書名:我に策あり
小説・坂本龍馬
著者:加来 耕三
発行所:日本経済新聞社
発行年月日:1998/4/7
ページ:326頁
定価:1600円+税
土佐藩には徳川時代に藩主となった山内家(山内一豊)の家臣達、その前の藩主長曽我部家の元家臣達が郷士と呼ばれていた。その郷士出身の坂本龍馬、後藤象二郎などは山内家の士族出身。「土佐の芋ほり」といわれた脱藩浪士の風雲児・坂本龍馬、時代が人を作るのか、もともと才があったのか?敵対する薩摩・長州を結びつけた薩長同盟成し遂げた。(アイデアは勝海舟とも言われる)薩摩の西郷隆盛、長州の桂小五郎、高杉晋作、土佐の山内容堂の間を繋いだ手腕。
幕府-薩長同盟-朝廷の三すくみ状態の中、船中八策「天下の政権を朝廷に奉還せしめ、政令宜しく朝廷より出づべき事」を後藤象二郎、山内容堂を通じて献策する。このアイデアは幕臣大久保忠寛(幕府は政権を朝廷に返還し、徳川家は一大名に戻るというもの)。その後の世界を日韓中同盟をして欧米列強に備える。と言った先の先を見越したアイデア、実践の人坂本龍馬の人下的魅力を濃密に描いている。
昨今の政治をみていると統治能力を失いつつある徳川幕府の如く感じる。徳川慶喜の行動、言動など今の首相と一緒で言い訳に終始している。大政奉還をして議会制民主主義を返上した方が東日本大震災の対応は旨くいくのではないかと。ふと思ってしまった。選挙で選ばれた国会議員より、抽選で選ばれた人の方がまともなことを決めて実行できるのではないかとも思ってしまう。人がいないではなく時代は人を作る。非常の時には非常の人が出て来る。坂本龍馬の生きた時代の息吹が伝わってくる作品です。