当院の治療方針(その4)第1期治療について
歯科矯正治療には、永久歯列が完成してからの治療(=第2期治療、中学生以降)と、それ以前の成長期に行う第1期治療のふたつの段階があります。
第1期治療と第2期治療の違いは何かというと、前者(第1期治療)は子どもから大人に変化してゆく成長期であることです。後者(第2期治療)では、成長がないので、歯を抜いたりして、骨格の異常を歯の位置を変えることで代償的に直そうと言うことになります。外科手術併用の場合は骨格的な問題から治せますが。
第1期治療では何を目指すかというと、いろいろありますが、以下にまとめておきます。
1)むし歯を作らない。
むし歯の穴があいてない永久歯列をつくるのが一番です。これは、歯科矯正治療やらなくても大切なことです。
むし歯とは歯が溶けて無くなってゆく病気です。「穴が空いたら削って詰めもの入れて治せば良い。」というのは、昔の歯医者の考え方です。詰めものを入れると、むし歯でない歯の部分と詰めものの境目から、必ず新しいむし歯ができます。(二次カリエスと言います。) 二次カリエスを繰り替えす度にむし歯の穴はどんどん大きくなってゆきます。
ですから、むし歯を作らない!のが一番。つまり、予防するのが大切なのです。
2)歯ならびを悪くする悪習癖を取り除く。
口の中の悪い習癖としては、舌突出癖や口唇を噛む癖などがあります。このほかに、口呼吸など耳鼻科に関連するものがあります。寝る時の姿勢、普段の姿勢(猫背)などの影響もありますので、気がつけば、注意します。
当院でできる事については、指導、トレーニングをします。
当院でできない事(耳鼻科疾患など)については、耳鼻科の専門医に紹介状をお書きします。
舌小帯が短ければ、処置してもらえるように紹介状を書き、処置後は当院でトレーニングします。
3)骨格的な異常はできる限り修正する。
反対咬合、上顎前突、顎偏位など骨の位置関係が悪いものについては、できる限り修正するように治療します。上顎前突で口が閉じられないなら、口が閉じられるように治療します。
かみ合わせに起因する顎偏位症例は早めに治さないと、永久歯列では修正不可能です。(外科症例になる可能性があります)
4)なるべく非抜歯で治せるようにしておく。
永久歯列になってから来られた場合、叢生症例などでは小臼歯を4本抜いて、ブラケットを付けるしかない事が多いですが、成長期に来て頂くと非抜歯で治せるようになる可能性が高くなります。全部が全部そうではありません。例外もあることをご承知おきください。
5)その後に続く、第2期治療が楽になるように準備する。
たとえば、最近のアゴの小さな子どもさんでは、口が狭すぎて舌が動く場所がないから、噛まない(噛めない)、ちゃんと飲み込めない(下手なゴックンをする)場合が多いです。こういった症例は、大人になってから治すのは非常に難しいのです。 身体に順応性がある子どものうちに手を付けて、正しい方向に育ててゆかないとうまくゆきません。
わかりやすいのは滑舌です。正しくタ行を発音するためには、ある程度の舌の力が必要です。日本語は子音が緩くても通じますが、外国語(英語、スペイン語、中国語、その他なんでも)では通じません。
☆症例 (初診時)
前歯部叢生、少し上顎前歯が前に出ている。、歯列は狭く、下顎の歯列に舌が入らないので、舌が真っ直ぐではありません(よじれている)。下顎の臼歯部が舌側に倒れ自浄性が悪い(食べカスが溜まりやすい)ので、むし歯になってます。これを見てその異常さに気づいてください。。
第2期治療終了後
非抜歯で終わらせることができました。いや、非抜歯で終わらせないと、舌はこんなにゆったりとした状態にはならなかったでしょう。むし歯の治療痕から、上の写真と同一人物だとわかるでしょう。
まとめ
むし歯にならないように歯を守ったり、抜歯症例にならないように面倒を見たり、悪習癖を治した後も戻らないように管理したり、第1期治療をキッチリやると時間、治療期間が長くかかります。子どもが1日で大人になるのなら、苦労はしません。年月をかけて成長してゆくわけですから、その年代に合わせた治療方法や守り方があるわけです。歯みがき指導でも、歯のはえ具合で変わります。
申し訳ございませんが、気長にお付き合い頂くしかありません。