フジタヴァンテ 6/4〜6/6
6/5(土)観劇。座席自由(舞台向かって右側)
作・演出 笹木彰人とあるビルの10F。そこに集まっていたのは4人のナルシスト。その中にひねくれた心を持つ小心者の自殺志願者が引き込まれる。この自殺志願者は0:00ちょうどに、このビルから飛び降り自殺をしようと計画していた。その自殺を止めようと0:00まで必死に過ごす男達の話。
オカマで美のナルシストである鳳(郡司明剛)はおかしいが、それ以外は全然ダメ。ナルシストというキャラさえも作れていない。郡司は男優賞を受賞したが、今回のフェスで賞を取れたのはこれだけ。順当だと思う。
公演の度にインターネットの“えんげきのページ(略して、えんぺ)”の一行レビューを賑わしている劇団なので、どんなに面白いのか楽しみにしていたが、期待はずれもはなはだしい。今回の『ゴージャスな雰囲気』でも絶賛の嵐だったが、何故そんなに面白がる?その感性はどこから来るのか、自分が笑いについて行けてないのか・・・。ホントこの芝居のどこがおかしいのか、首をひねるばかりである。客席の一部の人間だけが大受けしているのを聞いて、さらにシラケたのも事実。おかしくもない場面(まぁ笑う本人はおかしいんだから文句は言えないのだが)で、笑う笑う、腹をかかえて笑う。一度脳波の検査して欲しいです。センスがいいとかも書かれていたが、この芝居のどこがセンスがいいのやら。審査で散々やられたのをいい事に、自ら悪役を気取っていたが、悪役の魅力もなし。
作・演出 依田瑞穂舞台は閉鎖された遊園地。ホームレスに育てられた一人のライター・神谷勘太(大石丈太郎)は、ギリシア神話の癒しの神・アスクレピオスの夢をよく見る。夢でしか癒されないそんな男の夢を叶えてやろうとホームレス達は作り話をでっち上げる。興味を持った神谷は、作り話とは知らずにホームレス達の話を記事にしようとやっきになる・・・ホームレス達は作り話だと言えなくなり、話はだんだん大きくなっていく。
そんな話を軸に、そこに住み着いたホームレス達の人間模様を、神谷の二人の育ての親や、その場所を通り過ぎていく人々との関わり合いの中で描いていく。知人が出演しているので観に行く。なもんで酷評も書けない。って書くと悪いみたいに聞こえるが、そんな事はない。ただストーリー重視のストレートプレイだったので、くっだらなぇ物好きな私にとっては場違い感が強かった。観始めるとそんな感じは消え去り物語に入り込めたが、物語の中心となる人物がどんどん変わっていくのには感情移入できずに、ストレスが溜まってしまった。ホームレス達を描きたかったのか、父と子の関係性を描きたかったのか、どうも物語の主題が掴めなかった。太い本筋があって、ちょっと脇のストーリーを入れるのはいいのだが、本筋が太くない分、散漫感は拭えない。家族に見放された父親とかの話が挿入されたのも、散漫感を増長させてしまった。
役者については、大石丈太郎や天野耕平など男優は良かったが、女優に華がないという印象が強い。きれいとか、かわいいとかとは別次元で再度足を運ぼうという気持ちにさせる女優が一人欲しかったなぁ、というのが素直な気持ち。
作・演出 村上大樹舞台となるのは、ドリルヶ丘工業高校。その高校に通う寿姫(澤田育子)の婿探しを軸に、寿姫が想いを寄せる若松先輩(加藤啓)やら、言い寄ってくるめで太(加藤二役)らをちりばめ、ライバルのDX寿姫(小手伸也)でスパイスを効かせた、チープだけど幕の内弁当的なむっちゃ笑える作品。だが、笑った分だけストーリーを忘れてしまった・・・。けど、ラストは、♪めでためでーたーの若松様よ♪ってことで、めで太と若松先輩が同一人物だったって話でハッピーエンド。めでたく寿姫とめで太は結ばれ、DX寿姫は葬り去られましたとさ。ちゃん、ちゃん。ってな話。
内容はチープだが面白い。こーゆーのが好きな私には堪えられない面白さであった。そして寿姫を演じた澤田がかわいいのもいい。前回見た時は男ばかりでむさ苦しさが印象的だったが、今回は一味違って見えた。そしてゲスト出演の「早稲田の最終兵器」との呼び声も高い小手伸也のインパクトの強さは、類をみないほど強烈であった。それまでも小手伸也の名前は知ってはいたが(写真では見た事あるが)、舞台で見るのは今回が初めて。そのせいか、今回は出演者の誰よりも印象が強い。加藤啓の切れっぷりも良かったが、それ以上の衝撃であった。芝居の初めの頃にみせる、物語とは特に関係のない長台詞も、最高の見せ場であった。この長台詞で疲れさせ、その後の暴走を止めているとの噂も聞いたが、どうなんだろう。まぁ、それはともかく、そんな小手伸也には“主役殺し”の称号を与えたい。
ただ、これだけ面白い作品なのだが、駅前劇場という狭いスペースでやるには公演時間が長すぎ。もう少し絞り込んでもらわないと尻が痛くてたまらない。この点だけがマイナス要因。
“拙者ムニエル”自分が観た公演ベスト
1.DX寿姫 2.ビバ!ヤング!(ヒップ)
作・演出 平田オリザ平田オリザが2年ぶりに劇団に書き下ろした新作。舞台は東京近郊の地方都市にある、寮廃が決まった古い女子大の学生寮。中央にテーブル。一人の女性が雑誌を読みながら時を過ごしている。そんな場面から舞台は始まる。そして、この場所で午後6時から行われる会合に出席する為に、さまざまな人々(余命幾ばくもない人。不倫をしている人。転勤を命じられた人など)が思い思いに集まってくる。集まってくる人々の顔に笑顔はあるものの、何か心に引っかかっているのか、どこかぎこちない。女子寮が米軍基地になる事への反対運動から始まった活動は、いつしか自然保護などの市民運動に発展していき、その事で、運動の本質が大きく変容し、集団の活動自体がぎくしゃくした関係になっていた・・・。90年代における一つの集団の崩壊の過程を、人々の会話を通して克明に記述していくことによって、集団を持続していく事の困難さや、集団に潜む狂気を描いた作品。
“集団と個”という問題を考えた上で、“集団の崩壊”という道を選んだ平田オリザの視点に、正直恐怖を覚えた。組織を作るのが難しい時代であるという事は私も感じていたが、力を持たない組織の弱さ、組織を形成する善意の中に潜む利己主義を、こうも明確にさらけ出されては落胆以上に恐れを感じる。力があるものの独裁政権下での組織しか存続できないのではないか、などと偏見に満ちた考え方に転びそうにもなった。
人々の関係性が絡み合う息苦しさを描いたら、平田オリザの右に出る者はいないだろう。しかし今回は、その息苦しい物語が進行していく過程において、時間の経過が非常に気になってしまった。物語は会議が始まるまでを描いている。初めの一人が登場してから会議が始まるまでが芝居の全てであるので、芝居の時間の経過がリアルタイムだとすると、非常に時間にルーズに思えてならない。始まるまでにやれ不倫だの転勤だのの話が絡まるのだが、誰も会議の時間を気にしない。開始時間より早くから集まっていたにしても、長すぎる。そんな事が気になって仕方がなかった。不倫の話を会議前に問いただすなんて事も理解できない。「そんな話はこの運動とは無関係だ」と怒り出す人がいても良さそうなのに、話し始める。どーも納得いかない。ただこんな状態を含めて、日本人の不合理的行動の中での集団の活動を描いていたとしたら、平田オリザ侮り難しである。
余談になるが、劇中の雑談の中で古参の中心人物である西大寺孝彦(志賀廣太郎)が、E.H.エリックの話しを出すのだが、その時テーブルに座っている人達の年齢のまちまちさにより反応がばらばらなのに対し、その芝居を観ている観客の反応もばらばらだったのが、妙におかしかった。と言うより平田オリザのいい意味でのいやらしさを感じた。そして、この芝居は観るだけではなく、その関係性に参加してこそおもしろいのか、とも感じた。
“青年団”自分が観た公演ベスト
1.東京ノート 2.海よりも長い夜 3.ソウル市民
舞台はアフリカの広大なサバンナ。そのサバンナにある動物達の王国プライドランドの王ムファサ(ひのあらた)と王妃サラビ(秋山知子)の間に王子シンバ(海宝直人/坂元健児)が誕生した。国の動物達は大いに祝福していたが、弟のスカー(下村尊則)だけは、王位継承第一位の座を奪った甥の誕生を喜んでいなかった。やがてスカーはムファサを殺したうえ、シンバを策略で追放し、王位を継承する。
国外で気ままに暮らしていたシンバであったが、ある日偶然友人のナラに出会い、スカーの悪行と故郷の荒廃を聞く。怒りを覚えたシンバは、プライドランドに戻り、スカーに対決を挑む。同名のディズニー映画の舞台化。映画は見た事がないのだが、物語自体は、善悪の構図が単純過ぎるのが難点。しかし、魅力ある悪役を配する事によって物語はおもしろいものになっていた。その悪役スカーを演じたのが下村尊則である。やはり悪役がいいと物語が面白くなるというのは鉄則なのだろうか。下村尊則は『ジーザス・クライスト=スーパースター』でヘロデ王をやった時もおもしろい役者だと思ったが、今回もいい味を出していた。四季に似合わない独特な顔(失礼)もいい。
「観る価値大いにあり」と絶賛したいのが、舞台美術。一歩間違えれば間抜けな衣装(どこかの劇団で絶対パロディにしていそう・・・)が、そのギリギリのところで素晴しいものになっていた。これは劇団四季の舞台がどうとか言う以前の問題で、この舞台を制作したディズニーのスタッフに拍手を送りたい。まぁ、それを忠実に再現できる劇団四季も凄いっちゃ凄い。チケット代は高いが、久々に劇団四季で満足できる芝居を観たという気持ちだ。
“劇団四季”自分が観た公演ベスト
●劇団四季としてベストを選ぶ事が、無意味に感じているのでヤメました。
作・演出 故林広志故林広志が定期的に行っている60分のショートスケッチ集のスペシャル版。内容は、●闘カタツムリでじめっと盛り上がる梅雨祭りの話。●電車で偶然一緒になったラクビー部の先輩と後輩。その先輩に訳のわからないまま意味不明なグッズを買わされる男の話。●自動車教習所で、後部座席にやたら擬音を出す男が乗っている26号車に乗ってしまった男の話。●霊に取り憑かれるという蔵を取材にやって来た3人が、偶然閉じ込められ、平静を装いながらも疑心暗鬼になっていく話。●復讐の為に見つけた男がくにゃくにゃの男だったという話。・・・などなど。ショートコント10作品。
今回はスペシャル版とし、コントサンプルのレギュラーメンバーである嶋村太一(桃唄309)、 竹井亮介、井上貴子(双数姉妹)、三谷智子らに加え、活動休止状態となっている伝説的なコントユニット“ガバメント・オブ・ドッグス”のメンバー6人のうちエディ・B・アッチャマン、水沼健(MONO)、土田英生(MONO)の3人が揃うという見逃せない公演であった。“ガバメント〜”としてのライブ活動は2年振りだそうだが、初めて観る私は期待で胸が膨らむ。で、どうだったかと言うと、期待通りに強烈な衝撃を受けた。『ガバメント・オブ・ドッグスがゲスト』とサブタイトルを付けるのも納得してしまう。くにゃくにゃの男の水沼健にも笑ってしまったが、エディ・B・アッチャマンの存在感と言ったら半端じゃない。妙に和んでしまう憎めない笑顔といい、間の取り方のうまさといい、その存在自体が笑いなのである。見ながら、“てんぷくトリオ”の南伸介(漢字は定かでない)を思い出してしまったのは私だけだろうか。そんな逸材なので、サラリーマンなどやってないで是非とも東京に出てきて欲しいもんである。
内容としては、“人の悪い笑い”とでも言おうか、ゲラゲラ笑うものではなく、ニタニタ系の作品が多かった。『蔵』では前半「寿司が旨かった」と話し合っている3人が、蔵の中で3人の内の誰かが霊に取り憑かれているのではないかと疑心暗鬼になる。そして、人間関係がこじれた後には「俺、生の魚嫌いなんだ・・」と他人の会話に合わせられなくなっている始末。仲良さそうなのが上っ面だけだったかと苦笑いをする。でも、そんな笑いが妙にツボにはまる。患者と新人2人の看護婦という話もあったが、これは“当時はポピュラー2”の予告にもなってるとかとか。
余談になるが、打ち上げに参加の後、エディ・B・アッチャマンと土田英生が池袋まで帰ると言うので、タクシーに同乗した。助手席に座ったアッチャマンが、自動車教習所の26号車同様に擬音を出しやしないか心配であったが、そこまではしなかった。しかし、道も知らない(と思う)のに、運転手の「明治通りから行った方が早いかなぁ」と言う問いかけに「そーですねー」と気のない返事をしていたのには笑ってしまった。そんな中、後の座席では土田英生が眠りについていた。
“故林プロデュース”自分が観た公演ベスト
1.当時はポピュラー/奥本清美さん(23才、OL) 2.コントサンプル(スペシャル)〜ガバメント・オブ・ドッグスがゲスト〜 3.コントサンプル/2-99,aG: