カンタータ・データ '99
BCJのコンサートに登場するカンタータについてのデータ
をお届けします!
コンサートに向けての“予習”などにお役立て下さい!
 

 '99年度のBCJ定期公演が開幕しました!
 このHPにおいでいただいている皆様の中には、BCJの定期公演で取り上げられるカンタータについて“予習”されている方もいらっしゃることと思います。私も、毎回できるだけ個々のカンタータになじんでから演奏会に伺うようにしています。と申しますのは、何も知らずに初めて聴いてもバッハのカンタータはそれぞれの美しさがあり楽しく聴くことができるのですが、やはり「言葉と音楽の結びつき」が大きな意味を持つカンタータ演奏では、内容への理解の度合いが演奏を通して得られるものの大きさに深く関わっていると思うからです。まして、その「言葉と音楽の結びつき」にこだわって取り組んでいるBCJの演奏ですから、なおさら事前にできるだけ曲の世界に親しんでから実演に接したいものです。鈴木雅明さんから毎回のプログラムの“巻頭言”をお送りいただいている(本当にありがとうございます!)のも、この点を踏まえてのものです。
 そこで、限られた情報ではありますが、今年度のBCJ定期で取り上げられるカンタータに関する基本データを、順次このコーナーで紹介していこうと思います。これらのデータをもとに『聖書』を参照していただく(次回に取り上げられるカンタータのデータから当該聖句へのリンクを設けました!)などしてコンサートを迎え、当日入手できるプログラムと合わせ、より深いBCJ体験を持っていただけましたら幸いです。 (04/09/11改良) 

・以下の、演奏会ごとに示した曲目のところをクリックするとデータにジャンプします。
・次回に取り上げられるカンタータ・データ中の「礼拝での聖句」欄の書簡、福音書名をクリックすると、
 当該の聖句を読むことができます
カンタータの基礎知識についてはこちら(「カンタータの源を求めて」)をご覧下さい!

*参考文献・・・『バッハ事典』(礒山雅/小林義武/鳴海史生編:東京書籍刊:1996)
          『バッハ全集』第1巻〜5巻(『バッハ全集』編集部:小学館刊:1995〜99)


【J.S.バッハ/教会カンタータ全曲シリーズ 〜ライプツィヒ1723年 V 〜】にむけて

   5月31日(月) 第38回東京定期:東京オペラシティ コンサートホール 19:00 (終了)
   6月 6日(日) 神戸:松蔭女子学院大学チャペル 15:00 (終了) 

        曲目 《汝の怒りによりて》 BWV25
           《見よ,父の我らに賜いし愛の》 BWV64
           《心と口と行いと生きざまで》 BWV147


【「バッハの真髄を聴く〜教会カンタータ〜」】
  所沢ミューズ・スペシャルプログラム 「バッハの宇宙〜時を超える旅〜」第2回
にむけて 

   6月 7日(月) 所沢ミューズ:アークホール 19:00  (終了)

        曲目 《心と口と行いと生活が》 BWV147
           《私の心は憂いに満ち》 BWV21 *ライプチッヒ版


【J.S.バッハ/教会カンタータ全曲シリーズ 〜ライプツィヒ1723年 VI 〜】にむけて 

   10月 9日(土) 神戸:松蔭女子学院大学チャペル 15:00 (終了) 
   10月11日(月:振) 第40回東京定期:東京オペラシティ コンサートホール 14:30 (終了)

        曲目 《我が魂よ,主を頌めまつれ》 BWV69a
            《汝の主なる神を愛すべし》 BWV77
           《エルサレムよ,主を讃えよ》 BWV119


【J.S.バッハ/教会カンタータ全曲シリーズ 〜ライプツィヒ1723年 VII 〜】にむけて

    2月21日(月) 第41回東京定期:東京オペラシティ コンサートホール 19:00 (終了)
    2月26日(土) 神戸:松蔭女子学院大学チャペル 15:00 (終了) 
   

        曲目 《われ悩める人,誰ぞわれを救わん》 BWV48
           《エフライムよ,われ汝をいかになさんや》 BWV89
           《その御名にふさわしき栄光を主に捧げまつれ》 BWV148

             《われ信ず,尊い主よ,わが不信仰を助けたまえ》 BWV109
  *1723年の9月から10月にかけて初演されたと考えられるカンタータ集。実際の季節とは違う季節の演奏に
    なるが、いずれも「救い」や「癒し」をテーマにしたカンタータでバッハ・イヤーのBCJがスタートすることは意義
    深いことに思える。



 《私の心は憂いに満ち》 BWV21  
 
初演 ワイマール稿:1713年10月8日?
ケーテン稿  :1720年秋
ライプチッヒ稿:1723年6月13日 *ライプチッヒでの職務第3作
用途 追悼式?
礼拝での
   聖句
書簡  :第1ペテロ 5,6-11
福音書:ルカ 15,1-10 (いなくなった羊、なくなった銀貨の譬え)
歌詞 S.フランク作(?)
(引用:詩編94,19[第2曲]、詩編42,12[第6曲]、詩編116,7およびG.ノイマルクのコラール[第9曲]、  
 黙示録5,12-13[第11曲] )
編成 声楽:ソロ(STB)、合唱
器楽:トランペット3、ツィンク、トロンボーン3、ティンパニ、オーボエ、ファゴット
    ヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音
*以上、ライプチッヒ稿のデータです。
演奏時間 約40分 (アーノンクール:37分、コープマン:41分、ヘレヴェッヘ:38分) 
構成 第 I 部
 第1曲:シンフォニア(オーボエ、ファゴット、弦楽、通奏低音)
 第2曲:合唱(オーボエ、ファゴット、弦楽、通奏低音)
 第3曲:アリア(ソプラノ、オーボエ、通奏低音) 
 第4曲:レチタティーヴォ(テノール、弦楽、通奏低音)
 第5曲:アリア(テノール、弦楽、通奏低音) 
 第6曲:合唱(ソプラノ、弦楽、通奏低音)
第 II 部
 第7曲:レチタティーヴォ(ソプラノ、バス、弦楽、通奏低音)
 第8曲:二重唱(ソプラノ、バス、通奏低音)
 第9曲:合唱(ソロ/合唱、ツィンク、トロンボーン3、オーボエ、弦楽、通奏低音)
 第10曲:アリア(テノール、通奏低音)
 第11曲:合唱(ソロ/合唱、トランペット3、ティンパニ、オーボエ、ファゴット、弦楽、通奏低音)
*以上、ライプチッヒ稿のデータです。
備考
青年時代のカンタータ創作の総決算というべき壮大な記念碑」(A.デュル)
複雑な成立事情についてはこちらをご覧ください。
BCJの演奏では、第30回定期でライプチッヒ稿がトロンボーン抜きで披露され、カンタータCD第6巻ではケーテン稿に基づいた「ニ短調版」が全曲収録され、またワイマール稿のみにあらわれるテノール・ソロを含む楽曲3曲を合わせて収録している。99年6月にはトロンボーンを含むライプチッヒ稿がレコーディングされカンタータCD第12巻に収録される。
BWV21の「Bach Cantatas Website」のデータはこちら


《汝の怒りによりて》 BWV25 
 
初演 1723年8月29日、ライプチッヒ 
用途 三位一体節後第14日曜日 
礼拝での
   聖句
書簡  :ガラテア 5,16-24
福音書:ルカ 17,11-19 (イエスがらい病人を癒す)
歌詞 J.J.ランバッハ作の詩に基づく (引用:詩編38,4[第1曲]、J.へールマンのコラールから[第6曲]) 
編成 声楽:ソロ(STB)、合唱
器楽:ツィンク、トロンボーン3、リコーダー3、オーボエ2
    ヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音 
演奏時間 約15分 (アーノンクール:15分、コープマン:16分)
構成 第1曲:合唱(ツィンク、トロンボーン3、リコーダー3、オーボエ2、弦楽、通奏低音)
第2曲:レチタティーヴォ(テノール、通奏低音)
第3曲:アリア(バス、通奏低音)
第4曲:レチタティーヴォ(ソプラノ、通奏低音)
第5曲:アリア(ソプラノ、リコーダー3、オーボエ2、弦楽、通奏低音) 
第6曲:コラール(合唱、ツィンク、トロンボーン3、リコーダー3、オーボエ2、弦楽、通奏低音)     
備考
人間を蝕むを、不治とされていたらい病に喩え、らい病人たちもわけ隔てなく癒したイエス救い主として頼み、讃美しようという主題のカンタータ。
らい病をめぐる差別と戦いながら活動したイエスに対し、罪の深さをらい病で喩えることは、キリスト教史の中でも見られる偏見と誤解を示すもの、との見方もある。
第1曲冒頭の器楽部分につけられた通奏低音(音価が引き延ばされているのでよく聴いてください!)や、その後に合唱に絡んで登場するツィンク、トロンボーン、リコーダーによる合奏体が、「マタイ」"受難のコラール"の旋律を奏でています。(ただ、デュルによると、想定されている歌詞は同じ旋律で歌われる別のコラールであるとのこと)
BWV25の「Bach Cantatas Website」のデータはこちら


《われ悩める人》 BWV48
 
初演 1723年10月3日、ライプチッヒ 
用途 三位一体節後第19日曜日 
礼拝での
   聖句
書簡  :エフェソ 4,22-28
福音書:マタイ 9,1-8(イエスが中風の者を癒す)
歌詞 作者不詳
(引用:ローマ書7,24[第1曲]、M.ルティーリウスのコラール[第3曲]、作者不詳のコラール[第7曲])   
編成 声楽:ソロ(AT)、合唱
器楽:トランペット、オーボエ2、ヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音
演奏時間 約16分 (アーノンクール:16分、コープマン:15分)
構成 第1曲:合唱と器楽コラール(トランペット、オーボエ2、弦楽、通奏低音)
第2曲:レチタティーヴォ(アルト、弦楽、通奏低音) 
第3曲:コラール(合唱、トランペット、オーボエ2、弦楽、通奏低音)
第4曲:アリア(アルト、オーボエ、通奏低音) 
第5曲:レチタティーヴォ(テノール、通奏低音)
第6曲:アリア(テノール、オーボエ、弦楽、通奏低音)
第7曲:コラール(合唱、トランペット、オーボエ2、弦楽、通奏低音) 
備考
第1曲にトランペットで演奏されるコラールが第3曲と終曲のコラールでも用いられ、次のカンタータ年巻のコラールカンタータの様式を思い起こさせる作品。
救いを求めるあえぎ声のような冒頭合唱の苦しみが、イエスによる中風の癒しの福音書章句のように癒されていくさまを描く。そして、3度登場するコラール旋律はその救い手イエスに他ならないことを表している。
BWV48の「Bach Cantatas Website」のデータはこちら

 第6曲のテノールアリアは、テノールの声部が大部分ヘミオラの大きな3拍子になっているので、鈴木雅明さんの指揮に注目していました。2月21日の東京公演では、フレーズの終わりの部分にあたるところでは大きなヘミオラの3拍子で指揮されていましたが、基本的には拍子通りの3拍子で振っていらっしゃいました。コンティヌオの確かな歩みがあってこそ、テノールのヘミオラの音型の躍動が生きるのだな、と感じました。(00/02/26)


《見よ,父の我らに賜いし愛の》 BWV64
 
初演 1723年12月27日、ライプチッヒ 
用途 降誕節第3日  
礼拝での
   聖句
書簡  :ヘブライ 1,1-14
福音書:ヨハネ 1,1-14 (永遠の言葉である神の子の、由来と本質)
歌詞 作者不詳 [ヨハン・オスヴァルト・クナウアー(1720)にもとづく]
(引用:第1ヨハネ 3,1[第1曲]、M.ルターのコラールから[第2曲]、G.M.プフェッファーコルンのコラール
から[第4曲]、J.フランクのコラールから[第8曲])
編成 声楽:ソロ(SAB)、合唱
器楽:ツィンク、トロンボーン3、オーボエ・ダモーレ
    ヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音
演奏時間 約20分 (リヒター:20分、アーノンクール20分)
構成 第1曲:合唱(ツィンク、トロンボーン3、弦楽、通奏低音)
第2曲:コラール(合唱、ツィンク、トロンボーン3、弦楽、通奏低音) 
第3曲:レチタティーヴォ(アルト、通奏低音)
第4曲:コラール(合唱、ツィンク、トロンボーン3、弦楽、通奏低音) 
第5曲:アリア(ソプラノ、弦楽、通奏低音)
第6曲:レチタティーヴォ(バス、通奏低音)
第7曲:アリア(アルト、オーボエ・ダモーレ、弦楽、通奏低音)
第8曲:コラール(合唱、ツィンク、トロンボーン3、弦楽、通奏低音)  
備考
クリスマス用の作品ながら、はかない現世の有限性に対するイエスと天国の永遠性がテーマとなっているため、降誕の喜びとともに、死を思い来世を待ち望むことが考察されている。真摯な響き中に降誕の喜びの意味を意義深く盛り込んだ異色のクリスマス・カンタータである。
第1曲のフーガ主題の冒頭のフレーズ「sehet:見よ」は完全な形では14回(バッハの象徴数) 現れる。
第5曲のソプラノ・アリアが世俗舞曲である「ガヴォット」の形態で書かれていることは、「この世」を象徴したものであろう。
第8曲のコラールは、モテット『イエスよ、わが喜び』で有名なもの。
BWV64の「Bach Cantatas Website」のデータはこちら


《我が魂よ,主を頌めまつれ》 BWV69a
 
初演 1723年8月15日、ライプチッヒ  
用途 三位一体節後第12日曜日  
礼拝での
   聖句
書簡  :第2コリント 3,4-11
福音書:マルコ 7,31-37 (耳の聞こえない者の癒し)
歌詞 作者不詳 [ヨハン・オスヴァルト・クナウアー(1720)にもとづく] 
(引用:詩編103,2[第1曲]、S.ローディガストのコラール[第6曲])                
編成 声楽:ソロ(SATB)、合唱
器楽:トランペット3、ティンパニ、
   リコーダー、オーボエ3、オーボエ・ダ・カッチャ、オーボエ・ダ・モーレ、ファゴット      

    ヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音                   
演奏時間 約19分 (アーノンクール19分、コープマン:18分) 
構成 第1曲:合唱(トランペット3、ティンパニ、オーボエ3、弦楽、通奏低音)
第2曲:レチタティーヴォ(ソプラノ、通奏低音)
第3曲:アリア(テノール、リコーダー、オーボエ・ダ・カッチャ、通奏低音)
第4曲:レチタティーヴォ(アルト、通奏低音) 
第5曲:アリア(バス、オーボエ・ダモーレ、弦楽、通奏低音)
第6曲:コラール(合唱、トランペット、オーボエ3、弦楽、通奏低音)  
備考
バッハ最後のカンタータ創作と考えられるBWV69(1748/8/26初演)の原曲。1,3,5曲の音楽はそのまま使われた。(ただし、第3曲は1727年に調と編成が変更された。) イエスがガリラヤで耳の聞こえない者を癒したという福音書章句の記事をふまえ、神の全能と慈愛に対する讃美を、大規模な編成華やかに展開するカンタータ。
第4曲でイエスの癒しの言葉「エッファタ」(開け)が語られたあとの通奏低音の喜ばしげな動きが印象的。
終結コラールはヴァイマール時代のカンタータBWV12から採られたもの。
BWV69aの「Bach Cantatas Website」のデータはこちら


《汝の主なる神を愛すべし》 BWV77
 
初演 1723年8月22日、ライプチッヒ 
用途 三位一体節後第13日曜日  
礼拝での
   聖句
書簡  :ガラテヤ 3,15-22
福音書:ルカ 10,23-37 (慈悲深いサマリヤ人のたとえ)
歌詞 作者不詳 [ヨハン・オスヴァルト・クナウアー(1720)にもとづく] 
(引用:ルカ 10,27[第1曲]、コラール〔ただし、自筆総譜では歌詞の指定なし〕[第6曲]) 
編成 声楽:ソロ(SATB)、合唱
器楽:トランペット、オーボエ2、ヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音                 
演奏時間 約16分 (レオンハルト:16分、コープマン:14分)  
構成 第1曲:合唱(トランペット、弦楽、通奏低音)
第2曲:レチタティーヴォ(バス、通奏低音)
第3曲:アリア(ソプラノ、オーボエ2、通奏低音)
第4曲:レチタティーヴォ(テノール、弦楽、通奏低音) 
第5曲:アリア(アルト、トランペット、通奏低音)
第6曲:コラール(合唱、トランペット、オーボエ2、弦楽、通奏低音)   
備考
「神への愛」「隣人愛」をテーマにした、“愛”をめぐるカンタータ
第1曲で、トランペットがルターのコラール「これぞ聖なる十戒」を演奏(その入りは文字通り10回!)し、「愛」こそが十戒の本質であることが示される。通奏低音にもこのコラールが響き、トランペットとの間に厳格なカノンを形成して歌声部を包み込み、テーマを強調している。
第3曲のアリアにおける2本のオーボエによる平行3度・6度による進行は、愛する神に魂が寄り添うさまを象徴していると考えられる。
第4曲のアルトのアリアは、自らの“愛”の弱さを歌うが、神性を象徴するトランペットの使用や3声書法が、この人間の弱さを神が見捨てはしないことを物語っている。
自筆総譜では歌詞の指定がない終結コラールに、鈴木雅明さんどのような歌詞を選択されるか、楽しみです! (慣例ではD.デーニケのものが用いられている。ただし、レオンハルト、コープマンは異なる歌詞を選択している)
BWV77の「Bach Cantatas Website」のデータはこちら


《エフライムよ,われ汝をいかになさんや》 BWV89
 
初演 1723年10月24日、ライプチッヒ                           
用途 三位一体節後第22日曜日  
礼拝での
   聖句
書簡  :フィリピ 1,3-11
福音書:マタイ 18,23-35(悪いしもべの譬え。恵みを失う危険について)                 
歌詞 作者不詳
(引用:ホセア11,8[第1曲]、J.へールマンのコラール[第6曲])
編成 声楽:ソロ(SAB)、合唱
器楽:ホルン、オーボエ2、ヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音
演奏時間 約12分 (レオンハルト:13分、コープマン:12分) 
構成 第1曲:アリア(バス、ホルン、オーボエ2、弦楽、通奏低音)
第2曲:レチタティーヴォ(アルト、通奏低音)
第3曲:アリア(アルト、通奏低音)
第4曲:レチタティーヴォ(ソプラノ、通奏低音) 
第5曲:アリア(ソプラノ、オーボエ、通奏低音)
第6曲:コラール(合唱、ホルン、オーボエ2、弦楽、通奏低音)  
備考
神の怒りを具象化する(シュヴァイツァー)通奏低音の動きに導かれ、バスが自由なアリアを歌い出す印象的なオープニング。前半ではそのあとアルトによって神の報復とその警告が述べられる。
4曲目からの後半では、その「われ」が負った負債イエスの血によって贖われることへの信仰と喜びが表されている。
ホルンパートは後年の加筆になるものとのこと。レオンハルト盤では演奏されている。コープマン盤では全曲演奏ではホルンは入っていないが、付録として第1曲がホルン付でも収録されている。
BWV89の「Bach Cantatas Website」のデータはこちら

 バッハの自筆総譜が消失し、初演時のパート譜のみで伝承されているこのカンタータにあって、唯一バッハ自筆のパート譜であるのが Corne du Chasse(= Corno da Caccia )と称するパート譜だそうです。このバッハによる追加は初演時のものであったのか後年のものであったのか不明ですが、このカンタータ自体の再演の証拠がないので、初演の直前に加えられた可能性も否定できません。そこで今回のBCJの演奏ではバッハ自身の手になるこのパートを加えて演奏をすることにしたそうです。
(参考:第41回定期公演プログラム「制作ノート」) (00/02/26)


《われ信ず,尊い主よ》 BWV109
 
初演 1723年10月17日、ライプチッヒ 
用途 三位一体節後第21日曜日  
礼拝での
   聖句
書簡  :エフェソ 6,10-17
福音書:ヨハネ 4,47-54(王の役人の息子の奇跡的治癒)
歌詞 作者不詳
(引用:マルコ 9.24[第1曲]、L.シュペングラーのコラール[第6曲])   
編成 声楽:ソロ(AT)、合唱
器楽:ホルン、オーボエ2、ヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音                    
演奏時間 約25分 (アーノンクール:25分、コープマン:22分) 
構成 第1曲:合唱(ホルン、オーボエ2、弦楽、通奏低音)
第2曲:レチタティーヴォ(テノール、通奏低音)
第3曲:アリア(テノール、弦楽、通奏低音)
第4曲:レチタティーヴォ(アルト、通奏低音) 
第5曲:アリア(アルト、オーボエ2、通奏低音)
第6曲:コラール(合唱、ホルン、オーボエ2、弦楽、通奏低音) 
備考
第1曲では、ソプラノから順次ソリスティックな音型が示され、それを全パートで受けとめるという形で音楽がすすめられていく。信仰をめぐって揺れ動く心のさまを描くこの場面を、アーノンクールはすべて合唱で、コープマンはソロのアンサンブルで演奏した。はたしてBCJの選択やいかに!
第3曲では第1ヴァイオリンと通奏低音パートに顕著な付点音符のリズム不安によろめく心を描く。
第4曲から、福音書章句に語られるイエスの奇跡が想起され、主の救いへの信仰が語られ、喜ばしげな足取りのアリアが歌われる。そして最後には、喜びに駆けめぐるような管弦楽の伴奏をともなったコラール神への力強い信頼を歌い上げる。
第1曲と第7曲に登場する「Corno da caccia」ではどんな楽器が登場するか、注目!
BWV109の「Bach Cantatas Website」のデータはこちら

 第1曲目の合唱は、第1ヴァイオリンのパートにあらわれるSoloとTuttiの交替の指示、フォルテ、ピアノの指示を参考にして、合唱とソリストの交代(ただひとつのパートが“ Ich glaube, lieber Herr”と歌うところをソロで、全パートが”Hilf, meinen Unglauben”と歌うところをTuttiとする)で演奏された。きちんとしたオリジナルな指示に基づくものではないが、その効果はなかなか説得力に富んだものでした。 また、通奏低音にチェンバロのパート譜が残されているので、BCJのコンサートでも使用されました。 
(参考:第41回定期公演プログラム「制作ノート」) (00/02/26)


《エルサレムよ,主を讃えよ》 BWV119
 
初演 1723年8月30日、ライプチッヒ 
用途 市参事会員交代式 
歌詞 作者不詳。(引用:詩編 147,12-14[第1曲]、ルターのコラール〔「テ・デウム」のドイツ語訳〕[第9曲])
編成 声楽:ソロ(SATB)、合唱
器楽:トランペット4、ティンパニ、リコーダー2、オーボエ3、オーボエ・ダ・カッチャ2    
    ヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音 
演奏時間 約25分 (アーノンクール25分)  
構成 第 1曲:合唱(トランペット4、ティンパニ、リコーダー2、オーボエ3、弦楽、通奏低音)
第 2曲:レチタティーヴォ(テノール、通奏低音)
第 3曲:アリア(テノール、オーボエ・ダ・カッチャ2、通奏低音)
第 4曲:レチタティーヴォ
     (バス、トランペット4、ティンパニ、リコーダー2、オーボエ・ダ・カッチャ2、通奏低音)
第 5曲:アリア(アルト、リコーダー2、通奏低音)
第 6曲:レチタティーヴォ(ソプラノ、通奏低音)
第 7曲:合唱(トランペット4、ティンパニ、リコーダー2、オーボエ3、弦楽、通奏低音)  
第 8曲:レチタティーヴォ(アルト、通奏低音)
第 9曲:コラール(合唱、器楽)
備考
BWV25の翌日に初演された、異例に大きな編成の堂々たる市参事会員交代式用のカンタータ。1843年4月18日、メンデルスゾーンが寄贈したバッハ記念像の除幕式の際、ゲヴァントハウスで演奏されたことでも知られる。
第1曲、第7曲の壮麗な合唱曲は、失われたヴァイマールもしくはケーテン時代の器楽曲の転用と考えられる。ただし、第4トランペットは転用の際の追加。世俗の権威に関するこの曲のために、「地」を表す4を盛り込もうとしたのだろうか。第4曲は市の威光を表すトランペットとティンパニの響きが両端を枠づけている。
行政府が神の似姿だと歌う第5曲のオブリガードのリコーダーに現れるスタッカートの音型は、このテキストに対するバッハの嘲笑を示すという説がある。
最後のコラールでは、ルター訳のドイツ語テ・デウム簡素で古風な和声づけによって歌われ、神の救いと祝福が祈られる。
BWV119の「Bach Cantatas Website」のデータはこちら


《心と口と行いと生活が》 BWV147
 
初演 1723年7月2日、ライプチッヒ    
用途 マリアのエリザベト訪問の祝日 
礼拝での
   聖句
書簡  :イザヤ 11,1-5  
福音書:ルカ 1,39-56 (マリアのエリザベト訪問,マリアのほめ歌)
歌詞 フランク[1717]に基づく (引用:M.ヤーンのコラールから[第6,10曲])        
編成 声楽:ソロ(SATB)、合唱
器楽:トランペット(バロック、スライド)、オーボエ2、オーボエ・ダモーレ、オーボエ・ダ・カッチャ2、
    ファゴット、ヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音(オルガン、チェンバロ)
演奏時間 約34分 (リヒター:33分、アーノンクール:32分、コープマン:30分、リフキン:27分)
構成 第I部
 第 1曲:合唱(トランペット、オーボエ2、弦楽、通奏低音)
 第 2曲:レチタティーヴォ(テノール、弦楽、通奏低音)
 第 3曲:アリア(アルト、オーボエ・ダモーレ、通奏低音)
 第 4曲:レチタティーヴォ(バス、通奏低音)
 第 5曲:アリア(ソプラノ、ソロ・ヴァイオリン、通奏低音)
 第 6曲:コラール(合唱、スライド・トランペット、オーボエ2、弦楽、通奏低音)
第II部
 第 7曲:アリア(テノール、チェロ、通奏低音)  
 第 8曲:レチタティーヴォ(アルト、オーボエ・ダ・カッチャ2、通奏低音)
 第 9曲:アリア(バス、トランペット、オーボエ2、弦楽、通奏低音)
 第10曲:コラール(合唱、スライド・トランペット、オーボエ2、弦楽、通奏低音)
備考
コラール『主よ、人の望みの喜びよ』であまりにも有名なカンタータ。原曲は、ワイマール時代に手がけられた待降節用のカンタータBWV147a。有名なコラールはライプチッヒでの演奏のための変更時に加えられた。ちなみにこのコラールは、「マタイ受難曲」のペテロの否認の後のアルトのアリア『憐れみたまえ』の直後に歌われているものと同一である。
マリアのエリザベト訪問の喜ばしい情景人間の罪深さと比較し、イエスへの愛と讃美を歌っている。
第6、10曲のコラール旋律の補強で用いられるスライド・トランペットについては、BCJトランペット奏者、島田俊雄さんによるこちらの研究もご覧ください。
BWV147の「Bach Cantatas Website」のデータはこちら


《その御名にふさわしき栄光を》 BWV148
 
初演 1723年9月19日(?)、ライプチッヒ  
用途 三位一体節後第17日曜日  
礼拝での
   聖句
書簡  :エフェソ 4,1-6
福音書:ルカ 14,1-11(水腫筒患者の癒し。婚宴での座席選びの譬え)               
歌詞 作者不詳(ピカンダー?)
(引用:詩編 96,8-9ないし29,2[第1曲]、作者不詳のコラール[第6曲]) 
編成 声楽:ソロ(AT)、合唱
器楽:トランペット、オーボエ3、ヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音                 
演奏時間 約19分 (リヒター:20分、アーノンクール:18分、コープマン:16分) 
構成 第1曲:合唱(トランペット、弦楽、通奏低音)
第2曲:アリア(テノール、ヴァイオリン・ソロ、通奏低音)
第3曲:レチタティーヴォ(アルト、弦楽、通奏低音)
第4曲:アリア(アルト、オーボエ3、通奏低音) 
第5曲:レチタティーヴォ(テノール、通奏低音)
第6曲:コラール(合唱、器楽合奏) 
備考
バッハの娘婿のアルトニコルによる1750年以降のものと思われる総譜の写しによって伝えられている作品。第6曲コラールの歌詞は伝えられていない。鈴木雅明さんの歌詞選択が楽しみ。
神の栄光を象徴するトランペットの響きに導かれて開始する第1曲の合唱から、喜ばしげな表情 が満ちている。安息への願いと喜びが続けて歌われていく。
第2曲にいきなり表れるアリアの技巧的なヴァイオリンのオブリガードは、今回のBCJでは寺神戸さんがクイケンアンサンブルとのコンサートで参加されないので、若松さんのソロがうかがえるのではないかと思います。
最後のコラールの旋律はBWV89やBWV136[CD11巻の一曲目]のコラールでおなじみの旋律です。
BWV148の「Bach Cantatas Website」のデータはこちら

バッハの手になる資料が消失しているために残る不確定要素がある。
第1曲目で3本のオーボエ属の楽器は演奏すべきか
→第1曲目は、通常すべての楽器を参加させるので演奏する
第6曲目のコラールでトランペットとオーボエは演奏すべきか
→弦楽器とオーボエ属が妥当であろう
第4曲のオブリガード(オーボエ3本)については、音域の関係から2本のオーボエ・ダモーレとオーボエ・ダ・カッチャが用いられた。コンティヌオはファゴット、チェロ、オルガン。
第6曲のテキストには、新バッハ全集の薦めの作者不詳のコラール《私のいとしい神に》の第6節が用いられた。コープマンと同じ選択になったが、カンタータ全体のテキストの流れも考え、また新バッハ全集以前にも示唆されており、支持者も多いことからの選択であるとのこと。
(参考:第41回定期公演プログラム「制作ノート」) (00/02/26)

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