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戦略経営組織論
 ビジネスマンの組織環境

《評価システムを自己啓発に利用-V》

 元々、評価プログラムと呼ばれていた初期の人事考課においては、昇給や昇進だけを決定したり、現職にとどめておくかどうかを決める場合に、人事考課を利用していました。
 そのため、大抵の会社では人事考課を秘密扱いにしました。

 現在のやり方では、従業員が会社と共に成長するのを、助ける手段として、人事評価について従業員と話し合うことが慣例となっています。

 この仕事は必ず直接の上司が担当します。ところが、この種の情報をどのように部下に伝えたら良いかわからない管理者が多くおります。しかも、その性質上、これは極めてデリケートな問題になります。そのため管理者は、部下に怨みを買うことのないように、彼らの評価を伝える最善の方法を、身につける訓練を受る必要がでてきます。

 ノーマン・メイヤァーによる評価を本人に伝える三つの方法は、
一つ【強制法】によると
この方法の目的は、従業員の評価をできるだけ正確に本人に伝えることです。
 管理者は部がどの程度の成績を挙げているかを教えて、その評価を認めさせます。そして、最後に業績改善を目的とした計画に従わせるものでなければなりません。

 これを効果的に行うには、管理者にかなりの技量が必要になります。管理者は従業員を説得して、人事評価において示唆された通りに、変えさせなければなりませんが、この様な評価は、部下の抵抗に合うことはもとより、反感さえ買ったりします。

仮に、部下が、反感を抱いていないように装えば、管理者はそれに気がつかないで、評価は受け入れられ、守られているものと思いこむことになります。

 ですから、管理者は、部下のいろいろな動機付けを理解し、評価と、それらの動機づけを結びづけることが、出来なければならないでしょう。
良い仕事には報奨を出し、悪い仕事や好ましくない態度を改めないことに対しては、罰を加えることを知らせるなどして、外的手段によって、職務上の改善をはかることもありますが、こうした場合、態度の変化は、心からそれを受け入れたのではなく、むしろ改めることから得られる、褒賞のためか、さもなければ、態度を改めないときに受ける処罰を、免れるため受け入れられる場合が多いのです。

 これは「強制法」の効果を不十分なものにしています。部下は、面接の場から抜け出したいがため、評価を受け入れたり、あるいは口先だけでそうすることが多くあります。裏を返せば、終わって仕舞えばそれまでだという気持ちのときです。

 しかし「強制法」は、現在の職務に経験がなく不安定で、権威ある人物の応援を求めているような部下に対しては、それを最大限に活用することが出来ます。

権威主義的なリーダーシップを望む人達に対しては、それを最大限に活用することが出来ると考えられます。これは、ある条件下においては有効になりますが、「イェス・マン」や、更にひどくなると、無知な人間を好むときに、この傾向がみられます。また、「ボトムアップ」の機会は皆無に等しい時ですから、管理者には、どのくらい評価が受け入れられて、その結果、どんな問題が生じたかを実際に知ることは出来なくなります。

 二つ目【応答法】
 強制法の問題を、ある程度克服できる方法が応答法になります。
 この方法では、評価を従業員に伝えてからそれに反応させます。面接の一部では、管理者がみたままに、長所短所を部下に伝え、第二部では、その評価に対する部下の気持ちを徹底的に調べるやり方をとります。

 この方法を成功させるためには、ある種の技術を身につける必要があります。
それは積極的な聴取‥‥話を受け入れて、部下の信条と考え方をありのままに理解しようとする事‥‥であって、沈黙の活用‥‥相手が話すのをじっと我慢して待ちながら、こちらからは、言葉を口にしないように、することが出来なければなりません‥‥になります。反射感情‥‥理解を示すために、相手の感情に反応しなければならないでしょう‥‥であって、総括感情‥‥進歩を示唆したり、理解を示したり、するなどして時には、ある欠点を協調します‥‥であるのです。

 この様な面接であるときは、反感や怨みを買うことは極めて少なくてすみます。
評価の対象になる部下にも、上司の圧力を受けることがありません。ですから、かくすことなく、おおっぴらに自分の考えを述べることができます。それは、部下は自分の考えが受け入れられ、重要視されたような気分になるからです。

 その場合、彼は自分自身の問題を解決し、上司と部下の間の誤解を解き、面接から学ぶことに熱中するようになります。否定的な面では、部下が面接評価をリードしすぎると、上司の評価から得るところは何もなくなります。
この方法はまた、たんに生産性の向上をはかることだけではありません。自分に似た部下を作りたいという欲望を出すことを、管理者に奨励しかねないことになります。 つづく