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症例20=成人矯正(MTM)症例(抜歯症例)

 日本人の歯を失う原因の約半分はむし歯で、約半分は歯周病です。

 歯周病の原因は口の中の常在菌に食べカスというエサを与えて細菌数を増やすことが原因です。プラーク・コントロールという言葉がありますが、お口の中を清潔にして、細菌を増やさないようにすることが大事なのです。高齢者の誤嚥性肺炎もお口の中をキレイにしておくと発症する確率が減りますよ。

 さて、お口の中をキレイにするためには歯磨き(ブラッシング)が重要ですが、歯並びが悪いと(=ガタガタだと)歯ブラシを全部の歯に当てるのは非常に難しくなります。歯並びという悪条件を解決することにより、歯周病のリスクを減らすことが可能です。この症例では、そういったことを目指して治療計画をたてて治療しております。

 一般論ですが、成人においては成長がありませんから、叢生などの改善のためには抜歯をすることが多いです。(非抜歯で対応する場合もあります。)なるべく少ない歯ですむように考えて治療しますが、無理な時は抜歯をお願いします。

 上でも述べましたが、成人症例では歯周病に罹患している事が多いため、治療には細心の注意が必要になります。

 この患者さんは、初診時年齢57歳2ヶ月の女性でした。半分諦めているような感じでしたが、治ったら、元気いっぱいになってます。歯並びが良くなると顔が明るくなります。

☆治療開始時(初診時)2020年11月9日

 前歯部叢生+上顎左側犬歯の低位唇側転位(八重歯ちゃん)。

 下顎右側第二小臼歯は抜歯済み、下顎右側中切歯は歯根露出がひどい状態です。歯周病の程度としては中程度~重度、歯磨きは悪く、舌癖も有り。上顎右側中切歯と側切歯の間に下顎右側側切歯がカミ根でロックされていることにも注目してください。

 

 

 

(治療計画)

①まず、歯磨き指導。

②下顎右側中切歯と、上顎左側側切歯の抜歯。ただし、上顎の側切歯は下顎右側第二小臼歯部に移植する。

③マルチブラケット法で、歯列を整える。

④リテーナーを用いて保定観察。

2022年5月28日にブラケットを撤去し、上顎右側第一大臼歯の補綴を一般歯科医にお願いした後の写真が以下です。

 

 前歯部叢生は改善され、全部の歯が噛めるようになってます。歯のデコボコが無くなっておりますので、歯磨きもしやすい形になってます。

 歯牙移植した下顎右側第二小臼歯の位置にある上顎の側切歯は、正常に機能しております。(歯根吸収を認めません。)

  上のレントゲン写真が治療前、下のレントゲン写真が治療後です。

 歯槽骨(歯のはえている骨)というものは、歯が無くなるとどんどん痩せてゆきます。抜けたままにしておくと噛む時の力がかかりませんので、どんどん痩せてゆきます。(人間の身体は使わないとダメになる。)=廃用退縮という医学用語があります。

(治療費について)

 当院では、このような症例では、MTMの特別料金で治療しております。この患者さんでは技術料とブラケット代で、税込み22万円。これに月々の調節料(税込み5500円)が18回かかってます。月に1回の通院ですから1年半で治ったことになります。

 

※健康保険では、歯周病治療のための歯科矯正治療は認められておりませんが、大学の授業では歯周病治療法のひとつとして講義があります。できれば、もっと早い時期に、歯並びを治して歯磨きしやすい状態に持ってゆけば、歯が残る確率が上がると思うのですが。

 顔貌の変化です。上が治療前、下が治療後。上下前歯を後ろに下げてますので、口唇が少し後退して引き締まった感じに変化しています。舌突出癖もありましたが、トレーニングをしてあります。

※治療の詳細については、MTM症例2のページもご参照くだし。

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