ月で買ったCDの数々


 我ながら節操がないとも思うのだが、ここ1ヶ月で8枚のCD(アルバム)を買ってしまった。もともと「見つけたら買う」、「いいと思ったら買う」という姿勢で買い続けてきたため、現在自分が所有しているCDの数は何枚になるのか既にわからない。ジャンルもクラシック、ニューエイジ、ヒーリング、J-POP、テクノ、ロック、R&B、メタル等々本当に貪欲で節操がない。しかも、メジャーなものからマイナーなものまで(まぁ、マイナーであることが多いのだが)そろえているので、私の車の中でかけるCDは「わかる曲がない」とまで同乗者に言われるほどである。しかも自分でも傾向がよくわからない。ここでそのわからなさ加減を少し披露させていただく。

  • 「ADIEMUSV」〜Dances of Time〜 ジャンル:ヒーリング

ADIEMUS(Karl Jenkins) VJCP-68025/26 発売日:1999年2月24日

 作曲家Karl Jenkins(カール・ジェンキンス)率いる総勢60名をこえるオーケストラ(ロンドンフィルハーモニア)、女性コーラス集団「ADIEMUS」(アディエマス)名義としての3枚めのアルバムである。このアルバムを買おうと思ったのは毎回毎回放送を楽しみにしているNHKスペシャル「世紀を越えて」のテーマ曲となっている「Beyond the Century」が収録されているからである。私が「いい」と思う基準にその音を聞いて鳥肌が立つか、というものがある。実際私はこのテーマ曲を耳にした際、全身に鳥肌が立った。サウンドに圧倒された。これは買わねばなるまい、と心に決めた。そして買った。

 アルバムを通して聞いてみるとジャンルがヒーリングだけあって、環境として音楽が流れているシチュエーションでは心地よさがある。クラシック的要素、アフリカン音楽的要素がサウンドに織り込まれており、和太鼓等も楽曲のなかでは使用されている。つまり、地球の音楽なのだろうと私は思う。その中で「Beyond the Century」は異彩を放っている。力強さ、繊細さがあり、まさに世紀を越えて生きていくべき我々への応援歌でもあるようだ。結局これで「ADIEMUS〜聖なる海の歌声」(VJPC-25180)、「ADIEMUSU〜蒼い地球の歌声」(VJPC-25257)と、「ADIEMUS」名義のアルバムは一気にそろえてしまった。こういう買い方を大学の後輩にいわせると「大人買い」なのだそうだ。う〜む。

 で、結局

  • NHKスペシャル「世紀を越えて」オリジナルサウンドトラック

TOCT-24084 発売日:1999年2月24日

 も買ってしまうのである。この「世紀を越えて」が2000年の11月まで続くシリーズであるので、まだまだサウンドトラックは発売されるだろう。発売されればまた買ってしまうだろう。そうやってCDの枚数が増えていく.....

  • 「無罪モラトリアム」 ジャンル:J-POP

椎名 林檎 TOCT-24565 発売日:1999年2月24日

 高校の同級生に勧められて買ってしまった。東京近郊の有名楽器店/CDショップで購入したのだが、週間発売枚数ランキングトップであった。そんなに売れているものなのかちょっと私は戸惑いをおぼえた(マイナー指向のある私としては「売れている」ことに対して少し抵抗感があるようだ)が、とにかく買ってしまった。

 実際聞いてみると、若い、青い。まぁ、20歳だから仕方がないか。が、荒削りではあるが、何か聴いた者に強烈な印象を与えるものがある。小室系に代表される、音はみんな打ち込み(音楽業界では楽器を実際に弾くのではなく、シーケンサというシンセサイザーの自動演奏を行うコンピュータに音を入力することを指す)でとりあえず声だけは人間で、どれを聴いてもみんな同じに聞こえる金太郎飴状態のJ-POP(日本のポピュラーミュージック)界において、生が基本で、パンク的要素も取り入れながら、一部打ち込みを使用している。これはある意味驚きだった。

 退廃的な歌詞と曲調、そして少しノイジーなエフェクト。天賦の才を感じる。ちょっとチープな感じに聞こえなくもないのだが、これはアレンジャー、プロデューサーが意図したものなのか。このままの勢いをもって椎名 林檎はブレイクしそうであるが、日本の音楽業界の悪いところでブレイクしちゃうとプロモーションサイド、プロデューサーサイドの意向だけで濫作されて、アーティスト自身を浪費してしまって金太郎飴になってしまう傾向があるので、そうならないように祈りたいものである。

  • 「First Love」 ジャンル:J-POP

宇多田 ヒカル TOCT-24067 発売日:1999年3月10日

 売り切れ店が続出し、総計500万枚は発売されるのではないかと予想されているこの宇多田 ヒカルのファーストアルバムであるが、マイナーな店で購入したのか攻を奏したのか、難なく購入できた。スキー場でリフトに乗っているときにシングルカットされている「Automatic」が流れていて、「う〜ん、いい声してるなぁ」と思って「これ、なんて曲?」と一緒に行った連中に聞いたのが買うきっかけとなった。

 アルバムを通して聴いてみると、若い、青い。まぁ、16歳だから仕方がないか。サウンドも打ち込みで少しチープなのだが、とにかくこの声に助けられている。これはやはり天賦の才なのであろう。このままの勢いをもって宇多田 ヒカルはブレイクしそうであるが、日本の音楽業界の悪いところでブレイクしちゃうとプロモーションサイド、プロデューサーサイドの意向だけで濫作されて、アーティスト自身を浪費してしまって金太郎飴になってしまう傾向があるので、そうならないように祈りたいものである。

 スタッフクレジットにミキサーとしてGo Hotoda氏の名前を見つけた。New Yorkで坂本 龍一のミキサーも手がけている人物である(完全にこれは余談)。

  • 「The Unforgiven」 ジャンル:Heavy Metal

Michael Schenker Group CRCL-4720 発売日:1999年3月18日

 まぁ、このMichael Schenker Group(以下:MSG)が私のCDライブラリでも異彩を放つだろう。私は決してメタル好きではないのだが、MSGだけは聴くことにしている。孤高の天才ギタリスト、Michel Schenker(マイケル・シェンカー)の神がかったハードかつメロディアスなギターはどこか私を熱くさせる。

 私がMSGをはじめて耳にしたのは中学生のときである。当時私の中学校では主流派はアイドルやらJ-POPやらを聴く集団であった。アンチ主流派として洋楽を聴くグループ、テクノを聴くグループ、ハード・ロックを聴くグループに分かれていた。私は洋楽とテクノをクロスオーバーして聴いていたのだが、当時メタル野郎と話しをしているときに「メタルなんてギターの音がガギガギ鳴ってるだけじゃん。」という私の主張に対し、「よく聴きもしないでわかった風なこと言うな。言うならこれを聴いてから言え。」とカセットテープを渡されたのがMSGとしてのファーストアルバム「神〜帰ってきたフライング・アロウ〜」(オリジナルの発売は1980年8月)だった。ソリッドでパワフルかつメロディーのあるギター。聴きながらうぉぉぉぉぉっ!と自分自身で叫んでいるのがわかった。自分の認識が甘かったのを感じた。自分の知っている世界が狭いことを感じた。

 このインパクトを忘れることができず、大学に入ってからCD化されたものを買い揃えた。で、この「The Unforgiven」(許されざる者、という意味)であるが、サウンド的には全盛期、「神〜帰ってきたフライング・アロウ〜」(CP21-6052)、「Build to Destroy(邦題はなぜか"限りなき戦い")」(オリジナルの発売は1983年)(TOCP-6334)の頃を彷彿とさせるあのギターが帰ってきた!という感じである。この孤高の天才は気分の浮き沈みで「音」も変わるらしくかなり時期によってムラがある。不遇の時代はアルコール中毒だったり、麻薬に手を出していたこともあった。そんなことがフラッシュバックで出てしまうのかもしれない。「The Unforgiven」の前作「Written in the Sand」(XRCN-1283)(1996年6月28日発売)を聴いたときは「嗚呼、Michel Schenkerも歳を取ってしまった」と嘆いたものだが、「The Unforgiven」では復活!という感じである。一言、これはよい。うん。

  • 「J」 ジャンル:J-POP

陣内 大蔵 TKCA-71564 発売日:1999年3月17日

 私にしては珍しくここ1ヶ月は買ったCDにJ-POPが多いのだが、陣内 大蔵(じんのうち たいぞう)に関しては、デビュー当初から聴いている。この「J」はデビュー10周年にして10作めの、前作「View」(TKCA-71129)から2年ぶりのアルバムである。ずっと陣内 大蔵を聴いてきた私にとっては待ちに待った新作である。1曲め、シングルカットされている「Dreamers」のイントロがはじまって2秒ほどで見上げれば遠く青いスカッと晴れた空が広がっている、心地よい風が前からふいてくるような感じを受け「おぉ、陣内サウンドが帰ってきた」と思った。これは彼のセカンドアルバム「Praying Night」(32FD-7031)(1988年11月発売)からアレンジを手がけている国吉 良一氏とともに作り上げてきたものだろう。

 8ビートのシンプルなリズムに流れるメロディライン、そして聴く者をはっとさせる歌詞が彼の特色である。陣内 大蔵といっても「誰、それ」という人が多いだろう。ソングライターとして吉田 英作や永井真理子に曲を提供していた時期もあったし、フジテレビ"Love Love 愛してる"の"Love Love All Stars"のメンバーであったりしたりする。

 アルバム中の「旅に出ようじゃないか」という曲の歌詞にもある通り、肩の力を抜いた何か重く引きずってきたものが取れたような晴れがましい曲ばかりである。それでいて陣内 大蔵ここにあり、というような感触がある。2年の充電期間でどこか1段階段を登ったような印象を受けた。1999年4月29日に"渋谷 Club Quattro"でライブを久々にやるようなので、チケットを取った。

 

 とまぁ、ここ1ヶ月のCDを買うことで散財した結果を並べてきたが、私の節操のない音楽の嗜好をご理解頂ければ幸いである。

(1999. 4. 4.)

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