brain_title.gif (13527 バイト)

 

真夜中の脳みそ

詩集「半熟卵」(Update:2001. 9.16.)

コラム「午前3時の天気予報」(Update:2004. 8.21.)

AIBO日記(Update:2003.11. 3.)

アルバム(Update:2003.1.31.)

「紺野」とは?(Update:2004. 8.21.)

Links(Update:2002.10.20.)

更新ログ(Update:2004. 8.21.)

Mail Me !


第27回 コラム:暴走する利己的正義の国・アメリカ partV


 第17回第21回の当コラムにおいて、私は誰に頼まれたわけでもなく勝手に利己的な正義を振りかざして暴走するアメリカ合衆国(以下:米国)を批判した。しかし、1999年3月24日、またしてもこの利己的正義を振りかざす愚挙、暴挙をこの国は行ってしまった(そしてこの原稿を執筆時点でも拡大を続けながら暴挙は進行中である)。しかも、今度はNATO(North Atlantic Treaty Organization:北大西洋条約機構)加盟諸国を巻き込んで。当然今回も国際連合の承認もなく、だ。半年のうちに三度も自発的な軍事行動を許可した米国大統領は過去には存在しない。よって、史上最も強暴な大統領、いやテロリスト(米国的「正義」だけが正しい、それ以外は実力をもって排除するというテロリズムに犯されている首謀者)と呼ばせていただこうビル・クリントン。この横暴に私は批判の声をあげずにはいられない。

 まず、今回のユーゴスラビア連邦のコソボ自治州問題は基本的に(セルビア系住民とアルバニア系住民との)民族紛争である、ということを忘れてはいけない。コソボ自治州はもともと人口約200万人で、その90%がアルバニア系、10%がセルビア系である。民族紛争であるので、基本的には民族同士の話し合いで自治を認めたり、独立を認めたり、境界を決めたり、妥協点を決めたりするのが当たり前だ。少なくとも軍が動いたり、流血の事態を招くことは「間違い」だ。しかし何を勘違いしたのか米国主導のもとNATO諸国を巻き込んで内政干渉どころかそれすらもこえた直接軍事介入、という手段に出た。この勝手な空爆により、ユーゴスラビア政府は、米国、フランス、ドイツ、イギリスと外交関係を断絶。事実上NATO対ユーゴスラビア、という戦争状態に突入した。ユーゴスラビア政府はNATO軍による攻撃がコソボ自治州和平協定を台無しにしたとして、NATOの攻撃停止があるならば、コソボ自治州でのユーゴスラビア軍の軍事行動を停止する(ユーゴスラビア政府はコソボ自治州のアルバニア系住民を一方的に「テロリスト」と決め付け、それに軍を動かしている。この行動を「民族浄化」と称している。このこと自体間違ったことではあるが。なぜ人口構成比で少数であるセルビア人がコソボにこだわるのかは、セルビア人の多くにとってはコソボが民族発祥の地、という認識を持っているからである)、と正式に発表した。NATO側はNATO側でアルバニア系住民に対するテロ行為(ユーゴスラビアでいう「民族浄化」行為)が続く限り、攻撃を止めないと発表した。事実上の並行線である。ロシアが調停に試みたが結局失敗してしまった。泥沼化、長期化は必至である。

 大義名文上は今回の軍事行動は「民族浄化」テロによって脅かされているコソボ自治州のアルバニア系住民の安全を確保することにあったはずだ。しかし、この軍事行動のおかげでますますアルバニア系住民はユーゴスラビア政府軍の標的となり、10万人規模でテロの危険にさらされてしまっている。そして身分証明書等を剥奪され難民となっている。何のために爆撃を始めたのか、わからなくなってきている。コソボ自治州周辺情勢ではNATO軍の軍事行動のある、なしに関わらずアルバニア系住民は難民化することは明白であったし、ユーゴスラビア軍を攻撃しても無益なことも明白であった。ではなぜ軍事行動という手段に出たのか。しかも主権国家であるユーゴスラビアという国の首都まで攻撃して。そこまでする権限が誰にあるというのだ。そんな横暴を許してもいいのか。調停に出たロシアに言わせれば、バルカン半島での米国の発言力を強めるのが今回の軍事行動の一番の目的であるらしいが、それだけのために常に犠牲になるのは何も知らない一般市民だ。そんな勝手を我々は許してはいけないと私は思う。

 確かにユーゴスラビア政府が進めている「民族浄化」行動は第二次世界大戦下のナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺と似ていなくもない。イデオロギーの対立の時代が終わり、イデオロギーの抑圧によって押さえ込まれてきた多数の民族、国家を束ねて連邦国家として成り立っていかなければならないユーゴスラビアの不安定な状態もある。民族とか国家という枠組みがある限り、こういった地域間紛争は後を絶たないであることは容易に想像できる。しかし、戦争によって強者が弱者を一方的に押さえ込んだり、互いに疲弊していくのは無益である。これは人類の歴史が教えてくれる。この無益である、ということを歴史から学び、大人の態度として話し合いで互いを理解し合い、認め合って、それぞれ譲歩、調停するべきであろう。そうでなければいつまでたっても同じことの繰り返しになってしまう(そもそも前回イラクにミサイルを打ち込んで状況が変化したのか?)。自分の都合しか考えない「軍」だけでは何も解決しないのだ。

 何も解決できない存在でありながら、通常、軍の維持、軍事行動は多額の資金を必要とする。その資金をどこから調達するのか。いくら自国の経済が空前の絶好調だからといって軍需産業に特需をもたらしても、世界的な軍縮の流れにおいては意味はなかろうし、莫大な軍資金をどこから捻出するつもりなのか不明だ。いくらNATOに加盟しているからといって、ヨーロッパ統合に動いているフランスやドイツは少なくとも米国のテロ行為に加担している場合ではないだろう。だいたい、NATO加盟国であるギリシャから空爆中止の要請が出てしまっているのだから、いかに米国だけが暴走しているのかがわかるだろう(実際イタリアは経済が逼迫してきていると表明している)。悲しむべきことに国連安全保障理事会において、1999年3月26日、NATO軍によるユーゴスラビア連邦への武力行使の即時停止を求める決議案が否決されてしまった。国連が国連として機能しなくなっている。なぜ話し合おうとしないのだ。なぜ簡単に話し合いが決裂してしまうのだ。なぜ簡単に軍事介入を許してしまうのだ。

 しかも狂気の空爆開始から1週間以上経過してもなお一向に収束する気配はなく、攻撃目標を市民生活に影響を及ぼす橋や水道管にまで拡大し続けている。これではこの一方的な暴力行使である軍事行動が泥沼化してベトナム戦争と同様になってしまうのではないだろうか。そして明らかに軍事行動としては「失敗」である今回のユーゴスラビア空爆を首謀者である米国はどうすれば「失敗」と認めるのか。ユーゴスラビア軍が米軍の最新鋭戦闘機F-117(通称ステルス)を撃墜した映像は米国の欺瞞を多少は揺るがせたが、3人の米軍捕虜をユーゴスラビア側で軍事裁判にかけると報じたが、どうもテロリズムに蔓延している米国は強硬姿勢を崩す気配はない。

 もっとも恐るべきことは、米国が頼んでもいないのに勝手に軍事介入してくることが常態化している、ということだ。これが由々しき事態であるということを認識している者が少ない、ということだ(このことは海の向こうの話しではない。日本だって「周辺有事の日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」によって米軍の介入を許すことになるのだ。ちなみに「ガイドライン」といっているが、中身を読んでみれば"War Manual"である)。おりしも1999年3月24日から25日にかけてのいわゆる「(朝鮮民主主義共和国:北朝鮮のものと見られる)不審船」騒動は、なぜ自衛隊が「不審船」を発見できたか明らかにされていない。しかもその「不審船」が日本の防空レーダー網の探知の範囲をこえたのに、逃げ込んだ先がなぜ北朝鮮と判明したかが明らかにされていない。当然この騒動は米軍の監視下にあったと考えるのが筋だ。つまり、米軍はいつでも日本を隠蓑にして周辺国(この場合は北朝鮮)に軍事介入できる状態にある、ということである。ここ半年の間に誰に頼まれたわけでもなく三度の軍事介入を行い、米国内での世論調査では今回の軍事行動を50%が支持している(しかも43%が地上軍を投入すべし、と回答している。狂っている)し、各国からは「あぁ、またか」という印象を持たれている。まさに利己的正義が暴走しているのだ(中国がこのことに危機感を感じている)。暴走が日常となった状態ほど恐ろしいものはない。

 どうすれば抜け出せるのか、誰が止められるのか。しかし、止めなければ世界平和は訪れない。

(1999. 4. 4.)

Ligtning.jpg (31285 バイト)


今回参考にしたWebPage

  • CNN http://www.cnn.com/
  • Yahoo! News ユーゴスラビア空爆特集 http://news.yahoo.co.jp/Full_Coverage/Kosovo/
  • MSNニュース&ジャーナル http://news.jp.msn.com/

PrevWB01343_.gif (599 バイト)   WB01345_.gif (616 バイト)Next