三線 めでたい節

(三線をクリックしてみてください。メロディが聞こえてくるかも……)
前回「祝節」を紹介したので、ついでに「めでたい節」も紹介いたします。

今日ぬ誇らしゃや なうにじゃなたてぃる
蕾でぃ居る花の サンサ 露ちゃたぐとぅ
めでたい めでたい
スリスリ めでたい めでたいめでたい

嘉例吉の遊び 打ちはりてぃからや
夜の明けてぃ 太陽の サンサ 上がるまでぃん
めでたい めでたい
スリスリ めでたい めでたいめでたい

豊かなる御世ぬ しるしあらわりてぃ
雨露の恵み サンサ 時ん違ん
めでたい めでたい
スリスリ めでたい めでたいめでたい

今日のうれしさは、何にたとえられようか。
まるでつぼんでいた花が、露に出会って花ひらいたようだ。



おめでたいこの遊びで、心もうちとけたからには、
夜が明けてお日さまがのぼるまで遊びましょう。



豊年のしるしがあらわれて、
雨露の恵みも、時をたがわずもたらされる。



今まで順番にこの「今月の三線」を読んできた方なら、すぐにピンとくると思います。
そう、1番の歌詞は「かぎやで風」、2番の歌詞は「安波節」と同じなのです。
3番の歌詞も、沖縄の古典や民謡にはよく使われるものです。実際、八八八六の「琉歌」ならばなんでもあてはまるので、3番以降の歌詞は、人によってさまざま……

この唄も、八重山から伝わった唄です。
八重山で歌われている元唄「目出度節」は、沖縄本島の「めでたい節」とは少し節回しも違い、もう少しゆったりとした感じです。

今年作(くとぅしちゅく)たる稲粟(いにあわ)
実り出来たい サンサ 面白(うむしる)
めでたい めでたい

年貢上納は不足なくに
捧ぎ上ぎたい サンサ 誇らしゃや
めでたい めでたい

捧ぎ残いやあまたありて
酒やみきとぅむ サンサ 造りとぅてぃ
めでたい めでたい

意味は……もう解説しなくてもわかりますよね。
稲や粟が年貢としておさめても余るほどいっぱいできて、その残りでお酒をつくるほどの余裕があること……そんなことはめったに、いや、もしかしたらほとんどなかったのかもしれません。それだけに、八重山の農民たちにとっては、そんな情景が「めでたいこと」そのものであり、心の底からの願いだったわけです。

八重山でも、「松は千年ぬ齢(ゆわい)を保ち……」と、一般的な祝い事用の歌詞で歌われることもありますが、この唄が沖縄本島に渡って、「めでたい節」へと姿を変えると、唄のニュアンスも少し変わってきます。もっと軽い調子の、浮き立つような感じになり、実際聴いているとなんだか腰が浮いてきて、つい踊りたくなってくる……
「めでたい節」から「唐船どーい」になだれこみ、そのままカチャーシータイムに突入……なんてことも、よくあるようです。

[参考]
「ウチナーのうた」藤田正篇 音楽之友社
「わかりやすい歌三線の世界」勝連繁雄著 ゆい出版
大工哲弘「誇−八重山の祝のうた−」CDライナーノート


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