男子5000Mを観戦して

プロローグ

 







 10秒5に競技場が、沸いています。100Mの朝原選手が予選、決勝とも余裕で1位となった模様。100Mを走った選手も観客もスクリーンに映し出された10秒ほどのドラマの軌跡を追っていました。
 9秒台を予感させるような朝原選手の走り、一方、フィールドでは、ハンマー投げの室伏選手が2位に10メートルの差をつけて、大会新記録を更新中でした。そして、走り高跳びでは、今井選手と太田選手の一騎打ちが続いていました。
 こんなに騒然としていても、陸上競技は淡々とプログラムを消化していきます。この1年あまり、いろいろな競技場へ足を運んで気づいたことは、競技は必ず時間通りに始まることです。こういうところに陸上競技がシステム化されていった歴史を感じます。
 5000Mのスタートは、トラックの第3コーナーあたりがスタートです。1周400Mのトラックを12周と半分。
最初の1周は半分の200Mです。だから、選手がアップするのは、バックスタンドの前。わたしが座っている第2コーナーあたりからは、かなり遠くなりますが、遠目で選手を追っていました。わたしのまわりの人は朝原選手しかみていないのに、わたしだけココロは今から始まろうとする男子5000Mにありました。いよいよ始まると思うとドキドキしてきました。
 5000Mの日本記録は、高岡選手(カネボウ)の13分13秒40です。だいたい400M1周を64〜66秒、1キロを2分40秒台で走るとこの記録に近づくことができます。

レース経過

 陸上競技全般にいえることですが、スタートは静かです。5000も静かにスタートしました。でも、前に出るのは、予定通りの選手です。高岡選手(カネボウ)、佐藤選手(中国電力)、瀬戸選手(カネボウ)、前田選手(アラコ)。佐藤選手がGGNのA組での優勝に自信をつけらたのか、高岡選手をマークしているように見えました。どの位置につけるかというのは、おそらく個々の選手にとって重要なことだと思いますが、そこまで深く考えて観戦するところまで、わたしは至っていないので、観たままを書き進めていくことになります。(1周64秒。日本記録を狙えるペースです。)
 スタートしてからしばらくしたら、マイナ(アラコ)、ドゥング(ホンダ浜松)の外国人選手がすっと前に出てきました。高岡選手が前にいる、と思えたのはあっという間で、2人の外国人選手がひっぱる展開になることを予感させました。日本選手権は、今回から規定が変わって、外国籍の選手はオープン参加扱いとなって、入賞対象からはずれてしまいます。いわゆる「日本人1位」が1位となるのです。2人の外国人選手に、つづいて高岡さん以下、「日本人」選手。山口選手(NEC)も前につきました。山口選手は、5月のカージナルスで、1万メートルの27分台を出されています。その勢いをそのままでしていただけたらと思いました。(2周64秒、相変わらずいいペースです。)
 1500メートルあたりになると、遅れる選手もでてきて、あっという間に縦長になりました。2人の外国人選手のうしろに、高岡選手がつくという、高岡選手にとっては、格好のレース展開のように見えました。(3周63秒、さらにいいペースです。)先頭は、2人の外国人選手に高岡、前田、山口選手。この5人が先頭集団を形成しつつあります。その後ろに中村(カネボウ)、佐藤選手。全体がさらに長くなっていきます。1周63秒ですから、かなりのハイペースといっていいでしょう。
 このあたりで前田選手が遅れ出しました。最近のレースではあまりいい結果を出されていないようで、故障でもあるのでしょうか。心配です。前田選手は、京都産業大学の出身です。いわゆる「箱根ランナー」ではありません。彼の長い足、大きなストライドには強さを感じます。今回は、このあとだんだんと遅れてしまわれましたが、期待しているランナーの1人なので、是非、今後のところで、実力通りの走りをみてみたいと思います。
 前田さんの遅れだけでなく、ここで、後ろからつけてきたのが、入船さん、野田さんです。第2集団の形成が、興味深くなってきました。ここで1周は66秒と少し落ちてきています。先頭から順にはドゥング、マイナ、高岡、山口、岩佐(大塚製薬)、瀬戸、佐藤、中村、野田(ホンダ)。岩佐さんが前に出て、瀬戸さんが下がって、後ろから野田さんがぐっと前に出てきました。先頭の3〜4人が着々と前を引っ張りながら、すぐ後ろでは、中盤をだれがどの位置で走るのか、それぞれの思惑が交錯しているようでした。この1周は66秒。
 レースも半分を過ぎて、第1集団、第2集団が明確になってきました。ドゥング、マイナ、高岡、山口、岩佐、瀬戸が第一集団。第2集団は佐藤、野田、入船(カネボウ)、徳本(日清)、小島(旭化成)。ここで前半、前にいた前田さん、中村さんは後方に下がってしまったようです。変わって後ろから淡々と前をうかがうのが徳本さん。大学生のときのイメージが強いので、日清のユニホームを着られた徳本さんと「法政の徳本さん」が同一人物と気づきにくいかと思います。(その点、坪田さんは、その後のすばらしい活躍もあり、コニカのユニホームがすっかりお似合いです。)徳本さんは、兵庫リレカ、大阪GPでも観ていますが、確実にひとつひとつのレースをこなしてられるような印象でみています。前日の1500では惜しくも2位でした。1500での日本新も狙ってられるとの情報もあり、徳本さんにとっての5000という種目はどういう位置付けなのかわかりませんが、いずれにしても大学生のときに注目されるべくして注目された選手なので、実業団での活躍を願わずにはいられません。*ここからしばらくラップを記録し逃しました。
 第2集団の前のほうでは、どなたが前に出るのか目が離せませんでした。佐藤さん、野田さん、徳本さん、入船さんが、第1集団とは少し離されてしまっていますが、どの選手も前に出ようと必死でくらいついています。あと4周ほどですから、最後の力をふりしぼるわけでもなく、でも後退してはいけない、選手にとってももっとも過酷な状況ではないかと思います。小島、小畑(安川電機)、石毛(ヤクルト)も第2集団についています。(3600Mは9分45秒)
 先頭がドゥングさんからマイナさんに変わりました。2人の外国人選手が順に前をひっぱるというのは、高岡さんにとってはいいレース展開のようでした。前を離れない、後ろを寄せ付けない。山口さんが前をうかがいますが、高岡さんは(日本人)トップを維持して、とにかく勝つという姿勢が伝わってきました。そして岩佐さん、瀬戸さん。瀬戸さんが、終始、集団の再後方だったのが、気になりました。第2集団は、入船、佐藤、野田、徳本、小畑。1度は前に出た野田さんが下がり、入船さん、佐藤さんが前へ。佐藤さんの粘りを感じました。この1周は68秒。
 残り1000で、意図的かどうかわかりませんが、ずっと先頭をひっぱってきたドゥングさん、マイナさんが下がり、岩佐さんが高岡さんの前に出ました。ここでレースが大きく動いています。残り2周半をどう走るのか、どういう展開になるのか、先頭集団も第2集団も選手が激しく動いています。
 残り2周で高岡スパート、続いてマイナ、山口、岩佐、ドゥング、瀬戸。岩佐さんは一度、前に出ましたが、高岡さん、山口さんが再び前にいきました。このまま高岡さんが逃げ切るかと思いましたが、残り200でマイナさんがスパート。高岡さんが必死で追って、フィニッシュ。外国人選手はオープン参加なので、選手権1位は高岡さんになります。
 第2集団は、佐藤、徳本、小畑、入船、野田。野田さんが最後で遅れてしまったのが残念でした。

日本陸上競技選手権大会 ’02 6月7〜9日

(石川県西部緑地公園陸上競技場)

(ラップタイムは放送または目視したもののメモをもとにしているので、正確でないと思います。)


 もともと33名のエントリーで、今日以前に欠場がわかっていたのが、マイナ(トヨタ)、池谷(ホンダ)、日向(自衛隊)、林(中電工)の4選手。当日プログラムのスタートエントリーにあってお名前のないDNSが西川(YKK)、油谷(中国電力)、内冨(中国電力)の3選手で、結果として26名の出走でした。このうち昨日の1万も走ってられるのが、佐藤敦之(中国電力)、瀬戸(カネボウ)、石毛(ヤクルト)、家谷(山特)、マイナ(アラコ)、岩佐(大塚製薬)です。あと1500を走っているのが徳本(日清)です。
 レースは、1万を回避した高岡(カネボウ)中心ということは、誰もが予想することだと思います。わたしは、高岡さん、徳本さんという予想をたてました。(「独り言」コーナーに書きました。)
 今年から変わって、外国籍の選手はオープン参加となりました。(こういう書き方はあまり好きではないですが)いわゆる「日本人1位」が、「1着」になります。

エントリー

レース経過メモ
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日本選手権観戦周辺記
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花子のノートtop
観戦を終えて
 プログラムは男子100の決勝のあと。100Mは大阪GPのときもそうでしたが、かなり盛り上ります。やはりみんな知っている朝原選手が走られるからでしょう。朝原選手は期待どおり予選トップ、決勝も10秒05で優勝でした。(ところで、わたしは大阪GPのときに気づいたのですが、陸上は「優勝、2位、、、」というのでなく「1等、2等、、、、」なんですね。結果のアナウンスのときに、そう言っていて「へぇ〜」と思ってました。
 朝原選手が走り終えて、インタビューやらウィニングランやらをしているところでした。

*「1等、2等」はフィールド競技で、トラックは「1着、2着」と表現すると、その後、教えていただきました。