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京都市交響楽団
「第9・魂のメロディ」 in 2000

日時
2000年12月26日(火)午後7:00開演
場所
ザ・シンフォニーホール
演奏
京都市交響楽団/京都市民合唱団
独唱
安保淑子(S)、児玉祐子(A)、松本薫平(T)、片桐直樹(Bs)
指揮
岩城宏之
曲目
1.J.S.バッハ(外山雄三編曲)…トッカータとフーガ
2.ベートーベン…交響曲第9番 ニ短調「合唱」
座席
1階H列27番(A席)

はじめに

 岩城さんはエッセイの中で年末に第9なんか絶対に振らないと書いてあったのですが、どういう心境の変化があったのでしょうか? アンサンブル金沢でのベートーベンチクルスでたまたま年末に第9をやってタガがはずれたのでしょうか? 何はともあれ岩城さんの第9自体珍しいので、いそいそとシンフォニーホールへと向かいました。

J.S.バッハ(外山雄三編曲)…トッカータとフーガ

 「ちゃらら〜ん、鼻から牛乳」で有名な(ホントか?)バッハのオルガン曲です。今回これを外山さんがオーケストラとオルガンで演奏するよう編曲したものが取り上げられました。内容はというと、まずオルガンが原曲の通り弾いた後オケが続きのパッセージをオルガンの響きを模倣して演奏するものでした。……ただそれだけ。最後の方でオルガンとオケで声部を分け合ったフーガが出ますが、時既に遅しの感がありました。
 トッカータの部分ではオルガンとオケが互いに応酬する形で良いと思うのですが、フーガでもそれではもったいなさすぎると思います。例えば低音がコントラバスで高音がオルガンとか、またはその逆とか、高音部をオルガンと木管が交互にやるとか、はたまた打楽器のソロを突然挿入するとか、アイデアはいくらでも出てくると思うのですが。
 またオルガンのストップ全開の轟音をオケが模倣する箇所があるのですが、ここは非常に大胆な不協和音が使われていました。これはなかなか刺激的だったのでしたが、京響の音がちょっと汚い感じを受けました。
 最後はかなりの大音響で終わりましたが、客席の反応はまあまあでした。それよりも10分ほどの演奏が終わってすぐに20分の休憩に入ったことにみんな戸惑っていました。

ベートーベン…交響曲第9番

 で、メインディッシュですが、岩城さんらしい速めのテンポでグイグイ進むものでした。全体的に音を短く切っていましたが、素っ気なさは感じず、ある程度の滑らかさを持ったものでした。しかし昔の岩城さんなら音がもっとピシッとしていたのですが、今回何となく音楽の流れがゆるい感じを受けました。岩城さんも年取っちゃったのかなあ……。顔も大分お爺ちゃん顔になっているしなあ。しかしこのゆるい音は一昨年の第9でも感じたので、京響のカラーかも知れません。(誉めてないですよ)
 ちなみに“vor Gott!”の所はいつもの岩城さんらしく、ティンパニは最後までffで叩いてました。

 次は合唱ですが、独唱陣と一緒に曲の最初からステージにいましたが、コーラスの3分の2を占める女声陣を見た瞬間イヤな感じになりました。こんな時はほぼ100%高音部がオーバーバランスで、ギャーギャーやかましくなって音の濁りが分かりやすくなるのです。また全体的に腰の軽い音になり、力強さや雄大さが減退してしまうのです。これはハインリッヒ・シュッツ合唱団のようなハイレベルの合唱団でも上手く行きません。合唱団々員にとって年に一度のシンフォニーホールという晴れ舞台にみんな出たいという気持ちは重々理解できますが、金を出す客の身にもなって欲しいものです。ここはひとつ涙を呑んで一番少ないパートに人数を合わせて欲しいと思います。(団員さんも入団料等を払っているのは知っていますけど)
 独唱陣はアルトの声が弱かったのを除くと今年行った3つの第9の中では一番良かったです。

おわりに

 曲が終わると大きな拍手が起こりました。そこで指揮者、独唱と一緒に合唱団を指導した人も登場しました。……あれ? どこかで見た顔だなと思いましたが、途中やっと思い出しました。奈良響の定期を振った藏野さんではないですか。ほう、こんな仕事もしてるんですね。藏野さ〜ん!

 総じて、なんか今一つゆるい演奏会でした。

 ものすごく期待していったのですが、その期待が満たされることはなりませんでした。さて、佐渡&大阪センチュリー朝比奈&大阪フィルではどうなることでしょうか。お楽しみに。


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