企画書の書き方
  Renewal 2016/12/10
企 画書の書き方U
 項 目
     要 旨
○ 企画者・プロジェクトメンバーの書き方 組織系統や連絡先を明記する企画の全体像がいっ そう明白に
○企画の依頼内容の書き方 企画の立案と実施に錯誤はつきものどんな内容を 記入すべきか
○「はじ めに」に書くべきこと 「はじめに」に書くべきこと企画書のなかで最初に読まれるページ
○ 要約版の書き方 要約版は頭の整理最近では短い企画書にも要約版
○ 全体像把握の書き方 環境分析から結論までを一目で全体像が分かれば理解は深まる
○ 企画の前提の書き方 兵站(補給)を考えて企画をたてる企画の環境と同じところに表記

企 画者・プロジェクトメンバーの書き方


関係者のリストアップはエチケットとしての表記のように形式的なものではありません。リストは組織系統や連絡方 法な どを示す重要な資料です。
  • 連絡先や組織系統を明記する
    企画書に企画者やプロジェクト・メンバーをリストアップをしたりすると、映画やテレビの俳優さんやスタッフのリスト アップをイメージします。そして「協力してくれたり、苦労した人の名前を儀礼的にのせるのか」などとも考えます。確 かに、そうした意味もあります。けれどもそれだけではありません。その積極的な意味には、
  • @ プロジェクト・メンバー各自の連絡先を載せることで、企画書が住所録や電話帳の機能を役立てることができ る。

  • A 企画者やプロジェクト・メンバーの経歴や肩書きを紹介することで、ある種の権威づけをする。

    B スタッフの役割分担と組織系統を明示することにより、今後の企画運営の基礎資料とする。
     などが考えられます。@に関しては説明の必要はないでしょう。Aは、たとえばスタッフが○○大学の教授である とか、こんな著書があるとか、あるいはこれまでの仕事内容は何かなどを記入することで、企画書への信頼感をます ことが大いに役立てます。
     また、社外の人が企画した企画書である場合、きわめて有能で著名な人物がスタッフに加わっていること(加わる であろうこと)を企画に明示しておきますと、見積金額がよりスムーズに通りやすいという副産物が生ずることもあ ります。
    もちろん社内のスタッフがまとめ、実施する企画の場合でも同じで、予算案の稟議書が通りやすくなります。ですか ら、こうしたメリットを見逃す手はありません。

  • 企画の全体像がいっそう明白に
     最後のBですが、その企画に携わるメンバーの役割分担と指揮・命令系統を明示することは、作業の内容と流れをを明 らかにすることとほぼ同じですから、企画書の読み手もそしてスタッフ自身も、企画書の全体像がいっそう把握しやすく なるという得難い意味が生まれます。
     この役割分担と組織系統は、出来るなら図解して掲載した方がよいことは、いうまでもないでしょう。しかし、最近で は、デジカメの普及によって、メンバーの画像挿入が容易になりました。やりすぎというよりはプロジェクトの性質か ら、今後は危機管理上必要になってくるかもしれません。
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    企画の依頼 内容の書き方

    錯誤の危険性を無くするために、万一の際の”保険”とする依頼内容を示しましょう。
  • 企画の立案と実施に錯誤はつきものです。  クライアント、あるいは上司から、皆さんに企画立案を依頼(命令)したということは、その依頼者は何をどうやるか、まだ明確に把握していないことを意味 します。もし、それを把握しているのなら、企画案というより実施計画案の作成が依頼されるのが当然です。
  •  そこで、皆さんが作成した企画書を、読んだ後、あるいは、企画書に沿って企画の実施がスタートした後、つま り、企画のイメージがクリアされた段階で、依頼者の考えが変わり、依頼の内容を変更したりする例は、実際には、 頻繁に起こります。

  • 「最初にああおっしゃったじゃありませんか」「いや、それは君の意味の取り違えだ」と水掛け論のやりとりした りすると、議論に勝ってもビジネスに負けてしまいますから、結局は、企画者が泣き寝入りする例が実に多いので す。

     それから、企画実施といいますと、決められた時間内に沢山の作業を、処理しなければならないケースが多いの です。ですから、その忙しさにまぎれて、「変更点を伝えた」「いや聞いていない」

     という、企画者が負けるにきまっている水掛け論をやりとりすることもしばしば発生します。

     それで、その様な場合の”保険”として、明白な証拠を残しておきます。これはクライアントや上司からの依頼 (命令)を企画書に掲載したうえで、企画書検討のさいに再確認をすることですから、企画者のミス防止をする最大 の根拠になります。

     それは、そうしたネガティブな理由だけではありません。依頼事項の再確認は関係者一同のコンセンサスの強化 にもつながります。

     元々、我が国では企画書に「企画の依頼内容」を記入する習慣が少なかったようですが、技術革新の結果、専門 業の細分化が激しい今日では、将来のためにもこれは是非書いておくべきではないかと考えます。

  • どんな内容を記入すべきか
    (1) 依頼の概要
    (2) 企画の目標
    (3) スケジュール
    (4) 予算案
    (5) 作業の範囲
     などで、これらは、文書ではなく口頭で依頼される場合が多いため、依頼者に確認をとりながらまとめた方が確実にな ります。
    ***企画の実施過程には錯誤が多く生じます。また、途中で依頼者の気が変わることもあります。その結果生じるごた ごたから身を守るためにも、企画書には依頼(命令)内容を明記し、確認をつねに肝に銘ずることにします。
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    「はじめ に」の書 き方

    企画書の冒頭の「はじめに」は挨拶文、しかし、この挨拶文が第一印象を形成する。
  • 「はじめに」に書くべきこと
     格調のある企画書の冒頭にはだいたい「はじめに」と題されたページがついています。一般にここで語られているの は、
  • (1) 挨拶の言葉
    (2)(外部の企画者である場合は)企画依頼に対する感謝の言葉
    (3) 企画担当者の決意の言葉
    (4)「よろしくご検討下さい」という結びの挨拶
    というところあたりになります。

  •  ようするに、本題とは関係の薄い挨拶のためのページです。このような見方によっては、つまらないものの書き 方を教わっても仕方がない。と、思われるかも知れません。しかし、「はじめに」は単純に考えられない大事な項目 になります。その理由には、企画の「第一印象」がこの「はじめに」という挨拶文によって、形成されることが大い にあるからです。

  • 最初に読まれるページ
     「文は人なり」と、いう言葉があります。これは、文章から、その書き手の人柄や、教養・人格などが直接的に感じ取 られるという意味です。
     その上に「はじめに」の項目は、企画書のなかで読み手が最初に目的意識を持って読むページになります。文章で言え ば書き出しとか切り口に相当します。この部分は、プロの文章家が最も気を配るとされます。
     たとえば、新聞のコラムは、読み手が最初の2〜3行で読むか読まないかを決めるといいます。出だしの2〜3行で読 者ぐんとひきつければ、あとは短い文章ですから、一気呵成に読んでくれることになります。
  • そのコラムの書き出しに相当する「はじめに」誤字や脱字、あるいは文法の誤り、不適切な敬語の使用、冗漫で的 を得ない文章表現があったとしたらどうでしょう。
    「なんだこれは、日本語も満足に書けてないのか」
    と、マイナス面の第一印象を持たれてしまいます。もし、その後に展開されている企画内容がずば抜けているならそ うした心配も少ないでしょう。しかし、同じ様なレベルの優劣の判じがたい企画書が競合しているようなときには、 明らかにマイナスです。
     ですから企画のプロはマイナスを招かないために、「はじめに」の文章にかなりの神経を使うことになります。


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    要約版の 書き方

    最近は、長い企画書だけでなく、短い企画書の場合も要約版をつけることが多い。
  • 要約版は頭の整理
     モーパッサンか、あるいはフローベルか、フランス文学が華麗に花開いた頃の彼の国の文豪の比喩です。
     この文豪氏、熱烈なフアンから最新作を激賞されて、
    「たったこれだけの素っ気ない素材から、こんな長くて素晴らしい小説を紡ぎだしてしまう。どうしたらこんなに長くお 書きになれるのですか?」
     この無邪気な質問に対して文豪氏、しかめっ面で答えたそうです。
    「頭が悪くて、短く書くことが出来なかったからです」しかし、文章の意味の理解度と文章の長さには相関関係がありま すから、それは彼氏の謙遜とも受け取れます。
  •  テーマが十分に咀嚼されていて、作家の頭の中にきちんと整理されていれば、もっと文章は短くてすんだはずと の主張です。そうでなかったから、いたずらに長くなってしまったというわけでしょう。

  •  これは、企画書の場合も同じです。テーマを咀嚼し、頭にたたき込んでおれば、簡潔に分かりやすく表現できる はずでしょう。それを目指したのが企画書の結論部分を要約する要約版です。

  • 最近では短い企画書にも要約版
     ところで、以前は要約版というと長い企画書のみに付されているというのが一般的でしたが、最近ではさほど長くない 企画書にも要約版をつける例が多くなってきました。
     これは、実は人間の脳の認識パターンの特徴が分かってきたからにほかなりません。つまり、言語記号学の専門家の説 によると、人間の脳は一般に、言語的認識が苦手で、逆に絵画的認識や記号的認識が得意らしいのです。
  •  言語の形で伝達された情報も、脳の中で絵画的な形や記号的な形に”翻訳”されて認識、記憶される。言葉をか えれば、テニオハつきの文章でクドクド説明されるより的確な写真や図表を見せられた方がずっと容易に物事が認識 できるのです。

  •  要約版は一枚の紙に簡潔に表現されなければ用をなしません。当然、チャートや、文章であって も箇条書きで表現されることが多くなります。これは、人間の脳の認識パターンにぴったりの表現手法だからです。

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    全 体像 把握の書き方

    企画書各項目は、読み手がトータルに把握できるよう工夫する。”バラバラ認識”は合理的でない。
  • 環境分析から結論までが一目で
     前項で説明した「要約版」は、企画書の中の結論部分を基本に要約したものです。それにたいし全体像の把握と いうのは、企画の環境に関わる情報の収集・分析から、具体的な実施計画の提案まで企画書の全体の流れを、一枚の用紙 に簡潔に表現したものです。この様式は要約版と組み合わせて使用する場合もあれば、全体像把握のページに要約版の内 容も含めて単独展開することもあります。

  • 全体像の意味を捕らえれば理解は深まる
     ここまで本ページをお読みいただいた方には、企画の(企画書の)環境――コンセプト――目的――内容――問題点 ――効果などの多様な項目がそれぞれバラバラに独立存在しているのではなく、全ての項目が密接に関連しているのを理 解していただけたと思います。
  •  つまり、環境に関わる情報を収集して、分析したためコンセプトや目的などが明らかになり、コンセプトや目的 がハッキリ定まったので内容(実施アイディア)が立案できたのです。全ての項目が弁証法的な因果関係で結ばれて います。

  •  従って当然のことですが、部分(一部の項目)だけではなく、全ての項目が把握できた方が、企画の価値はわか りやすくなります。
     以上のことを前提に全体像の把握のためのページに盛り込むべき企画の要素を列挙すると、以下のようになりま す。
    (1) 目的
    (2) 環境
    (3) 前提条件
    (4) 内容
    (5) 効果
    (6)それらの相互関連性

     なお、相互関連性を表現しなければならないのですから、表現手段としては、別図の様なフローチャートが最も 適しているといえるでしょう。

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    企 画の前提の書き方

    企画の前提とは、いわば制約条件のことです。依頼者(命令者)の課した制約を箇条書きにして並べて書き上げま しょ う。
  • 企画は経営資源の補給適性を考えてたてます
     ビジネス活動の元となる源は、人、もの、金からなっています。そのいずれも無制限に使えるのであれば、どのような 企画であっても、いずれは必ず成功するかもしれません。
     しかし、ヒトにしろ、モノ、カネにしろ、限りがあります。この企画のためならば、いくらまで投入してもよいかとい う限界といった制限が設けられます。それを無視して突っ走るとしたならば、「手術は成功したが患者は亡くなった」な どといった悲劇と似たようになりかねません。
  •  そんな馬鹿な――という声が聞こえてきそうですが、古い話にはすさまじい実例があります。二次大戦の最中の ことです。日本陸軍のおエライさんが権力をかさに、力ずくでインパール作戦を、おしすすめたある将軍の例です。
     この将軍の”企画”は、構想は実に素晴らしいものです。重慶政府(国民党政府)が降伏するように追い込めば戦 争は終わるという考えです。降伏に追い込むには、英米からの援助物資を遮断させればいい。遮断させるためには、 インド北部の援蒋ルートを壊滅させるという見事な三段論法です。
    そこで将軍は、強引にインパール作戦を発動(企画の実施)をしてしまいました。

  •  結果はインパールの悲劇といった悲惨なものです。食料は「敵から奪え」と、日本軍は食料を殆ど持たずにジャ ングルに入っていったのですが、ジャングルには何万人分もの食料があるわけではありません。その結果、餓死者の 続出で殆ど全滅状態でした。これは、兵站(補給)を甘く計算した結果です。つまり、作戦に使用できる「ヒトもモ ノもカネ」もきわめて乏しく、「充分に使える」という企画の前提を、無視したがためです。

     極端な例かもしれません。しかし、皆さんの周りを見回してみると、企業経営に結構似たような例が少なくあり ま せん。この将軍タイプの権力好きな方々が無茶できないように、企画の前提・制約は存在してお りま す。

  • 企画の環境と同じところに表記
     ヒト、モノ、カネ以外にも企画の前提・制約はあります。たとえば、いくら儲かるからといって社会規範に違反するこ とは、やっていけないなどの前提・制約になります。
     もちろん企画書には、法律違反などの始めから分かり切っている常識的なことは記載しません。クライアントや上司か ら課された前提・制約条件だけを、別記の文例のように、割り当て負担させることによって生ずる影響などを加えながら 記載を致します。表現形式は、箇条書きが適当でしょう。
     なお、前提・制約への対策は書かないのが一般的です。また、前提・制約は企画の環境と切っても切れない関係があり ますから(というより前提・制約条件自体が企画環境の一部なのです)、この両者は同じ用紙の上で処理するのがベター になります。
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