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第21回  暴走する利己的正義の国・アメリカ partU


 第17回のコラムにおいて、私は誰に頼まれたわけでもなく勝手に利己的な正義を振りかざして暴走する米国を批判した。しかし、1998年12月16日、またしてもこの利己的正義を振りかざす愚挙、暴挙をこの国は行ったので、「ミスター不適切」男は決行してしまったので、再度ここに批判させていただく。

 アメリカ合衆国大統領ビル・クリントンは1998年12月16日午後6時(日本時間17日午前8時)すぎからテレビ演説を行い、イラクの大量破壊兵器関連施設への攻撃を開始したと発表した。これに先立ち、同日日本時間午前7時(イラク現地時間は午前1時)より、ロックハート大統領報道官は、クリントン大統領はイラクの国連大量破壊兵器廃棄特別委員会(United Nations Special Commission:UNSCOM)査察拒否に対抗し、同日朝、攻撃を決断したと通達した。これは1991年の湾岸戦争以来の大規模なイラク空爆(攻撃自体は1996年9月以来)であり、1998年11月14日のUNSCOM査察受け入れ表明(この日、イラクはそれまでの強硬な査察受け入れ拒否の姿勢を突如翻し、受け入れをアナン国連事務総長に伝えた。これにより米軍の空爆開始予告時間一時間前に空爆中止となった)において「イラクの度重なる安全保障理事会決議違反に対し、いつでも予告なしに武力行使を行うこと(この次は予告なしに攻撃するぞ)」予告に基づく予告なし空爆である。

 今回の空爆は第一波は、報道によればペルシャ湾に展開する米空母エンタープライズ部隊の艦船が射程約1600kmのトマホーク巡航ミサイル約280発を発射したという。空母艦載機のF-14戦闘機やF/A-18戦闘攻撃機も出動が確認されており、EA-6B電子戦機プラウラー(敵のレーダー網をジャミングする)とともにイラク南部のレーダー施設などを攻撃したとみられる。続く12月17日の第二波では、インド洋の英領ディエゴガルシア基地から出撃したB-52戦略爆撃機の空中発射巡航ミサイルが発射された。続く12月18日の第三波では引き続きペルシャ湾の艦船やB-52戦略爆撃機からの巡航ミサイルと、爆撃・攻撃機で行われ、空爆対象も拡大した。この第三波ではこれまで出最大規模の攻撃であり、新鋭のB-1戦略爆撃機も投入しイラク南部バスラの石油精製施設、テレビ中継施設も新たに攻撃対象となった。12月19日に入っても第四波攻撃があり(イスラム教の宗教的儀式である断食月(ラマダン)はこの日から始まるため、イスラム教を軽視した行為とも言える)、これを以って今回の空爆は終了した。

 米国側からの報道によれば、攻撃の対象は査察拒否施設、軍事施設、大統領宮殿であり(イラク大統領サダム・フセイン当人が攻撃対象とも伝えられている)、民間人の死傷者や民間インフラストラクチャーへの被害を極力防ぐため、細心の注意を払って目標を選定していることを強調したが、バグダッド側の報道では、機械工の訓練所や乾電池工場などの民間施設と軍事情報本部や治安警察の政府施設が爆撃を受け、多数の死傷者が出たことを伝えるとともに、これらの政府施設はすでに査察を受けた建物であると強調し、民間人の死傷者が出たとも言われている(報道映像では水道管が破壊され、水浸しになっている様子が確認されている)。イラク側は今回の攻撃は国連憲章に反していると強調している。どちらが本当の報道をしているかは明らかにする手段はないが、密かにイラクは核兵器開発施設を建造中かもしれないが、生物兵器、化学兵器製造施設を建造中かもしれないが、大量破壊兵器製造施設を建造中かもしれないが、予告もなしに米国は他国に勝手にミサイルを打ちこんでいることだけは確かである(いくらテレビ関連施設はフセイン大統領配下にあるとはいえ、少なくとも民間施設であるはずだ)。

 驚いたことに今回のイラク攻撃には米軍のみならず、イギリス軍が巻き込まれたのか脅されたのか米軍と共に攻撃に参加している、ということだ。ブレア英首相は、12月17日英下院本会議で演説し、「英軍のトーネード攻撃機が現在イラクを攻撃中である」と語った。両国が直接フセイン政権を倒すことを目的としているとも報道されている。イギリスがこの利己的な米国に巻き込まれて得をすることはないと私は思うのだが実際はどうなのであろうか(英国国内では疑問の声が上がっているとも聞く。また、米国とつるむことで国際的発言力を高めようという意図があったのではないかとの推測も聞く)。

 CNNの世論調査によれば今回のイラク空爆は元ホワイトハウス実習生、モニカ・ルウィンスキー氏との結果的に「不適切な関係」であったのに対し、8月17日に行われた連邦大陪審に対する証言が偽証にあたるとした大統領弾劾を先送るするためか、の設問に対し、そう思うが30%、そう思わないが62%という結果となっている。この空爆を支持するか、の設問に対し、支持するが76%、支持しないが14%という結果である。圧倒的なクリントン大統領支持、空爆支持、である。米国国民は自分たちが「正しい」、という妄想から離れられないため、こうやって圧倒的多数の人がこの暴挙を支持してしまう。米国国民は自分たちが間違っている、という情報からは隔絶した世界で生活しているので、世論調査はこのような悲劇的結果となる(しかし、結果的に弾劾裁判は下院では可決された)。

 今回の攻撃に対し、世界は冷ややかだった(この世界の冷ややかさが4日で攻撃を止めてしまった原因かもしれない)。中国、ロシア、ケニアは国連安全保障理事会でUNSCOMの査察報告書の審議の最中で攻撃となったことに遺憾の意を表し、「最初から攻撃を意図していたとしか思えない」と批判した。特に中国共産党機関紙人民日報は、12月18日付紙面で米軍によるイラク空爆を非難し、「この軍事行動は"危険な先例"となった」と報じた。スウェーデンやスロベニアも米英が安保理の承認を得なかったことを批判した。フランスも批判の構えだ。アラブ諸国はこれまでの「武力行使反対」の態度とは異なる「状況を注意深く見守っている」という微妙な態度を示している(しかし、アラブ各国で反米英デモ広がっている)。

 ところがどうしようもない役立たずの"オブティミスティック"(optimistic:楽観的な、と自らの名前「小渕」をかけたしゃれのつもりらしい。なんとセンスない下品なしゃれだ)な日本の小淵首相は「今回の米国及び英国による行動を支持する」と全面的に支持を大統領演説からまもなく滞在先のベトナム、ハノイで表明した(事前に日本に対しては攻撃の連絡があったため早めの支持表明につながった、という情報も入っている)。現在のところこのイラク攻撃「砂漠のキツネ作戦」(しかし実にくだらない作戦名である。センスのかけらもない。ただ単に夜陰にまぎれて卑劣に遠くからミサイル打ちこんでいるだけではないか!)を支持した国は(当事国を除いては)日本だけである。またしても米国の顔色をうかがう日本の政治基本姿勢が明らかとなった。情けない。

 第17回のコラムで私は「『テロリズムには屈しない』といってミサイルを警告もなく諸外国に打ちこむのはテロリズムではないのか。テロ行為にテロで応対しているだけではないのか。勝手に自分たちに敵対するテロリストを作り上げて、自分たちに都合のいいテロリストを作り上げて、それにテロで応対しているだけに過ぎないのではないか、国自体が(かの国が敵対すべき)テロリズムに蔓延している。かの国の大統領は世界でもっとも横暴で強暴なテロリスト(の大将)だと言えよう」と批判した。これを今回も繰り返させていただく。米国的「正義」こそがテロリズムである、と。

 余談ではあるが、1998年11月にTBSが企画した「クリントン大統領に直接質問募集」に、私はこの「ミサイルを警告もなく諸外国に打ちこむのはテロリズムではないのか」と応募したが、結局採用されなかった。内容が過激過ぎたのか、担当者が意味を理解できなかったのか。実際の放送を私もテレビで見たが、「ガツンという質問募集」のわりにはソフトタッチでかえって米国賛美をしてしまうというどうしようもない内容に成り下がっていた。何のために視聴者から直接質問を募集したのか!何のために「ガツンという質問募集」と掲げたのか!

 余談ついでに、米国批判をしているが、決して私はイラク支持者ではない。この国も私から見てかなり間違った国ではあるが、今回は米国批判であるので対象から外させていただいているだけのことである。

 この展望を欠いていた支離滅裂の「砂漠のキツネ」作戦の最中、朝鮮民主主義共和国(北朝鮮)がにわかに動き出していた、という事実を無視することができない。ロシアのイタル・タス通信によれば、12月17日、ロシア軍事筋の情報として北朝鮮のミサイル発射の可能性を伝え、発射場所を北朝鮮北東部のムスダン(無水端)岬だとした。同通信によると、1998年8月31日に物議をかもし出したテポドン(TaepoDong:大浦洞)ミサイル(詳細は第14回のコラム参照)かもしくはその新型の発射準備をしている、とのことだった(打ち上げを装うことになる人工衛星の重量は20kg以上というおまけ情報付き)。また、12月18日、北朝鮮の半没式小型潜水艇が大韓民国(韓国)領海内に侵入し、韓国軍と交戦の末、撃沈される、という事件が起こった。もともと北朝鮮が戦争をしかけるときは米国が他のどこかの国と交戦中の際、というのがもっぱらの噂だったため、タイミングが一致する。

 しかし、なぜ、米国は対イラクには武力を行使し(過去3度)、対北朝鮮には弱腰とも言える裏取引をするのか(この裏取引についても第14回参照)。答えは単純だ。本土攻撃される可能性があるかないかだけだ。イラク軍がどんなにがんばってもせいぜいイスラエルに核弾頭を積んだミサイルと打ちこむだけだが、北朝鮮は違う。がんばれば米国本土に核弾頭を積んだミサイルを打ちこむことが可能なのだ。

 米国は建国以来、他国から本土攻撃されたという経験がない。よって、常に過剰ともいえるなりふり構わずの本土攻撃回避策を取る(つまりこれが裏取引に通じる)。つまり、本土攻撃をしてくる恐れのない国に対しては自分たちが圧倒的優位であること(それは見た目だけに過ぎないのだが)を見せ付けるためだけにハイテク兵器をふんだんに使って(「なんとか作戦」なんて名前をつけてはいるが他だ単に兵法のかけらもない物量作戦に過ぎない稚拙な方法であるが)攻撃する(今回の場合それがイラク。表向き国連に逆らう独裁政権であるサダム・フセイン体制を崩すため、と言ってはいるが、実際は自分たちの言うことを聞かない別なお山の大将をこらしめたいだけ)。しかし、本土攻撃をしてくる恐れのある国(北朝鮮)に対しては弱腰(金で片をつける)なのだ。これが米国の正体だ。

 とにかく、米国が自分たちのしていることは自分たちが(表向き)忌み嫌うべき暴力である、という事実、自己矛盾に気が付かない限り情況は好転しない。なぜ今現在気が付いていないのか。それは自分自身を自分自身で洗脳しているか、他人の言うことに全く耳を貸さない利己主義なのか、自己陶酔しているかのどれかである。このままかの国を暴走させ続けると世界が危ない。かの国には何が正しくて何が正しくないのか判断する能力が著しく欠けているのだ。

 かの国が勝手に自認している「世界の警察」の任は重すぎる。私はそう思っている。

(1998.12.23.)

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今回参考にさせていただいたサイト

  • 「朝日新聞」 http://www.asahi.com/
  • 「毎日新聞」 http://www.mainichi.co.jp/
  • 「読売新聞」 http://www.yomiuri.co.jp/
  • 「CNN」 http://www.cnn.com/
  • 「国連大量破壊兵器廃棄特別委員会(UNSCOM)」 http://www.un.org/Depts/unscom/

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