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ロッテルダムフィルハーモニー管弦楽団
第42回大阪国際フェスティバル参加演奏会

日時
2000年4月16日(日)午後2:00開演
場所
フェスティバルホール
演奏
ロッテルダムフィルハーモニー管弦楽団
指揮
ワレリー・ゲルギエフ
曲目
1.プロコフィエフ…交響曲第5番
2.ベルリオーズ…幻想交響曲
座席
Rサイド1階M列7番(S席)

はじめに

 フェスティヴァルホールに到着すると色々な国の国旗が掲げられ、国際音楽祭にふさわしい華やかさがありました。
 受付を抜けようとすると、通路の真ん中に一際背の高い集団があって、よく見てみると外人さんの一行でした。胸にはオランダ国旗をモティーフとしたバッチを付けていたので、ひょっとしたら領事館関係の人かもしれません。さすが国際フェスティバル。

 席についてステージを見ると舞台裾に花が飾られています。やや殺風景なフェスにちょうどいいアクセントを与えます。
 ロッテルダムフィルのメンバーがそろうとフェスの広いステージが狭く感じました。しかし少し客席と距離感があって、すこし寂しく感じました。
 さすが国際都市ロッテルダムなだけあって、オケの構成員も国際色豊かでした。特に目を引いたのは第1Vnにアフリカ出身のように見える方がいたことで、弓を持つ手首の角度が他の人と変わっていました。

 やがて開演5分前を告げるアナウンスが流れました。いつもの鳥の声ではなく、まったく新しいものでした。それにアナウンスも日本語と英語の二カ国語で行われていたのが新鮮です。さすが国際フェスティバル。
 先ほどのオランダの御一行もボックス席に着くと会場の照明も落ち、指揮者の登場を待つだけになりました。

プロコフィエフ…交響曲第5番

 この作品はソビエトの対独戦勝利を記念した演奏会で初演された、第「5」交響曲 作品「100」という、なんとも肩に力が入りまくった曲ですが、プロコフィエフもロシア革命後に初めて帰国して「なんで帰ってきたの?」という空気の中、大変だったのでしょう。
 大きな拍手で迎えられたゲルギエフが登場すると会場の興奮が否応なしに高まりました。

 さて、演奏の方は全4楽章をアタッカで継ぎ、強い推進力で進んでいくものでした。また低音の利いたサウンドはオランダと言うよりロシアっぽく、ゲルギエフの色が強く出たものでした。
 スケルツォである第2楽章で、強弱がはっきりとついたのコントラストとリズムの立った演奏が面白く聞けた。これぞプロコフィエフ。
 何より切り込むような鋭い音型が並ぶ終楽章が大変素晴らしく、特に第2Vnトップとのデュエットがあったコンマスのものすごい熱演ぶりが非常に印象に残っていて、ゲルギエフのドライブの巧みさと合わせて大いに盛り上がったものとなりました。
 プロコフィエフの作風としてどんなにツボにはまった演奏をしてもどど〜んと感動することはなく、楽しいけれどややセコセコとした後味を残すのが残念です。
 事実この日の演奏は大変良い物だったのですが、熱狂的な拍手は起こりませんでした。

ベルリオーズ…幻想交響曲

 休憩後はコンマスが前半の人と交代して始められました。
 曲の冒頭での弦の美しさは見事で聞き惚れるものでしたが、逆にパワーを後半のために溜めて置いたのがありありと解ってしまってちょっと残念。
 プロコと同じく全楽章を続けて演奏していましたが、各楽章での場面描写が大変良く、さすがオペラ畑の指揮者だと感心しきりでした。しかしその描写が明朗で、澱んだ空気のような妖しさがなく、この曲が阿片を飲み過ぎた青年の見た幻想を音化したものだというのを感じさせる演奏ではありませんでした。ここはアムステルダムじゃないけれどもうちょっとそういう雰囲気があっても良いのにと思いました。
 第4楽章での行進曲から演奏がグングン熱くなり、第5楽章では指揮者がフルパワーをオケから引き出し非常に大きなヤマが築かれました。舞台裏の鐘がうるさかったのが玉に瑕。
 この辺りのゲルギエフの手腕はホント見事だと思う。しかし同じ手ばかり聞かされていると容易に予想がついて飽きて来るのもまた事実。振り返って見ると一昨年のシェエラザードのような全体的に平坦でありながら味の濃かったアプローチが懐かしいと思いました。

アンコール

 演奏後、着物を着た女性とちいさな女の子が登場して、指揮者とコンマスに花束を渡すシーンがありました。
 また鳴り止まない盛大な拍手に応えてアンコールが2曲かかりました。
ベルリオーズ…ラコッツィ行進曲
ヨハン・シュトラウス…雷鳴と稲妻
 ラコッツィは予想通りでしたが、雷鳴と稲妻という選曲が意外。ラコッツィの爆発力はキーロフ歌劇場管弦楽団の時の方が凄かったですが、今日のもなかなかのものでした。

おわりに

 ゲルギエフ聞きたさに足を運んだ演奏会でしたが、今日の曲目があまり得意なものではなかったせいか、なんとなくスカッとしなかったのが正直な感想です。ゲルギエフなら私の『幻想』嫌いも吹き飛ばしてくれると思ったんですが。
 しかし客観的に見てもプロコの終楽章が一番良い出来だったと思います。(音量的に一番はじけたのは幻想の第5楽章) 客席の反応は違ってたみたいですけど……。

 総じて、なんか煮え切らなかった演奏会でした。

 さて次回は朝比奈御大のいずみホールでの演奏会です。
 最近仕事が忙しくって、きちんと行けるかどうか微妙な所なんですが、とても楽しみにしている演奏会なのでぜひとも行きたいです。


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