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大町のブルックナー

日時
1999年5月28日(金)午後7:00開演
場所
ザ・シンフォニーホール
演奏
大阪センチュリー交響楽団&大阪シンフォニカー
指揮
大町陽一郎
曲目
ブルックナー…交響曲第8番 ハ短調
座席
1階D列27番(S席)

はじめに

 仕事が終わって速攻でタクシーに飛び乗りシンフォニーホールへ。なんとかセーフ。今回は間に合ったみたいだ。それにしてもフェスティバルホールなら真横にあるのに、まったく間の悪い。……解る人には解ってしまいますね。(イシハラホールも近いぞ)
 取り敢えずサンドウィッチを腹に突っ込んで座席に着く。シンフォニーホールは実に半年ぶりだ。見渡すと座席はほぼ満席。と言ってもそれは正面席に限った話で、左右のサイド席は前半分だけが埋まっていた。残りはアサヒビールが社員に配ったのかな?

前説

 座席に座って金子健志さんの書いたプログラムをめくっていると、開演前に拍手が起こった。「なんだ?」と顔を上げると大町さんがマイクを持って登場。「本日はようこそいらっしゃいました」と前説をしてくれました。内容はブルックナーとオルガンとザンクト・フローリアン。ブルックナーは天上から降り注ぐ音楽のように聞くのが一番良いとのことでした。
 ひとたび大町さんが舞台袖に引っ込むとオケのメンバーが次々と登場しました。今回オーケストラは大阪センチュリー交響楽団と大阪シンフォニカーとの合同なのですが、私はセンチュリーがメインで管楽器をシンフォニカーが補強する形だと思っていました。でもそれは間違いで、それぞれのパートで半分ずつメンバーを出し合った演奏形態でした。

ブルックナー…交響曲第8番 ハ短調

 ブルックナーのシンフォニーはインテンポで進むべきと言われるが、名演と言われるCDを良く聞き込むとそうでもないことが解る。大事なのは星々の運行のように流れるブルックナーの音楽を一切の淀みを感じさせることなく奏でることで、そのためにはテンポの緩急などは二の次だということだ。「心情的インテンポ」が大切なのだ。
 今日の大町の指揮はインテンポにこだわり過ぎなのか、スローテンポで進行される演奏に乗り切れない所があった。個人的には第1楽章の展開部、終楽章の第3主題などがそうだ。
 一方スローテンポなのに旋律ひとつひとつに対する思い入れが薄く、生命力に乏しい演奏だった。オケのメンバーがブルックナーに慣れていないせいもあるかもしれない。
 
 とは言ってもオーケストラは全員最後まで頑張っていて、指揮者も低音から充実した豪快な音を引き出していた。第1楽章の主題提示部までは大変良かった。個人的に金管の最後までテンションを落とさなかった鳴らしっぷりとティンパニの腰が据わって重く豪快な音が印象的だった。
 また最後のクライマックスでは巨大な音の大伽藍を描き出して壮大だった。終演後「あんな大きな音は初めてだ」と言う中年男性の言葉を耳にしたが、なるほどと充分に頷けた。

おわりに

 近くに座っていた偏屈そうなジイさんが、ラストの3つの音が鳴る前からやる気のない拍手を送っていた。気持ちは解るがみっともないから止めておけ。すぐ席を立つ人もいたが、全体的にまあ暖かい拍手だった。

 総じて、予想通りの演奏会でした。

 今回大町さんの指揮を初めて聞きましたが、この指揮者に深い精神性とかを求めてはいけないです。しかしオケを低音から腰の据わった音で充分に鳴り響かせることが出来るので、リヒャルト・シュトラウスとかレスピーギなんかが似合うのではないかと思いました。

 さて、次回はユッカ=ペッカ・サラステのシベリウス2番です。最新のCDが大変若々しい演奏だったので、とても期待しています。


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