1999年9月19日(日)
指揮:アンドレイ・チスチャコフ
演出:ヴァシーリエフ、一幕二場はイヴァノフ版を一部使用
台本:A.アガミロフ、V.ヴァシーリエフ
今回は以前との版の違いもだいぶわかった。
演出について結論をいうと、まったく感心できない。
1幕1場は、なんでこんなに子どもがたくさんでてくる必然性があるのかわからないが、それでもそれなりに続きを期待させる展開。終わりの方の全員の踊り(ポロネーズ)では早目のテンポでアメリカのミュージカルをおもわせるが、新しい試みとして肯定的に見られた。
1幕2場はイワノフ版を基調としているが、重要な部分を省略している。叙情的な「オデットのヴァリアシオン」はカット、「白鳥たちとオデッタのコーダ」は白鳥たちの踊りのみで、後半のオデッタ一人のところ(これも見所なのに)はなし。上演時間を短くしたいとしか思えない。「オデッタ−オディーリヤ」役そのものもない設定。いい音楽、振り付け、舞踊家があるのにもったいない。
2幕1場、各国の花嫁候補の踊りのあと、突然顔をベールで隠しながら登場するのが白鳥=姫。それを王が悪魔に化けてさらっていく。アントニチェヴァは疲れていたのか、32回転が最後までもたないのでは、と思われる崩れ方。軸はずれるし、テンポも遅れる。ナポリの王女、ヤツェンコはさるが堂々たる踊り。
2幕2場。王子が白鳥=姫を救出にやってくるが、悪魔が王なので王子はなやみ、王も息子の恋人をとるのに負い目があるからかなやむ。みていて気持ち悪くなる。
結局、台本に問題がある。チャイコフスキーがきれいな音楽をこの曲のためにたくさんつくっているのに、どうしてそれを無視するのか。演出家としてのヴァシーリエフの才能を疑う。ほかにないのでは、と思わせる高い水準のコールドバレエも、これでは宝の持ち腐れ。また、王の役のツィスカリッゼ。バレエがうますぎて、王子を食ってしまっていた。あれではオデッタは王になびいてしまってもおかしくない。配役も考えて欲しい。
今回よかったのは王子の友達として出演したイワタ・モリヒロ。以前の版での道化にあたる役どころで、要求される難しい表現力も持ち、ジャンプもフィリンに負けていないし、実力で役をもらったのがよくわかった。
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