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<行動科学の目で見る>
戦略経営組織論
 ビジネスマンの組織環境

『社員の評価養成』

《評価システムを自己啓発に利用-U》

続《評価技術の問題点》
 どのような評価を行うにしても、主要な問題とは、その成否は評価者の手腕にかかっております。
 仮に、評価を行う管理者あるいは、評価認定者グループが、評価訓練システムや職能別適性テストを用いたとしても、評価する技術レベルが低ければ、無意味に近いものになります。

 以下の小項目は、評価を行う際に生ずる重要な問題の一部になります。
【暈(かさ)効果】
 これは一つの特徴を過大評価して、全体評価を誤ることから生まれます。
 例えば、ある社員は常に時間を厳守して、欠勤もしない、という行動が上司に好印象を与えます。このとき上司は、業績効果が評価にも価しない社員かも知れないのに、彼のあらゆる特徴について、高い評価を下す場合などが生じます。

【中央変更】
 評価担当者の中には、部下の全員を皆同じように評価して仕舞う例があります。
 とくに優れたものもいなければ、とくに悪いものもいないというような具合です。。つまり、どの評価も中央近辺にマークが集中する傾向がみられます。

【最近の活動重視】
 監督者は評価をする際において、過去の活動を忘れ、ごく最近の行動をもとに評価する傾向があります。
 これは真の評価を歪めます。部下は評価時期が近いことを知ると、往々にして、子供のクリスマスや、祭前などのような最善の行動をとる傾向がつよく出ます。

【個人的な偏見】
 人間には、自分に似た人には好意を持つが、自分と異質の人には敵意を持つ傾向の人は多くいます。人物の評価測定には、そのような人間の特質である偏見が容易に出て仕舞います。
 例えば、同郷出身者の管理者が同じ部内にいるその同郷出身者を高く評価したりします。この様な偏見が、管理者の行う評価測定に反映されているかどうかを知るには、管理者を注意深く監視する必要があります。

『より複雑な評価法』
【フィールド審査】
 この方法では、特別の訓練を受けた人事部員が各評価担当者の所にいって、一連の質問をする事から始まります。
 先ず、質問にたいするその解答を記録したあと、その記録をもとに分析を行います。この利点は、書いて貰う調査表より口頭による面接が主となるので、より多くの情報を引き出すことができますから、文書にしたがらない問題がしばしば明るみに出ることがあります。

 また、人事部の専門家は、数多くの面接調査を行ったとしても、一定の基準を保つことが出来ますから、通常の評価の過程に良く入り込んでくる誇張や偏見問題を、ふせぐことが出来ます。けれどもこの様な方法は、時間や費用の負担が大きくなります。ですから実際に使えるのは、要職にある人、昇進が検討されている人、管理者養成計画への参加者などに限られることになります。

【心理学的評価】
 一部の企業では、直接の上司が仕事上の要因だけを対象にした能力評価などを行うのに加えて、産業心理コンサルタントが従業員の評価を行います。その結果として、従業員の知的、情緒的、動機的特徴を明らかにしております。
 心理学者あるいはコンサルタントの方々は、この調査研究をもとにしてその要因を分析、特定の状況下において行われると思われる行動を予想しています。

 この様な評価は、昇進や転属移動についての意志決定を下す場合に役立つかも知れません。これは被評価人の精通した状況‥‥と異なる状況下において働く場合に、予想できる行為や態度について情報が得られるためです。

【評価センター】
 一部の大企業は、従業員を二日ないし三日間、専門の人材評価センターへ同行して、綿密な観察、面接調査、試験、カウンセリング、等を行い、非常に手の込んだ能力の評価システムを開発しているケースがあります。

 この評価作業は、経営専門家と心理学者からなるグループによって、色々な資料に基づいた評価測定が行われます。
 例えば、履歴書、管理者代表による面接調査書、一連の実地試験による成績表、課題分析の心理テスト結果、同僚による相互評価表、評価期間中に受けた個人印象など、全てが最終評価の一部を形成することになります。

 この判断を下すためには、ケース・スタディー、ロール・ブレーイング、ビジネス・ゲーム、インバスケット・パフォーマンス、リーダーのいない、グループ・ディスカッション、等のテクニックや、実地訓練の評価が含まれます。

 これらのテクニックについては、この稿とは別に、『技能開発技法』の中で詳細を明らかにしています。
 なお、そのような教育ゲームが、ことに企業環境に厳密に合わせて作られている場合、将来の管理職を決定する上では、かなりの予知能力があることは、既に証明済みです。

 一方、センターでの評価が終了すると、参加者が集まってカウンセリング・ミーティングが開かれます。ですから、評価研修後の現場復帰のときには、参加者の一人一人に、会社と共にある自分の将来と、評価センターから得たデータを、自己啓発にどのように生かすか、話す機会を与える必要がでてきます。 つづく