ひさびさのダート三昧、剣山林道行
       ついにやってきました。ツーリングシーズンの到来です。これまで、寒さに
     凍えつつも「温泉」や「地ビール」を求めて彷徨っていましたが、やはりモー
     ターサイクルツーリングの最大の喜びは「風を感じる」ことでしょうから、こ
     の薫風香る季節に旅立つことはライダーとして心躍らずにはいられません。
      さて、どこにいきましょうか? マップとにらめっこの日々が続きました。
     その見つめるマップは、昭文社からあたらしく出た「ツーリングマップル」で
     す。早速「近畿」と「中国・四国」を購入してプランを練ります。新しい林道
     のマーカーラインが呼んでいます。吹き出しのコメントがそそります。数ある
     候補地の中から今回は、剣山近辺のダートを走り回ることに照準を合わせまし
     た。但し、与えられた時間は1泊2日しかありません(最近の仕事のなさけな
     さ・・・) 使用するマシンはもちろんBAJAです。久しぶりの出番に、オ
     イルも交換し準備を整えます。後は天気のみ、CATVの天気図に日々、一喜
     一憂しながら出発の5月4日を迎えました。

      今回も四国へは「淡路フェリー」を使います。ただ、ゴールデンウィーク真
     っ盛りの今日、船内は家族連れでごった返しています。普段は平日に旅する私
     ですから、このような状況は久しぶりです。常日頃から日本の家族のあり方に
     ついて疑問を持つ私にとっては、またもそのことを確認してしまう45分の航
     海でした。(私は甘えた子供が嫌いです。いや、子供を甘やかす親が大嫌いな
     のです) しかし、今日は暑いくらいです。客室内のTVが「夏日の到来で5
     月下旬並の陽気」とコメントしています。こんな中、一人デッキに佇んで潮風
     に吹かれるのも悪くありません。
      大磯に接岸、その後は本四連絡道路を使い鳴門へと走り込みます。途中、鳴
     門大橋では、ファミリードライバーが予想通り路肩駐車していたので(橋上は
     駐停車禁止)私も便乗して渦潮見物をしてしまいました。船旅も良いけれど、
     こうやって海峡をまたいで島へ渡るというのも「いよいよだぞー」という思い
     が湧いてきてなかなかのものです。こうなると、早く「明石海峡大橋」を走り
     抜けてみたいものです。世紀の大橋開通まであともう少しです。
      四国に渡りR11を南下します。ここは走り慣れた道。6車線で何の楽しみ
     もありませんがガスの補給・食事には困らない道ですので、四国の深部に迫る
     ためのリエゾンとして必要な区間だと思います。当然今回もフォーミュラーシ
     ェル満タンと牛丼特盛です。四国の手強さにマシンもそして私も力をつけ備え
     ます。喧噪の徳島市内を抜けR438へ。この国道、剣山見の越まではあのR
     439(与作)との重複国道です。初めは狭いながらも2車線ありましたが、
     佐那河内村を過ぎると林道格の国道になってしまいました。これが四国ではあ
     ります。
      今回は剣山スーパー林道へのアプローチに「野間殿川内林道」をチョイスし
     ました。その取り付きまでR438走行は続きます。さて、国道(酷道?)を
     離れ林道に入ります。最初の集落内はもちろんターマックです。しかし、その
     谷口集落をぐんぐんと上っていく急勾配の道は楽しく爽快です。青い空、緑の
     盆地、そして流れる清冽な川、日本は美しい国です。旭丸峠でスーパー林道に
     ジョイントします。ここから木頭村高の瀬峡まで約70キロのダートが続きま
     す。バイクに乗り始めた頃一度走ったことがあります。もう10年も前になる
     のでしょうか。あの頃と道がどう変わったのかを感じながらアクセルを開けま
     した。さすがにスーパー林道です。すれ違うバイクの数もたいしたものです。
     こんなに多くの仲間を見たことは何年ぶりでしょうか? 夏の北海道以外でこ
     んなにもバイクが集まる箇所は少ないと思います。もちろん「スーパー」なわ
     けですから。四輪もいます、パジェロにランクルにビッグホーン。都会派四駆
     のRAV4やCR−Vはいません。私も昔エスクードに乗っていましたが、四
     輪で走るとどうしてもボディーの傷が気になってしまいおもいっきりは走れま
     せんし、たとえ走れたとしても、トレールバイクとの性能差は歴然としている
     しで四輪をダートに持ち込む機会は余りありませんでした。でも、いざという
     時のための安心感はありましたですかねー。雪や大雨や突然のダート道など、
     確かにオールラウンドに走れる魅力には溢れた車ではあると思います。しかし、
     最近の四輪オフローダーはローダウンしたり、ピカピカに磨き上げたりしてな
     んか変です。対象がハイソカーからRVに変わっただけで、車の応接室化とい
     った日本人の本質はなんにも変わっていないのだと思います。自動車評論家が、
     日本のRV車両はセダンの発展形と発言していましたがまさにその通りだと思
     います。そこには、アウトドアを楽しみ道なき道を走破するといった使い道は
     初めから考えられていないのだと思います。
      さて、剣山スーパー林道です。だいぶ前に走ったときは、開削直後でしたの
     で法面や路盤も新しくどこかぎこちのない林道でしたが、今回はそれなりの時
     間を経過したためかしっとりと落ち着いた自然な姿の林道に成長!?したという
     印象を持ちました。スーパーという割には峠を三つも越しますし、北側斜面で
     は適度な荒れも楽しめるし、70キロという長さを感じさせない楽しい道です。
     剣山トンネルを抜け、大きく山をトラバースして高の瀬峡へと向かいます。そ
     して、林道はR195にぶつかり終点です。ここからは、西熊別府なりなんな
     りの林道を走る予定だったのですが出発が遅れてしまったため、前日先に出発
     した弟との待ち合わせ場所「道の駅美良布」へ急がなければなりません。残さ
     れた時間は40分。距離は約40キロ間に合いますやらどうやら。途中で一般
     道ではあるまじきスピードを出しながらも美良布についたのは、約束の時間を
     過ぎていました。道路脇を見ると見慣れたBAJAが止まっています。私もそ
     の横に止めるとほどなく埃にまみれた弟がやってきました。高山での気温低下
     を予想して冬用ジャケットをインナーフリースのみはずして着用している彼に
     とってこの気温は半端なものではないらしく、ジャケットの下に着ているヨレ
     ヨレTシャツ一枚で衆人観衆の中を闊歩していました。実は、この「道の駅美
     良布」3月にトランザルプで訪れたときに泊まった宿「ピースフルセレネ」と
     同じ場所にあるのです。当然今回も予約を入れましたが、GW中は満員とのこ
     と、断られました。しかたなく、南国市のビジネスホテルをめざします。


剣山スーパー林道
剣山の山麓を貫く長大林道。開設当初は落ち着きのない
林道であったが、最近ではこなれてきていい味をだしてき
ている。走って損のない素晴らしい林道です。但し、四輪
に対して細心の注意が必要なのと、沿線にはGS等の設
備がありません。いくら走りやすいといってもそこは林道、
国道のようにはいかないのでご留意ください。


谷相林道
R195とR439を結ぶ峰越し林道のひとつ。急斜面に引っ
掻いたようなトレース。路面も荒れており雄大な風景と相成
って山岳林道走破の醍醐味を味わえる。特に南側斜面の
切れ落ちは壮絶で、ライディングにも細心の注意が必要。
もちろん、落ちればひとたまりもない。
      翌日も素晴らしい天気でした。当初の計画では、峰越し林道を1本だけ走っ      て高松の出て帰路につく予定でしたが、この天気ではもったいないと、峰越し      林道をもう1本走り、さらにもう一度スーパーを使って鳴門から帰るというプ      ランに変更しました。お互いが昨日走った林道について熱く語ったので、出発      前からポイントを絞っていた林道と合わせてコースを組みました。       まずは今回のツーリングのメインである「谷相林道」です。ツーリングマッ      プルに「とんでもなく切り立った崖、足下スーパー」とあります。早速アプロ      ーチ開始です。物部川を渡り山へ入り込みます。いきなり一車線の林道格の舗      装道です。しかし、ほどなく大きな谷が開けました。地図には「現代の桃源郷」      とあります。さて、この集落をはずれてから本格的にダートが始まります。路      面の荒れは予想していたほどではないにしても、足下はまさにスーパーです。      斜度は70度を越しているでしょう。そして、スパン800メートル以上はあ      りそうな崖、もちろん落ちたらひとたまりもありません。おもわずギアを一段      落として超グリップ走行をしてしまいます。今回は南面からのアプローチだっ      ため山側走ることができましたが、北面から来たら谷側を走るのかと思うと、      ゾっとしてしまいます。まぁ、実際走っているときは前方の路面に集中してい      るので、このような怖さは余り感じませんが帰宅してみて冷静考えてみると、      結構怖い思いをしているのだなということが結構あります。この林道、峰越し      林道なので峠部分が見えてきます。そこにはなんかコンクリート作りの廃墟が      ありました。使用目的や建設時期はわかりませんが不気味な感じがしました。      南面より荒れている北面を下りR439へ出ました。そして林道と変わらない      国道を走り隣の集落西峰をめざします。       さて、西峰からは「楮佐古小檜曽林道」で再びR195へと向かいます。こ      の林道、弟が昨日R195側から走っています。その北側斜面の荒れ具合に感      激して、今日はその北側斜面からアプローチすることになりました。集落を抜      けるとダートが始まります。始めはフラットな路面が続きます。すると現れる      分岐道。轍は明らかに左手に向いています。路面状態の差も歴然としています。      しかし、ここのオンロードは迷わず右なのです。さぁ、これからがお楽しみ、      ガレガレルートの始まりです。河原の方がましな路面が続きます。フロントタ      イヤは30センチの幅の中で、リアタイヤは60センチの中で暴れまくってい      ます。いくらアクセルを絞ってもエンジンパワーは路面に伝わりません。時折、      大きな石にヒットし車体が大きく振られます。リアに積んだバッグが大きくの      しかかってきます。こんな状況が約5キロあまり続いたでしょうか。二人のマ      シンは高原状の落ち着いた峠にたどり着いていました。しかし、不思議なもの      です。このようなガレた道は厳しいけれど走るのをイヤになることはありませ      ん。むしろ「天竜スーパー林道」や北海道の林道など「ただの未舗装路」して      いる道の方が緊張感がなくて飽きてしまいます。その点、いいですね。ガレた      林道は! 五感の全てを使って走っているという実感が伴います。昔はフラッ      トなダートの方が好きでしたが、今ではこの有様です。南側斜面は穏やかな道      が続きます。R195からR439へのショートカットとして使おうとしてい      る四輪何台かに、北面の状況を説明したりしているうちに物部村大栃の集落に      到着しました。       物部村、ここには、全国で初めて自治体(村)が作ったライダーのための宿      泊施設「ライダーズ・イン・ものべ」があります。公共の宿ファンの私として      は少し楽しみにしていたのですが、正直言って少しがっかりしました。実際に      利用したわけでもないので詳細を書くことはできませんが、もう少し立派に作      っていただいても良かったのではないでしょうか。ライダーはよっぽど貧乏と      思われているのでしょうか。それでも、このような物が設立されたことは素晴      らしいと思います。ライダーのサンクチュアリとして物部村周辺を育てていけ      ば、新しい旅の文化として「林道ツーリング」がまた新たに認められるのでは      ないでしょうか。昔のように、モトクロスまがいの2ストドッピュン軍団は減      りました。大多数が4ストトレール車に跨ったツーリストです。マナーも向上      したように思います。世間に認めてもらう努力をしていくことも大切なことだ      と思います。       再びR195を走り四ツ足峠を越して、剣山スーパー林道を走ります。同じ      林道でも逆走すると印象が違うものです。まして、今回は前を行く弟が豪快に      流して走るので(後で聞いたところによると、「流していた」のではなくて、      リアタイヤの磨耗により「流れていた」ということらしい)、私も結構飛ばし      ました。しかし、昨日走ったばかりというのに退屈しない林道です。最高所1      500m程、平均して800〜900mの初夏の山は実にさわやかです。下界      は真夏日だったと後で知りましたが、林道を走っている時は「夏の北海道」の      ような爽快な空気と高い青空を満喫していました。R438へは昨日と違って、      悲願寺を経由して降りる林道を使います。この林道もなかなか四国していまし      た。斜度がゆうに20%はあると思われる急坂が続きます。さすがに四輪のこ      とを考えてか一部コンクリート舗装を施してあるくらいです。しかし、今回走      った他の林道のように広葉樹林を駆け抜けるわけではなく、本州的な杉林の中      を走るのもしっとりと落ち着いていて好い感じでした。林道を出てR438、      そして往路を逆にたどり帰路につきました。       昨年は中部北陸方面のダートを主に走っていましたが、今年は四国です。な      んといっても、そのアプローチのイージーさ、そして山の深さでしょう。今回      も総走行距離500キロのうちダートを200キロ弱走っています。たった1      0キロダートを走るために延々150キロ以上も舗装路を走らなくてはいけな      い地域も多い中この事実は特筆ものだと思います。BAJAとともに楽しむ予      定です。       ・データ         1997.5.4-5.5  BAJA 約500キロ
  
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