書名:オリンピックの身代金
著者:奥田 英朗
発行所:角川書店
発行年月日:2008/11/30
ページ:524頁
定価:1800円+税
ちょっと題名が気になって手にした本です。ここでのオリンピックは東京オリンピックのこと。昭和39年7月13日~10月11日の東京が舞台。戦後の日本にとっては世界に対しても国民に対しても一大イベントの東京オリンピックを何としても成功させようとする国家、国民。それに対して東京大学経済学部の大学院生島崎国男という若きテロリストとの攻防戦を息が詰まるように書き綴っている。東京オリンピックを人質に、ダイナマイトで爆発させるという脅しで警察を翻弄させる。時は東京オリンピックのために東京中工事、突貫工事の真っ最中、脅迫の事実を何とか世間に公表しないで済ませたい警察。
公安、刑事で揃って犯人に向かっていくがが実際は対応はバラバラ、双方は憎み合いながらの犯人を追っている。そんな不手際を上手く付いて逃げる犯人。高度成長が始まった東京オリンピック当時を彷彿とさせる。大学院生島崎国男はこの東京オリンピックは「金金の世の中」「アメリカ絶対主義」「資本主義ばんだい」とこの国の移り変わりに独自の視点をもって、ごまめの歯ぎしりよろしく一人で挑んでいる。三ヶ月弱の間に東京で起きたこの一連の事件は、国家の威信によって決して表沙汰になることはなかった。まるで東京オリンピック秘話のような語り口で物語を終えている。