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第67回 コラム:私にできること、それは沈黙しないこと


 戦争において正義は存在しない。いや、「正義」なるものは存在しても正義は存在しないと言ってもいいだろう。ここで言葉遊びをしたいのではない。正義たるものは他の誰から見ても正義でなければならないし、片方から見た場合のみ成立するものは「正義」だからだ。

 括弧をつけて表記した場合とつけないで表記した場合、どう意味が異なるのか。ここで明確にしておきたい。

 三省堂大辞林によれば、正義とは

(1) 正しい道義。人が従うべき正しい道理。 
「―を貫く」
(2) 他者や人々の権利を尊重することで、各人に権利義務・報奨・制裁などを正当に割り当てること。アリストテレスによると、名誉や財貨を各人の価値に比例して分配する配分的正義と、相互交渉において損害額と賠償額などを等しくする矯正的(整調的)正義とに分かれる。また、国家の内で実現されるべき正義には自然的正義と人為的正義とがあり、前者が自然法、後者が実定法につながる。国家権力の確立した社会では、実定法的正義は国家により定められるが、これは形式化・固定化されやすい。そこで、各人がその価値に応じた配分を受け、基本的人権を中心とした諸権利を保障されるべしという社会的正義の要求が、社会主義思想などによって掲げられることになる。公正。公平。
(3) 正しい意味。正しい解釈。経書の注釈書の名に多用された。 
「五経―」

 とある。この定義に従うものが私の言う括弧がつかない正義だ。そして定義に従わないまやかしと言ってもいいものが括弧をつけた「正義」である。故に、現時点でアメリカ合衆国(以下:米国)とイギリス連合王国(以下:英国)連合軍対イラク共和国(以下:イラク)との間で進行中の状況は正しい道義ではないし、他者や人々の権利を尊重していないし、正しい意味など存在していないので、「正義」でしかないし、「聖戦」などとも言えるものではない。

 ここで言う状況というのは、交戦規定を持たない自衛隊用語で、一般的には戦闘状態と同義だが(「軍隊」でない自衛隊は戦闘状態を定義できないので、こういう特殊な用語が存在する)、私は後述するように現在の米国と英国対イラクとは戦争状態にないと考えているので、あえて状況、と記述する(この状況という言葉の方が今回の事態をより正確に表現しているものと私は思っている)。

 私はサダム・フセイン政権を支持しないが、まず武力行使ありきで政策が進められているジョージ・ブッシュ政権もまったく支持していない。ましてや、米国側が主張する「対テロ戦争」の大義名分である、イラクがテロ組織を国家として支援していたのか、という点が不明確である以上、「対テロ戦争」の論理でイラクを攻撃するのは非常に無理がある。故にこれも支持しない。実際どうやればテロリストに対して戦争状態を作り出せるのか、が私には疑問だ。

 「大量破壊兵器」を隠し持っていた(いる)から、という理由付けもできるが、そもそも兵器とは対象を破壊、殺傷するもので、使用量が増えればそれだけ破壊対象、殺傷対象も大量になる。故に、兵器には大量破壊も少量破壊もない。確かに、核兵器や生物・化学兵器を使用した場合の被害は甚大だが、米国の所有する爆薬量9トンを超える「通常」兵器(Mother Of All Bombというふざけた名称が付いている)も地上にクレーターを作るだけの破壊力を持った強力な爆弾である(ベトナム戦争やアフガニスタン攻撃で実際に投下された「デイジー・カッター」は約7トンの火薬量(ちなみに私はベトナムで博物館に展示されている「本物」の「デイジー・カッター」を見てきた。巨大だった))。気化爆弾と呼ばれる空気中の酸素と強烈に反応して大きな熱エネルギーで焼き尽くす、という「通常」兵器もある。これらは「大量破壊兵器」ではないのか。しかも、米国は核兵器、生物・化学兵器持ち放題である。自分は持っていながら相手には持つな、というのは同義が通らない。故にこれを理由とするも無理がある。

 しかも、米国が「対テロ戦争」を始めるきっかけとなった2001年9月11日の世界貿易センタービル崩壊事件(以下:911)が米国の自作自演である可能性が否定できない(私は当初から911は自作自演であることを主張してきたし、国際ジャーナリストである田中宇氏も自作自演を基本路線として論調を展開している。何よりもまず、911というのは日本の110番、119番に相当する番号だけに狙った数字であるとしか私には思えない)以上、イラク側からしてみれば言いがかり以外のなにものでもない今回の状況は、多くの人々に不幸を生み出すだけで本質的な問題は何も解決しない。これではまったく支持できないどころか根本原因が不明確なまやかしの状況に世界各国が踊らされている、ということになる。

 これでは世界が世界として成立しない。自国の論理だけですべてをまかり通すような「ならず者国家」が世界を征するということになる(くどいようだが、ここでいう「ならず者国家」とは米国認定の国々だけでなく米国自体も「ならず者国家」であることをさしている。両者に本質的な相違はない)。

 よって、米国側はフセイン政権打倒、勝利で終わらせるのではなく、イラク側も政権崩壊、降伏で終わらせるのではなく、米国、英国の即時撤退、降伏で終わらせるのが最善であると断言する。しかし、ここに「勝者」を存在させてはならない。

 ドキュメンタリー監督であり、日本でも単館上映作品としては驚異的な動員数を記録している映画「ボウリング・フォー・コロンバイン」(この映画は紛れもなく傑作で、入場2時間待ちをするだけの価値があると私は断言する)の監督でもあるマイケル・ムーア監督がアカデミー賞(ドキュメンタリー部門)の授賞式で語った言葉に私は強く共感する

 「まやかしの選挙で決まった大統領が、まかやしの『正義』で、まやかしの『戦争』をしている。

 サダム・フセインがテロリストなのではなく、テロ支援を行っているのではなく、明確な理由もないままありもしない「正義」を身にまとい、まやかしの人道主義者を標榜しているジョージ・ブッシュこそがテロリストなのだ。イラク攻撃の論理はまさにテロリストの論理であり、それ以外では決してない

 オサマ・ビンラディン然り(彼の存在自体既に真偽が怪しいが)、悲しむべきことに世界中にはあらゆるテロリストが存在するが、その中で紛れもなく最強で論理のすり替えに長けていて最も恐るべきテロリストはブッシュである。それに世界は気が付くべきだ。

 テロリストに信義も正義もないあるのは恐怖だけだ。よって、それらは根絶せねばならない。根絶するのは極端に難しいことだが(そもそも哺乳類はその脳の構造から恐怖を感じやすい生物である)、今やるべきことは米国、英国はイラクから撤退することであり、イスラエル対パレスチナの戦闘をやめることであり、世界各国で起きている内戦、紛争をすべての側でやめることである。そして予め人間に備わっている理解能力を以って話し合いで決着をつけるべきである。暴力に頼るべきではない。

 加えて、今回のイラク攻撃には手続き上でも非常に問題がある。まず、宣戦布告が存在しない(国連決議もない。まぁ、米国は国連負担金を何年にも渡って滞納しているので国連など最初から相手にしていないのかもしれない)。これは重大な相手国の国家の主権を脅かす国際法違反であり、厳密には戦争、に位置づけるべきではない。侵略と言い換えても差し支えない。これを許すと米国こそが世界的に絶対な独裁政権ということになってしまう。これこそ恐怖の対象だ(つまりテロ国家だ、ということだ)。

 明確な裏付けがあろうがなかろうが、「対テロ」と誰かが言い出せばすべてが正当化される、という非常に由々しき事態が全世界で進行中なのだ。しかも、それに日本も陰ながら加担しているという危機感を平和ボケしている日本人は持つべきだろう。故に、米国礼賛を隠しもしない小泉純一郎首相も国際法的に断罪に処されて当然である。彼を支持している人間も同罪である。私は絶対に支持しない(情報収集衛星を打ち上げる前に、既に設計寿命を超えて運用している「ひまわり5号」の代替機をまず打ち上げるべきだ)。

 イラクでは過去20年にわたり独裁政権をしき民衆を苦しめる結果となった(本当に「苦しい」と思っているかどうかはわからない)。これは事実だが、この独裁政権を樹立させる最大の援助国は米国だったことも事実だ。米国対ソビエト社会主義共和国連邦(ソ連)の冷戦終結後、各国でテロリストが台頭したことは事実だが、対共産主義政策の一環で各地でテロリストを教育、訓練してきたのは米国である。故に、この状況は米国の自作自演でしかないのだ。

 経済制裁により苦しむのは政権ではなく守るべき民衆であるということは既に周知の事実だ(イラク然り、北朝鮮然り)。よって、経済制裁は何も解決しないばかりか、人道的観点から明らかに間違った方策である。それをわかっていながら10年間制裁してきたのは既に人道的に許されない行為であるはずだ。そのことこそ罪に問われるべきである。

 故に、即刻各国に対して行っている経済制裁を解き、解決に向けての糸口を根気強く話し合いで模索すべきだ。人間の脳は他者認識できるという能力を有している以上、不可能なことではない(その能力を捨て去った者は人間として定義できないだろう)。思考停止した状態では何も解決しない

 米国の根本にはあらゆることでナンバーワンでいたい、という意識がある。故に、今回のイラク攻撃に際して「古いヨーロッパ」として一蹴したフランス、ドイツ、ロシアの連合を恐怖しているとも言える。この3国が結託すれば世界の基軸通貨はドルからユーロに転換されてしまう。既にドル体制は崩れつつあり、外貨準備資金としてユーロ建てが増えつつあることも事実だ。

 我々のすべきことはまだたくさんある。攻撃されっぱなしでその後放置されてしまっているアフガニスタンをどうするのか、という問題もある。そういう事後処理をきちんとしないまま進んでしまっては世界的に荒廃が進むだけだ

 批判するだけでは物事は好転しない。できることなら、小泉首相、ブッシュ大統領、ブレア首相をリコールしたい。そこから物事は始まる。私にできることはただひとつ。沈黙しないことだ。それは誰にでもできることだ。

(2003. 3.30.)


参考にしたもの

  • 朝日新聞 http://www.asahi.com/
  • 田中宇の国際ニュース解説 http://tanakanews.com/
  • その他NHK、民放各局のニュース報道、ニュースサイト

 

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