Harmonica tips

ハモニカを骨の髄までしゃぶる法

harp & tools
a harmonica & tools to modify your harmonica

updated on
9/Dec/97
10/Dec/97
13/Dec/97

はじめに
ハーモニカのスケール
ストレートハープ(1stposition)
クロスハープ(2ndposition)
サードポジション(3rdposition)
その他のポジション(other positions)
ハーモニカのポジション(まとめ)
ハーモニカとピッチ
リードのファイリング
特殊ピッチによるスケールの拡張

はじめに

・ダイアトニックハーモニカ(mouth-harp、10穴ハープ)吹きだからといって、いつもいつも12キーのハモニカ全部を持ち歩いている訳じゃない。レギュラーバンドがあれば、よく使うキーは決まってくるし、ましてやリードがつぶれたときのために、全部のキーにスペアを持ち歩くなんてことは、プロでもない限りあんまりしないんじゃないかな。
うちのバンドでも80曲くらいのレパートリーのうち、ほとんどすべてが4〜5本のハーモニカで間に合ってしまうから、自分のバンドで吹いてる限り、数個のキーを持っていけば特に困らないはず。

・ところが、ライブをやってりゃ飛入りが入るということもあるし、突然トラを頼まれるということもある。そんなとき、持ち合わせのハーモニカに曲のキーが合わなかったらどうするか。

case1
突然飛入りした人がエルモアが大好きなスライドギタリストだった(うちのバンドにはDの曲はない。)
case2
ライブが終わったら、別の店でセッションしようとクラリネット吹きから誘われた(うちのバンドにはBフラットの曲もない。)

・こんなことを繰り返しながら、どうやってその場その場を乗り切るか(誤魔化すか)を考えてきました。

・したがって、このサイトのハーモニカに関する情報については、全編が「とりあえずその場をしのぐ方法」というコンセプトで統一されています。よって、これからハーモニカを始めたい方や、まじめに音楽に取り組むハーピストの方には向きません。そのような方のためには

"the blues harp page"
という素晴らしいサイトをおすすめします。こちらのリンク集から、お気に入りのサイトを探すとよいでしょう。

国内の情報を探したいときには
"join us Harpin'"
が大変充実しています。
また、教則本では、「ジャズ・ハープ・スタディ」(リチャード・ハンター著;シンコーミュージック刊)が参考になるでしょう。

・また、このサイトの間違い探しや、新しいアイディアの追加を待っています。

・このページの書き手はどんな音を出すんだろうという興味を持ってしまった酔狂な方はどうぞ

"the Profile page"
から我々"ブギウギ"のサウンドサンプルをお試しください。

 というわけで、まずはハーモニカとスケールのお話から。

 

1 ハーモニカのスケール

・まずは、普通のダイアトニックハーモニカでどんな音階がカバーできるかを考えてみよう。譜面を書くと、書いている方が分からなくなるので、ギターをご用意ください。次の図は、Eのハーモニカでカバーできる音階をギターの指板上に表したもの。

fig.1 Harmonica key in "E"

・赤い丸付き数字がその番号の穴を吹くことを、青い丸付き数字がその番号の穴を吸うことを示している。また、楕円はベンドすることによってカバーできる音域を示している。(現実には、ハーモニカのキーがEの場合、吹音9、10番のベンドは大変コントロールが難しく、ちょっと実用的ではない。)

・このように、ダイアトニックハーモニカには、どうしてもカバーできない音がある。このため、曲のキー毎にハーモニカを持ち替えなければならない。このとき、曲のキーに対して、どのキーのハーモニカを選ぶかがポイントだ。

 

2 ストレートハープ(1stposition)

・ストレートハープ(1stposition)とは、曲のキーそのままのハーモニカを選ぶことをいう。例えばAのハーモニカでAの曲を演奏することになる。このポジションでのスケールを見てみよう。

fig.2 1stposition "E" on "E"

・上図は、EのハーモニカでEのダイアトニックスケールを吹いたところを表している。(緑の円がルート音を示している。)とりあえず足りない音はなさそうだ。EのブルーズセッションにEのハーモニカで突撃してみよう。

・ときに、ブルーズでは所謂マイナー・ペンタトニックスケールが使われることが多い(以下単にペンタトニックスケール)。このスケールに乗せて演奏するととりあえずカッコがつくという奴だ。(さらにマイナー3rdとメジャー3rdの間の音、ブルーノート3rdが表現できれば無敵とされる。)

fig.3 1stposition "Em pentatonic" on "E"

・ありゃりゃ、音がないところがある(青の円)。このように、中域のオクターブに必要な7thの音(上図では、3弦の7フレット)とマイナーの3rdの音(上図では、5弦の10フレット)の音が出ないのだ。低域のオクターブではマイナーの3rdの音(上図では、6弦の3フレット)だけが足りない音になる。さらに、一番頼りになる高域のオクターブでは吹音8、9、10番のベンドが必要だが、このベンドを一発で美しく決められるのは、あなたが超絶テクニシャンでない限りC以下(ハーモニカのキーはGが最も低く、F#が最も高い。)のキーに限られる。

・ブルーズのハーピストがファーストポジションを使う場合、大抵キーがG、A,Bフラットのいずれかで、高域オクターブのピーピーした音と低域オクターブの地を這うような音だけが交互に出てくるというのはこういうわけだ。

・さて、キーは?と尋ねたらEだといわれたのに、始まってみたらどうもマイナー臭いということもよくある話。EはEでもEmだったのだ。それでも頑固なあなたは手に持つEのハーモニカで乗り切ろうと思っている。さてどうなるかだ。

fig.4 1stposition "Em" on "E"

・こりゃひどい。足りない音だらけだ(青の円)。特に、中、低域でマイナー3rdが出せないのはつらい。また、中域で、7th(3弦の7フレット)が出ないのもハンディになる。高域はマイナーの6th(1弦の8フレット)を出すことができない。

・つまり、この場合はできるだけ高域と低域のオクターブをうろうろして誤魔化すというのが正解であろう。裏技としては、中域のマイナー3rdは裏声でフェ〜とうなって代用するという手もある。ただし、1回のソロに1〜2回以上使うと馬鹿だとおもわれるので、繰り出すタイミングを間違えると上がっていったラインが帰ってこないなんてことも起こるから注意したいものだ。

2−2 ストレートハープの活用法

・本来ハーモニカが持っている、コード楽器としての特性を一番生かせるのがストレートハープ。したがって、メジャーの曲をタンブロックで伴奏しながら吹くためにはストレートハープが最適である。参考曲をいくつかあげてみると...

"Jug Band Waltz"by Memphis Jug Band ;1929

ハーモニカはウィル・シェイド。曲のキーはC。高域で、3rdとマイナー3rdの間を吹音8のベンドでトリルするあたり(この間のブルーノートを強調する技と考えてもよい。)はいつ聴いても素晴らしい。また、吸音の中低域のビブラートも華麗。収録LP、CD多数。
"Choking blues"by Kyle Wooten ;1920-30
曲のキーはA。フィドル弾きのフレーズをハーモニカでという伝統芸(最近ではチャーリー・マッコイが巨匠でしょうか。)の例。しかしこの人はどういう人なんだろう。知りたいところです。収録CD"Harmonica Masters";yazoo2019

・高域のオクターブをフルに使えるのもストレートハープの特徴。特に、高域でメジャー7thと7th、3rdとマイナー3rdの間でベンドができることを活かせば、ちょっとジャズっぽいブルーズを決めることもできる。もちろん、ジミー・リード調に気怠くいくのも味わい深い。

"New Block and Tackle Blues" ;1940

ハーモニカはリズム・ウィリー。この人についても人となりを知りたいところだ。曲のキーはC。高域で、このころ既に一昔前のスタイルだったであろうジャズブルーズを吹く。はっきりとしたラインと「芸」を感じさせる演奏が好ましい。ラインが追いやすく、練習曲にも向いている。ちなみにこのスタイルのビッグネームといえば、ブルーズ・バードヘッドにとどめを刺す。収録CD"Harp,Jugs,Washboads &Kazoos";JPCD-1505-2。

・次のページでは、いよいよクロスハープ(2ndposition)を味わってみよう。しゃぶり甲斐がありそうだ。

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