明和絵暦
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書名:明和絵暦
著者:山本 周五郎
発行所:新潮社
頁数:498ページ
発売日:
定価:130円 Kindle版
徳川幕府はもともと勤王で、尊皇は当たり前だった。でも幕末には尊皇攘夷は薩長の専売特許のようなアピール戦略にみんな騙されていると思う。でもこの徳川家の尊皇というのは体制としての天皇制、そして幕府という立場に大きな矛盾があって、幕府の上に天皇があることになると一番上の存在、天皇を尊重するということ。
それが歴代将軍の務めとすると、江戸時代初期から後期にわたるまで天皇家の維持費は殆ど同じで、物価上昇によって、食べるのも大変な事になっていた。また御所の修理も出来ない。そんな貧乏な天皇家、そこに注目した勤王学者達が暗躍することになる。この物語は織田信長の子孫で小幡藩という小藩の話。小藩でも徳川家康も大切にした織田家、小幡藩は親藩準ずる立場。尊王学者・山県大弐の影響をうけ、藩の進むべき道をめぐって対立を深める小幡藩の青年藩士たち。
小さな藩のお家騒動ですまずに、幕府まで騒がそうとした。体制派と反対派に分かれて争いあう。主人公の百三九馬(ももいさくま)と妹の八千緒、許嫁が敵味方に分かれることになる。剣戟あり、悲恋あり、知略うずまく歴史時代長編!山本周五郎は生涯のテーマとして“人間の真価は何を為したかではなくて、何を為そうとしたかだ”を追求していく。剣戟のシーンの描写などはなかなかわかりにくいのであるが、何回か読み返すとそれぞれの動きが判ってくる。テレビ、映画と違って小説は動的な部分は表現するのに難しい。でもそれなりに書いている。
本書より
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「一人明日を想う者なし、あれば除かれる、一人国家を憂うる士無し、あれば斬られる、学芸は林家之を壟断し、新説を述ぶれば即ち罰せらる、財篤うすれば没収され、労渇きざれば課役さる。――政府の与うるところは今日、唯ここに今日あるのみだ」