第69回 コラム:迷惑メールの量を減らしたい
迷惑メールに対する特効薬は存在しない。Bill Gatesは2年以内に撲滅するといっていたが、無理だと断言できる。のっけから悲観的な書き方をしてしまったが、事実なので仕方がない。迷惑メールを送信する事が商売として成り立ってしまう現実を考えると、次から次へと模倣や改良が繰り返されるのは当然のような気がする。一応技術的に対抗しよう、という流れはあるが、方針が統一されていない上に実効性が既に疑われており、やはり撲滅には程遠いと感じる。
迷惑メールは以前から私のメールアドレスに送信されてくる事はあったが、たいした数ではなく黙って削除していればいいだけのものだった。しかし、今年(2004年)に入って爆発的にその数が増えていき、1日50通を超えるようになるとさすがに我慢できなくなってきた。世界的にも迷惑メールの割合は激増しており、2004年5月は電子メール1.3通に1通が迷惑メールだった、という報道もある。
私の場合、自分のメールアドレスを自分のWebPageにそのまま書き出しているので、ロボットが収集しやすい状態である事は理解しているが、今更隠してしまったり、わざと(ロボットに対して)わかりにくくしてしまうのに意味を感じていないので、そのままにしている。
インターネット接続が一般化する以前から電子メールを利用している身としては、今更それがない状態は耐えられない上に、連絡手段のメインとしているのでそれが奪われるのは心底困る(電話が苦手なのでそれをメインにするつもりは毛頭ない)。知り合いにも電子メールでしか連絡が取れない者もいるため、念のため常にどこかに私のメールアドレスを掲示しておく必要があるのではないかとも思っている(これが自分のWebPageにそのまま書き出している理由だ)。
そもそもネット黎明期では「他人に迷惑をかけない」ということを第一に置いていたような記憶がある。大学時代(1988年)に始めてインターネット(当時はこの名称は使われなかったが)に触れたとき、「世界中がつながっているから誤ったときの影響は予測できない」とか「自分の意図しない結果が返ってきたときは自分が悪いと思え」などと先輩に教わった。大げさな面もあるが、当時はそれが当たり前だと思っていた。現在ではそういう精神が完全に失われているような気がする。嘆かわしい。
モラルが欠落している者に対してモラルを説いても無駄である事は理解しているので、こちら側で対処するしかない。不毛である。まさに「迷惑」である。
少し前までは迷惑メールの中に添付されているウィルスの種類を調べたり、架空請求メールの馬鹿馬鹿しい文言を笑い飛ばすだけの余裕があった。さすがに数が多くなってくるとそんな暇はない。開きもせずに削除するしかないのだが、この不毛な作業に嫌気がさしてきた。電子メールの送受信は携帯電話のパケット通信サービスを利用していたので、これが従量課金であるため、この無駄な通信のために定額とはいえ通信料を払い続けるのは大きな損失と言える(この損失を多少なりとも緩和させるため、自宅の光ファイバーに接続する無線LANを設置した)。
さらに能動的な対応として、私が契約しているプロバイダであるBiglobeが2004年4月から(やっと)迷惑メール拒否サービス(無料)を始めたので、それを利用する事にした。この手のサービスは基本的にパターンマッチングで、この文字列が含まれている場合は遮断する、というルールをひたすら記述するしかないものだ。よって、すべての迷惑メールを遮断できるわけではない。えてしてすり抜けるほうが多いものだ。すり抜けた場合の落胆を感じたくなかったので今までこの手のサービスを利用する気がなかったのだが、せめて半分まで減らしたい、という低い目標設定のもと重い腰を上げる事にした。
Biglobeの拒否サービスは他の自動振り分けサービスと違い、送信されてきた事をユーザが把握する事ができない。振り分けサービスなら後から削除しなければならない手間があるが、有無を言わさず遮断してしまう潔さが気に入った。まぁ、設定に気を使わなければならない、という点はあるが(でないと受信したいメールも遮断してしまいかねない)。一般的なFrom:アドレス指定、Subject:指定に加えて、メールヘッダの任意の位置に任意の文字列が含まれているのを検出して遮断できる。BiglobeではRecieved:に記録されているドメインを指定することを推奨している。最近の迷惑メールはFrom:アドレスはでたらめかロボットなどで勝手に収集した無関係なアドレスだったりするので、単純なアドレス指定では防ぎきれない。電子メールはリレーのようにサーバ間で受け渡しされ、その際の記録としてRecieved:に送受信したサーバのアドレスが記載される。この情報を使うのでFrom:アドレスが詐称されていても遮断できる、というわけである。実際、有効な手段ではあるが、ドメインは星の数ほどあるので、いたちごっこになるのは致し方ない。
実際に設定に入る。Subject:「非/未承諾公告」は有無を言わさず遮断(デフォルトでも遮断設定になっている)。次に送信アドレスが固定されている、「非/未承諾広告」の表示がない広告メールも遮断する。ここまではまったく問題ない。しかし、これだけでは遮断できる迷惑メールの数はたかが知れている。本当に遮断したいのは怪しげなドメイン、アドレスから送信されてくる迷惑メール、他人を偽って送信されてくる迷惑メールなのだから。実はこれらは非常に厄介である。
(2004. 6.19.)
(2004. 8.21.)