共著『拉致・国家・人権』の自己紹介

 

社会主義研究家中野徹三

 

 ()、これは、中野徹三・藤井一行共著に関する中野徹三札幌学院大学名誉教授の自己紹介文です。このHPに載せることについては、中野氏の了解をいただいてあります。

 

 (HP掲載の中野徹三論文、中野・藤井一行著書リンク)    健一MENUに戻る

   『国際刑事裁判所条約の早期批准を』拉致被害者の救済のために

   中野徹三・藤井一行編著『拉致・国家・人権、北朝鮮独裁体制を国際法廷の場へ』

 

   『古い教条とあたらしい現実との谷間で』日本共産党の綱領改定案を検討する

   『マルクス、エンゲルスの未来社会論』コミンテルン創立期戦略展望と基礎理論上の諸問題

   『理論的破産はもう蔽いえない』日本共産党のジレンマと責任

 

   『社会主義像の転回』憲法制定議会解散論理

   『「二〇世紀社会主義」の総括のために』

   『「共産主義黒書」を読む』

   『歴史観と歴史理論の再構築をめざして』「現実社会主義」の崩壊から何を学ぶか

   『現代史への一証言』「流されて蜀の国へ」(終章・私と白鳥事件)を紹介する

   『いわゆる「自由主義史観」が提起するもの』コミンテルン「32年テーゼ」批判を含む

   『遠くから来て、さらに遠くへ』石堂清倫氏の追悼論文

 

 

 さて小生,この度35年以来の友人藤井一行氏とともに、『拉致・国家・人権――北朝鮮独裁体制を国際法廷の場へ』と題する本を、大村書店から出版いたしましたので、ぜひご一読、ご高評いただきたく、ここに不束なご案内をお送りさせて頂いた次第です。

 私たちは、かねてから北朝鮮の体制とそのもとの悲惨な人権状況、北による日本人拉致疑惑に大きな関心を抱いておりましたが、昨年事の真相の一部が衝撃的な形で明かにされるなか、あらためて問題の抜本的な究明の必要を痛感し、この共同著作を企画、出版いたしました。同封させて頂いた目次は、そのだいたいの構成をお伝えしているかと存じます。私が担当した第一部は、第一章で拉致という問題を古代からナチのホロコースト、スターリンの大テロルまでの世界史に位置づけ、第二章では大戦後世界のなかでこの犯罪が「人道に対する罪」として生成し、「世界人権宣言」50周年にあたる1998年に採択されたいわゆる「ローマ条約」(国際刑事裁判所規定)にはじめて条約上の重大な国際犯罪として結晶するにいたるプロセスを解明したうえ、第三章では国境をこえた普遍的管轄権をめざすこのあたらな国際法と国際法廷のもつ21世紀的な性格と、この制度が拉致問題の真実の解決にもちうる有効性と意義について、日本政府がそれに尻込みしている事情の批判をふくめて、検討を試みました。

 国際法はもとより、およそ法学について全くの素人の私が、こういう議論を展開するのは、自分ながら忸怩たるものがありますが、これは永くスターリン主義との戦いを続けてきた私たちの、最後の、そして最悪のスターリン主義体制の不幸な犠牲者たち(北朝鮮の民衆、日本と韓国の拉致された市民)を救うために役立ちたい、という一念から、であります。この仕事の、また藤井さんの叱咤激励のおかげで、ワープロにもさわれなかったメカ音痴の私もどうやらパソコンを覚えさせられ、その縁で韓国の拉致犠牲者の家族会の李最永さんと心の友になる事が出来、朝鮮戦争中に拉致された彼のご尊父についての、感動的な、そして貴重な寄稿を頂くことができました(参考資料)。

 また、藤井氏の第2部は、レニングラード大学出身で、北朝鮮に交換留学生としてその実情を把握し、現在オーストラリア大学教授であるA・ラニコーフのユニークな仕事を軸に多くの脱北者の記録、そして1997年韓国に亡命した元最高幹部黄長ヨプ氏の所説を総合して、北の現体制とその対内的・対外的テロリズムの総体とその本質、今後の展望に正面から迫った力作です。とりわけ、金独裁体制の成立を導いた一連のすさまじい粛清過程の解明は、スターリン体制の成立との比較からも、必読、といってよいものです。資料的にも、たとえば北の「成分」といわれる人為的な身分制についても、その51の身分をすべて明かにした文献は、他に見当たりません。

 また、藤井さんのホームページでの和田春樹批判と、和田氏のホームページでのその反論を読んでこの討論に参加された二人の方の和田批判にも、極めて鋭いものがあります。この問いに、和田氏はどう答えるのでありましょうか。ご高評を切にお待ち申し上げるとともに、もしこの小品が日本の市民の皆さんに広く読まれることが問題の理解と正しい解決に有効だとお考え頂けたなら、周りのかたがたへぜひお勧め頂きたく、何とぞよろしくお願いいたします。

以上  健一MENUに戻る