「何してるの?」
「あなたはだあれ?」
岩場の青年を、鉱石のような大きな瞳で見上げながら、ふたりは交互に問いかけます。
足元を、冷たく満ちて行く波にひたしたままで。
「人に名前をたずねる時は、自分から名乗るのが礼儀ってもんだ。」
青年は煙草を消して、ほいと上に投げながら言いました。
何だか、まるで最新式のステレオ・ラジオみたいだ、とぼんやり思いながら。
空に舞った翠色の葉っぱは、さらりと夜気に溶けてゆきました。
あたりに、微かに薄荷の香りを残して。
「あたし、なみほ。」
「あたし、ほなみ。」
全くおんなじ、高くまるまった声で、女の子たちは交互に答えました。
短く流した黒い髪、寒いのに袖のない水色の服。深い海の色の瞳。
声だけでなく、何から何まで、二人の女の子はうりふたつに見えました。
「あなたは、配達夫さんでしょ?」
「……いかにも、僕は配達夫だけど。」
少し驚きながら青年は答えました。今度は水色の煙草を取り出しながら。
「よかった、あのね。」
「あのね、お願いしたいことがあるの。」
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