パイザの韓国旅行記

韓国旅行記 【友達と会う韓国旅行3】




01宝文山公園へ

 朝、目覚めて窓から外を眺めてみる。泊まっているヨグアン(旅館)はテジョン駅の真横にあるので眼下にその駅前広場を見ることができる。いい天気だ。屋上に上ってみたら景色がいいかも知れない。そう思って階段を上ってみると屋上へのドアは鍵がかかっておらず、外に出ることができた。

 屋上からの眺めはなかなかのものだ。正面には広大な駅前広場。横にはごちゃごちゃとした市場が広がっていた。駅裏が市場になっているのだ。ジヘさんとの約束時間まで少し時間があるので駅のコインロッカーに荷物を預けて市場をぶらついてみることにした。ヨグアンをチェックアウトして駅に向かい、まずは荷物を預ける。軽くなったところで市場へと繰り出した。

 市場は狭い路地をぬうように広がっている。ま、田舎の典型的な市場だ。冷やかしながら歩いていく。でもおじさんとおばさんばかりで、僕は少し浮いた感じだ。

 さて、ジヘさんに会う前に絵はがきを出しておかなくては。そう思って郵便局へと方向転換する。駅から大通りを左に向かって行けばそれはある。前まで来てみたが、まだ開いていなかった。でも、あと15分くらい待てば開くらしい。そうだ、ヨンミに今日ソウルに戻るって連絡しとかなくちゃ。とりあえずポケベルに連絡を入れておいた。
 郵便局が開いたところで、絵はがきを数枚出す。駅前に再び戻った頃にちょうどジヘさんとの約束時間となった。

 ジヘさんと朝食を取ったあと、午前中だけちょっとつき合ってもらい、昨日行きたくて行けなかった「ポムンサンコンウォン」(宝文山公園)に連れていってもらうことにした。ロープウェイ(韓国語ではケーブルカー)があって、山の上から市内が見渡せるらしい。僕はピークハンター(高いところが大好きな人)なので、ぜひ行ってみたいところだ。ソウルへは、お昼過ぎくらいに向かえばいいし・・・。

 駅からタクシーに乗って「ポムンサンコンウォン」(宝文山公園)に向かう。思ったより近くて、すぐに着いてしまった。タクシー乗り場のすぐ正面にロープウェイがあったのだが、すごく小型でちょっと驚いてしまった。それに距離も短いのだ。そして乗り場は遠足の子供達で埋め尽くされていた。若いお母さんに手を引かれて大勢が並んでいる。一緒に並んで待ち、何回目かに乗ることができた。

 ロープウェイを降りてしばらく坂道を上っていくと展望台が見えてきた。小型の遊園地などもあった。売店ではポンチャックが流れていた。実に韓国的な風情だ。しかしこのポンチャックの声、聞いたことがあるなぁ。たぶんイ・バクサだ。そう思ってジヘさんに聞いてみたけど、「そんな人知らない」だった。ま、そんなもんだろう。

 展望台からの眺めは最高だった。すぐ下にはサッカー場と野球場があった。プロ野球球団があるらしい。サッカー場の方はワールドカップ開催地の有力候補だそうだ。遠くにはテジョンEXPOの会場が見える。しかし、それにしてもすごい数のアパート(日本的感覚ではマンションになるかな?)だ。どんどん建設も進んでいるようで、ベッドタウン化しているようだ。以前、ソウルに通勤している人がいるという話を聞いたことがあるけど、そういうもんなんだろうか?

 しばらく眺めてからロープウェイで山を下りた。再びタクシーに乗って駅前まで戻る。ここでジヘさんとは別れることにした。いやー、いろいろお世話になりましたよ。またよろしくね。
 荷物をコインロッカーから出して切符を買う。ちょうどいい時間のセマウル号もあった。さ、ソウルへ戻ろう。












韓国・大田 宝文山公園のケーブルカー



韓国・大田 宝文山公園からの眺め

02あしやん・YUKI韓国ポピュラー音楽学会会長

 ソウル駅に着いてから地下鉄をひと駅だけ乗り、再びカンファジャンに戻ってきた。階段を上がっていくと、受付にはいつものおじさんが座っていた。

 「あのー、部屋はありますか?」(以下韓国語)

 僕がそう尋ねると、おじさんは上目遣いにじろりと僕の方をにらみ、おもむろに口を開いた。

 「君は日本人かね?」
 「ええ、そうですけど」
 「じゃ、君はこの人を知っているかね?」

 おじさんはそう言いながら名刺大の紙をこちらに渡した。それには「あしやん」と書かれていた。あしやん? 彼は確か「とっけびさん」と「ワダノリさん」と一緒にテグ(大邱)にいるんじゃなかったっけ? まぁいいや。

 「ええ、知り合いです」
 「今、部屋にいるから。行きなさい」
 「えっ? 今、部屋にいるんですか?」
 「ああ」

 もうお昼過ぎなのに何でだろうと思いながら部屋をノックすると中から聞き覚えのある声が聞こえてきた。あしやんだ。
 あしやんはTシャツにパンツというラフなスタイルでゴロゴロしていたのだ。おいおい、昼間っから何やってんだ? でもとりあえずラッキー。部屋をシェアする事にした。ひと部屋25000ウォンなのだが、一人でも二人でも値段は同じなのだ。25000ウォンと12500ウォンの差は大きい。
 ところで「あしやん」とは関西在住の日本人(だよね)で、崇禅寺にある「アジア図書館」でクラスは違うけど一緒に韓国語を勉強している仲間なのだ。よく飲みに行く。年齢は僕よりも下で、20代後半だ。顔つきがどう見ても韓国人っぽいので、最初は在日韓国人かと思っていたけど、そうではなかったようだ。背が高くてかっこいいのだが、「ベタなところ」がたまにきずだ。なんで韓国に興味を持つようになったのか聞いたことがあるんだけど、**の**が*****だったそうだ。ふーん。

 さて僕も一緒になってゴロゴロすることにする。なんであしやんがこんな時間にゴロゴロしてるかというと、夕方からのデート?に備えているからだった。デート・・・、まぁいい。とりあえずそういうことにしておこう。そうこう言いながら話をしていると、廊下の方で何か「ガタガタッ」という音が聞こえた。不思議に思ってドアを開けてみると、大きな荷物を背負った大柄の男が立っていた。YUKI韓国ポピュラー音楽学会会長だった。
 実のところ、会長に会うのは今回が初めてだった。とりあえず挨拶などをする。会長は部屋をシェアする相手を捜していた。ちょうど僕らが泊まっている部屋の向かいがMorris.さんの宿泊している部屋らしい。具合がいいのだが、Morris.さんは不在のようだった。帰ってくるまで待つしかない。会長は「メシ食ってくるから」と言い残し、荷物を僕らの部屋に置いて出ていってしまった。

 また二人してゴロゴロしていると、今度は Morris.さんが帰ってきた。Morris.さんは関西メンバーの会員で、ポンチャックに深くはまりこんでいるお方だ。イ・バクサのマブダチでもある。私より年輩の方だ。学会の重鎮と呼ばせていただこう。

 「さっき会長が来て、シェアしたいって言ってましたよー」

 それはMorris.さんにとっても、願ってもない申し出のようだった。
 それからしばらくまた「あしやん」と二人でゴロゴロしていたが、

 「そろそろ出かけなきゃ」

 あしやんがいそいそと準備を始めた。そうだ、僕も今日どうするか決めなきゃ。うまく行けば今日もヨンミと会えるだろうし、最悪でも会う約束をしている5月3日の待ち合わせ場所などを決めておかねば。とりあえずあしやんと一緒にヨグアンを出て、もう一度公衆電話からポケベルにメッセージを録音しとこっと。

 あしやんと一緒に出かけてポケベルを鳴らし、一人でヨグアンに戻って来る。再びゴロゴロとする。するとかなり時間が経ってからヨンミから電話がかかってきた。バイト中で電話が出来なかったようだ。今日はインチョンの家に帰ってしまってもう出れないらしい。ま、今日はいいか。そう思ってしばらくあーでもないこーでもないと話をしていて気がつくと夜もえらく遅くなっていた。しっ、しまった。メシを食わないと。とりあえず3日の待ち合わせだけ決めて電話を切る。部屋を出てみると、向かいの部屋ではYUKI会長、Morris.さん、それに韓国のパソコン通信大手「チョリアン」(千里眼)のシスオペの方が3人で話し込んでいた。メシはまだらしい。ラララララララッキー! 一緒にメシ食いに行こう。そのシスオペさんの案内で、チョンノ(鍾路)の裏手にある怪しいヘジャンクッ(酔いざましスープ)と韓定食の店(右写真)に連れていってもらうことにした。早速、4人で出かける。

 場所はというと、いわゆるチョンノ(鍾路)の1本北の通りを奧に入ったところだ。このあたりはどやどやした雰囲気が今も残っている。高いのか安いのか良く分からない(たぶんめちゃくちゃ安い)きたならしくて、傾きかけたような店がひしめき合っているのだ。

 その中でもひときわ狭くて、奥まっていて、良く分からない店に入る。オヤジが出てくるが、それをいなしながら奧の桟敷席に上がり込む。もちろん注文は定食だ。一人4000ウォン(600円弱)という激安プライスが嬉しい。まずはビールで乾杯する。そのうちに次々と運ばれてくる料理たち。う~! 美味しいのだ。ヘジャンクッがついているのだが、これがまた美味しい。こういうのを食うと韓国に来るのがやめられなくなってしまうのだ。



ヘジャンク を食べる






03マッコリの店

 たらふくメシを食って、今度は「マッコリ」(どぶろく)を飲みに行くことになった。やったー! 僕は何を隠そうこのマッコリに目がないのだ。マッコリマッコリ!こんなうまいもんはない。それは是非是非是非是非飲みに行かねば。絶対飲みに行かねば。

 その定食の店からさらにチョンガッの方に歩いて行って、YMCAの裏も越えていって、パゴダ公園(今はタプコル公園って言うんだったっけ?)の近く、ほとんどインサドン(仁寺洞)近くにその店はあった。いや、店というか、それは完全なだった。

 「店の名前は?」

 「ない」

 どうやら店の名前はないらしい。バラックには名前など必要ないのだ。まるで「泪橋下の丹下ボクシングジム」(拳闘倶楽部だったっけ?)のようだ。いや、もっとバラック。入り口も知っている人にしか分からない。まさかこんなバラックで営業しているなんて誰も考えもしないだろう。・・・そしてその分かりにくいドアーを開けると、その先には「禁断の花園」が広がっていたのだ。

 バラック内部は客で溢れかえっていた。まさに密集状態。内側は壁も低めの天井もベニヤ張りで、いたるところにマジックやペンで落書きがされていた。そしてそれが独特の雰囲気をかもし出している。しかし、それでいてかなりの空間的広がりを感じるから不思議だ。そしてさらに驚くべきことに客層が若いのだ。10代?という感じの人から20代が中心で、若さでムンムンとしている。そしてみんな思い思いに語り合いながらどぶろくを酌み交わしているのだ。ううむ、こんなところがあったとは、まさにディープ! ソウルの梁山泊とでも呼ぶべきなのではないだろうか。

 奧へ奥へと進んでいくと、これまた異常なまでに広い空間が現れた。入り組んでいるので奥まで見通せなかったのだ。バラックに見えて、実はとんでもない収容人数の店だったのだ。・・・あ、侮れない。これはすごい店だ。すぐに店に人が現れて「やかん」に入ったどぶろくをドン!と置いていく。豪快だ。
 魚の焼いたのを注文し、それを肴にマッコリを飲む。飲む飲む飲む。嗚呼、至福の時。ああ、何て幸せなんだ! おお神よ! 思わず神に感謝してしまうのだった。(でも別にキリスト教徒でもなんでもないんだー)

 マッコリを堪能して帰途につく。でも、とにかくこの店だけは絶対に忘れるわけには行かない。しっかり記憶に留めておいた。幸いこの界隈は良く知っているので大丈夫だ。

 カンファジャンに戻ってみると、部屋の電気が消えていた。おそるおそる覗いてみると「あしやん」が爆睡していた。もうそんな時間だったのか。今日の具合はどうだったんだろう? ま、それは別にどっちでもいいのだが、問題は「あしやんが布団を全部使って寝ている」ことだった。もう一組布団をもらってこないといけない。仕方なくファトゥ(花札)に打ち興じている管理人おばちゃんたちの部屋に行って、今回もぶつぶつ文句を言われながら布団をもらってきた。でもまだ寝るわけではなくて、しばらくYUKI会長と Morris.さんの部屋でうだうだ喋っていた。するとなんでか知らないけど、あしやんが起きてきて会話に加わった。
 明日の話になり、YUKI会長がセウンサンガ(世運商街)のCDの卸し屋さんを案内してくれることになった。これは有り難い。何枚かゲットしないといけないものがあるのだ。

 あしやんとは、そのあとマンガの卸し屋に行こうということになり、その日はそれでお開き。寝ることにした。




韓国旅行記 【友達と会う韓国旅行3】 了 第四話へ続く
1997年5月1日(木)



マッコルリ(マッコリ)の店(ソウル)



マッコルリのお店(ソウル)

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