98年4月はこの7公演

 


劇団M.O.P.「遠州の葬儀屋」

紀伊國屋ホール 4/3〜4/5
4/4(土)観劇。座席 D-9

作  土田英生(MONO)
演出 マキノノゾミ
「笑い」がタブーの葬儀屋稼業。そんな葬儀屋の労をねぎらって、年一回世間の目から隠れて慰安会が行われている。今回は趣向を新に船上パーティなのだが、その船が遠州灘沖で遭難してしまう。そんなシチュエーションの中、笑う事が許されない葬儀屋達の笑うに笑えぬ悲劇をおもしろおかしく描いた作品。

脚本をMONOの土田英生が書いているのだが(土田氏の本は大田王でちょっと触れただけ)まだまだ発展途上という感じを受けた。葬儀屋を描くという発想や、それを閉鎖された船上での慰安会というシチュエーションコメディにしたあたりや、葬儀に関する話のおかしさなどいいところはあるものの、全体を通しては少々物足りなさが漂う。ただ役者がよかったので最後まで飽きずに観れた。なかでも木下政治と三上市朗のからみが面白く、観た甲斐が大いにあった。木下政治は東京公演のみの出演との事なので東京以外で観る人には残念でしたと言いたい。

演劇の部屋に戻る


★☆北区つかこうへい劇団
「サイコパス〜木村伝兵衛の自殺〜」

北とぴあ・つつじホール 4/3〜4/14
4/8(水)観劇。座席 E-16

熱海殺人事件の最新バージョンで最終バージョン。2月に観た最新作の北とぴあバージョンと言えるほどには変化はなかったが、微妙な変化は起こしてした。そのせいもあるのか前回観た時と微妙に印象も違っていた。 前回観た時は、家族の生活の為に原子炉の中で燃えしきる燃料棒を素手で取り出し、被爆してしまった大山金太郎に感情移入してしまい、母を取り戻すことのできない空しさ故に母親を殺してしまったという二重の悲劇にいたたまれない思いがあったが、今回はそんな大山金太郎より鈴木聖子演じる水野朋子婦警の行きざまが悲しかった。自分の意思とは違う行き方を捨て、愛に生きる覚悟を決め自衛隊に拳銃を突きつけ「国とは正義の事であります」と訴える姿はこの作品の主人公は水野婦警だったのかと思わせる程に力強く感動した。やっぱり今回も木村伝兵衛の印象は弱い。残念。


“熱海殺人事件”自分が観た公演
甲乙つけがたいので順位はなし

●熱海殺人事件―ロンゲスト・スプリング
●熱海殺人事件―オーソドックスバージョン
●熱海殺人事件―モンテカルロ・イリュージョン
●売春捜査官
オーソドックスバージョンは3回、売春捜査官は2回観ていたりする・・・

演劇の部屋に戻る


劇団☆新感線「SUSANOH―魔性の剣」

サンシャイン劇場 4/5〜4/19  
4/14(火)観劇。座席 7-3

作  中島かずき
演出 いのうえひでのり
伝説の剣『スサノオの剣』をめぐって対立するジャガラ国とアマミカド国、それにクマソノタケル(橋本じゅん)・イズモノタケル(古田新太)・オグナノタケル(粟根まこと)の3人が絡んでいく架空の神話絵巻。

席が悪く舞台の袖が見えない状態であったが、スピーカーのほぼ前という好位置のおかげで久々に身が震える程の大音響を味わった。音のシャワーを浴びていたら、舞台の半分くらいをスピーカーと照明が占めていた頃の新感線を思い出して、なんか懐かしかったぁなぁ、って書くとじじいなのがばれてしまう。舞台構成・殺陣のうまさ・役者のうまさなどエンターティメント劇団=新感線という図式も納得してしまう面白さ。自分的には評判の良かった前回公演の『髑髏城の七人』よりごちゃごちゃしていなかった分、今回の方が単純に楽しめた。そして役者のうまさも特筆もの。なかでも古田新太はかっこいい。ホント古田あっての新感線と言い切ってもいいのではないか。そして客演の明星真由美も良かった。双数姉妹での使われ方より魅力的だったのではないか。あっ、一つ不満だったのが右近健一のデブぶり。太り過ぎの為、奇妙なセクシーさは影をひそめ気持ち悪さだけが前面に出てしまっていた。いいキャラクターを持っているだけにもったいない。


“劇団☆新感線”自分が観た公演ベスト
1.花の紅天狗
2.仮名絵本西遊記 2
3.ゴローにおまかせ 3
4.SUSANOH―魔性の剣
5.宇宙防衛軍ヒデマロ 5
6.スサノオ〜武流転生
7.星の忍者(再演)
8.髑髏城の七人(再演)
9.仮名絵本西遊記 1
10.宇宙防衛軍ヒデマロ 3
11.ゴローにおまかせ 2
12.ゴローにおまかせ 1
13.髑髏城の七人(初演)
14.アトミック番外地
15.野獣郎見参!
 

演劇の部屋に戻る


野田地図(NODA MAP)「ローリング・ストーン」

シアターコクーン 4/4〜5/2  
4/18(土)観劇。座席 Q-22

作・演出 野田秀樹
石(野田秀樹)に意志を持たせ、ある時はその石は皇太子になり、人間同士の闘争を眺める。何の為に石が積まれ、ほったらかしにされるのか、そんな疑問を持った視点から人間の世界を描く。

石は国境として積まれたり、塔として積まれたりするのだが、無感情である石(石なんだから当たり前だが)の立場から人間同士の戦い(国と国の戦いと言った方がいいか)を意志を持った一つの石がストーリーテーラーとなり進めていく。その独特な世界がとても面白い。石の言葉を挟む事により、より一層戦う事の愚かさが滲み出ていたと思う。言葉と言えば、野田秀樹の言葉遊びも健在で楽しめた。壁を使った演出も見事で、塔が崩壊する場面では壁に登っていた人が崩壊と共に雪崩落ちる。目の前で塔が崩壊する情景が浮かび上がった。演じる方は大変だったと思うけど…。役者に関しては平均化されてしまい、作品に飲み込まれてしまったと非常に感じた。でも今回はそれで作品が引き立ったとも感じたので良かったのだと思う。野田演出の勝利。


“野田地図(NODA MAP)”自分が観た公演ベスト
1.キル(初演)
2.ローリング・ストーン
3.贋作 罪と罰
4.TABOO

演劇の部屋に戻る


パルコ・プロデュース「トランス」

パナソニック・グローブ座 4/16〜4/27  
4/21(火)観劇。座席 B-19

作 鴻上尚史
演出 鈴木裕美
登場するのはフリーライターの立原雅人(三宅弘城)、精神科医の紅谷礼子(奥山佳恵)、ゲイバーに勤めていた後藤参三(内野聖陽)の3人。3人は高校時代の親友だったが卒業以来一度も会う事がなく、各々の人生を歩んでいた。そんなある日雅人は、時々自分が自分でないような錯覚にとらわれるようになり、病院を訪れた。そこで偶然にも医者になっている礼子と再会する。また参三とも、飛び込みで入ったぼったくりゲイバーで、偶然にも再会を果たす。別人格になってしまう雅人を通し高校卒業以来初めて顔を揃えた3人は・・・。

鴻上尚史作の「トランス」も今回で3回目(小さい劇団の公演はあったと思うけど)。今回は自転車キンクリートの鈴木裕美の演出と言う事で期待したのだが、これと言った目新しさがなくがっかりな芝居になってしまっていた。オリジナルの台詞を生かした為に参三は内野のイメージとは違うものになってしまい、単なる初演(松重豊)のコピーになってしまっていた。初演を越える為にはもっとオリジナリティを出し、内野のキャラクターを生かすべきだったのではないか。演出家がどこまで脚本を変更していいのか自分にはわからないが、新しいトランスを期待したのは私だけではないはず。出演者にも不満があって、奥山の感情の起伏のなさはどうにかならなかったのかと言いたい。ただ一人三宅だけが新たな雅人像を作っていたと思うが、他の二人とは噛み合わず、どう見ても親友3人組には見えずじまい。でも、『親友3人組』がこの作品の一番肝心なところだと思うので、そこだダメなんてのは話にならんと激怒もの。参三が礼子に向かって「酒だ酒だ」という台詞にも、安らぎや励ましが感じられず、せっかくの芝居が台無しで悲しくなってしまった。
あっ、ただ一つ良かったのはダンスシーンがなかった事。高いチケット代払ってそれだけってのも悲しいなぁ。


“トランス”自分が観た公演ベスト
1.初演 小須田康人 松重豊 長野里美
2.再演 手塚とおる 古田新太 つみきみほ
3.今回 三宅弘城 内野聖陽 奥山佳恵

演劇の部屋に戻る


MOTHER「SHYBAN(シャイバン)」

青山円形劇場 4/21〜4/30  
4/25(土)マチネ観劇。座席 E-24

作 東野博昭
演出 G2
ねこびたいという場所の崖っぷちに建てられた劇場で、芝居の練習中に殺人事件が起こった。殺人に使われたナイフを持っていたという理由で、一人の男(宮吉康夫)が逮捕された。舞台はこの事件を裁判する法廷。弁護士に牧野エミ、検察官に遊気舎の久保田浩、裁判官に立身出世劇場の関秀人、そして観客から12人の倍審員が選ばれ物語は進行する。

のだが、いきなりつまらないギャグの応酬で気分がめげる。まっ今回は久保田浩を楽しみに観に行ったのでいいんだけど。で、その久保田はどうだったかというと、強いて感想を書くほどのものはなっかた。羽曳野の伊藤の一歩前の性格っぽいところはいいんだけど、その引っかき回しが中途半端で生かしきれていない。
物語も犯人が誰か追っかけているところはおもしろかったし、青山円形劇場という場所をうまく利用しているとは思うが、盛り上がりに欠ける。法廷劇と言っておきながら、法廷の緊張感もなくだらだら感が漂う。緊張感を漂わせながら笑わせてこそ、この芝居のおもしろさなのではないだろうか・・・。
この芝居はヴァーチャル・シアター・シリーズということで観客の意志で物語が変わるとの事だったが、観客から選ばれた陪審員が参加するのは、判決で有罪か無罪かを決定する場面だけ。言ってしまえば、2通りの結末を用意しただけの容易な芝居であった。ちなみにこの日は有罪・無罪同数で裁判官の判決で無罪。自分のまわりで観に行った人が、ことごとく無罪という判決だったというのには作為を感じてしまう。そんな事はないとは思うけど。劇団発売のビデオには有罪・無罪どちらのシーンも収録されているそうです。買わないけど。
後日聞いた話によると、120分テープに収まらないとかで有罪のシーンはカットされるとの事。あ・あやしい。


“MOTHER”自分が観た公演ベスト
1.ジャンキースクエア(再演)
2.SHYBAN
3.やわらかな壁

演劇の部屋に戻る


サモ・アリナンズ「ロボイチ」

駅前劇場 4/22〜4/29  
4/25(土)ソワレ観劇。座席 D-6

作・演出 倉森勝利
物語は主人公の華影田カズオ1号(小松和重)が父の仇の髪垣主膳スーパーPCエンジン(久ヶ沢徹)と対決するまでを描くというの単純明快ロボット青春活劇。

前回は本多劇場なんかでやったものを初めて観たもんだから、おもしろさなんて全然感じず、演じながら笑っているのも「真面目にやれ」などと憤慨した記憶があった。そんな記憶があったもんだから、今回は見送ろうと思っていたが、客演に遊気舎の楠見薫の名前があったので観る事にした。それにチラシに書かれた後藤ひろひと氏の「どうでもいい時間」という言葉も気になったし、松尾スズキ氏の「彼らには決して追い抜かれないだろう。そんな安堵感があります。」というのも気になった。そうか、サモアリはそんな劇団なんだとやっと理解。で、今回は駅前劇場という小さな小屋での公演。あーこのキャパでの公演ならおもしろいや、というのが本音。本多でこんなくっだらない芝居をやるべきではない。本多劇場で芝居をやるという事はそれなりの意味があるのだろうが、自分の芝居にあった劇場で演じるのも必要だと感じた。余計なお世話だと思うけど。
で、やっぱり楠見薫の力は凄い。芝居がおもしろかったのは楠見の力が半分はあった。ってことはサモアリの女優陣の力が今後の課題かな。これ又余計なお世話だわな。
今回はチープな笑いに引き込まれてしまい、大笑いできた。これがサモアリの魅力なんだと再認識。


“サモ・アリナンズ”自分が観た公演ベスト
1.ロボイチ
2.蹂躙

演劇の部屋に戻る



CONTENTSのページに戻る