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大阪センチュリー交響楽団
「21世紀への第九」 in 2000

日時
2000年12月29日(金)午後4:00開演
場所
ザ・シンフォニーホール
演奏
大阪センチュリー交響楽団/京都バッハアカデミー合唱団
独唱
大岩千穂(S)、手嶋眞佐子(A)、田中誠(T)、黒田博(Bs)
指揮
佐渡裕
曲目
ベートーベン…交響曲第9番 ニ長調「合唱」
座席
1階C列24番(A席)

はじめに

 最近テレビの番組やCFに登場して、お茶の間の知名度も高くなっている佐渡さんですが、人気の上昇に合わせて年々チケットを取ることが難しくなっています。このコンサートも当日券の発売がなく、私もこのチケットを取るのに非常に難儀しました。

 佐渡裕・20世紀の交響楽展「ラプソディ・イン・ブルー他」で石田さんは書きました。
>ユタカスタイルとしてはほぼ形ができたと思うので、後はスコアの読みを深くして内面的成熟を目指して欲しいものです。そうでないと確実に彼はここで止まるでしょう。私は佐渡裕には世界の指揮界の頂点を極める一人になるだけの才能があると信じているので、彼の更なる前進を願わずにはいられません。
>年末の第9はそういう目で見ようと思っています。
 ……3ヶ月経ってみるとエライことを書いてしまったとちょっと後悔してしまいましたが、後の祭り。取り敢えず集中して音楽に没頭することとしました。

ベートーベン…交響曲第9番

 今回佐渡は指揮棒なしで指揮を行った。実際に拍を刻むことはほとんどなかったので、なくても一向に構わない様子だった。センチュリーは合わすのに大変だったようだが、このオケのアンサンブルの良さを信じたのだろう。
 テンポは全体的にゆったりと進められたが、年々遅くなって行っているような気がする。朝比奈ほどではないが、岩城よりは確実に遅いテンポ設定だった。
 何より一番驚いたことは各楽器の強弱における細かいコントロールだ。ある時はオーボエ、ある時はチェロと事細かに指示を出し、始終ただそれだけを行っていたかのような印象を受けた。しかしその細やかにコントロールされた声部は鮮やかに重要な旋律を浮かび上がらせ、「佐渡さん、ちゃんとスコア勉強してんだ」と思わず唸ってしまった。(ド失礼) 確かにこれだけ細かい指示を出すのなら、拍を刻んでいる暇はない。
 また各楽章が持っている性格も的確に表現していて、特に第1楽章を過度に劇性を煽るのではなく叙事詩的な雄大さを出そうとしていたのか素晴らしかった。また第2楽章では無理矢理喜ぶような鬱屈した歓喜が表現されていたし、第3楽章もゆったりと演奏し懐深い音楽が紡ぎ出されたことなど、日頃の佐渡からは想像できない姿勢がうかがえた。
 ただ第1楽章最大の山場である、展開部最後のティンパニロール打ちから再現部出現にかけて、どこに頂点を持っていくかなどまだ構成の把握に甘いところのあるのが課題として残っている。(佐渡はこの部分でティンパニが鳴ると同時に最大のボリュームを設定したが、朝比奈はもう少し後の完全に第1主題が再現した所で頂点を築き上げる。ティンパニが叩き初めてすぐはまだ第1主題は断片しか奏されておらず、この部分を強調してしまうとベートーベンが本当に意図していた劇的な第1主題の再現が陰薄くなってしまう。―――参考文献「こだわり派のための名曲徹底分析・ベートーヴェンの<第九>」金子健志)

 合唱の方は男声と女声がほぼ半分半分の理想的な配分だった。また独唱陣は第2楽章の後で入場してきて合唱の前に座った。これも理想の配置。
 第4楽章に入り、合唱が導入されると今までの佐渡ならほとんどコーラスにかかりっきりになったが、今日はまだオーケストラにびしびし指示を出し、きちんとオケとコーラスを対比させていて、オケを単なる合唱の伴奏におとしめることがなかった。これも素晴らしい。
 独唱陣は力感で合唱に負けていたが、そつなくこなしていたような気がする。(印象に残っていない)
 一方、合唱団は声の粒がそろってピリとした歌唱を聞かせていた。フーガの所では片方の旋律が聞き取りにくくなるという嫌いはあったにせよ、かなりの熱唱だった。
 そして音楽はクライマックスに向かってグイグイと熱を高めていき、プレスティッシモから一旦テンポが落ち“Freude,schoner Gotterfunken”(oはウムラウト付き)と歌うところでは思わず目頭が熱くなってくるのを覚えた。熱狂のコーダは頭の中が真っ白になった。

おわりに

 曲が終わると同時に爆発するような拍手と「ブラボー!!」の歓声が飛び交いました。佐渡さんは頭から汗を滴り落としながら歓声に応えていました。
 弦のトップと次々に握手を交わしていきます。第2Vnと握手をしたとき佐渡さんの汗がぱぁと飛び散ったのが見えました。(あとで第2Vnトップの2人、ヴァイオリンをハンカチで拭いてました)
 指揮者、独唱陣、合唱指揮者が何度も何度もステージに呼び出されましたが、佐渡さんがステージに向かって口パクで「バイバイ」と言って手を振ると、まだまだ会場中に熱気を残しながら演奏会の幕が降ろされました。

 総じて、なんのかんの言いながら最後はすっかりはまっちゃった演奏会でした。

 いや〜、やっぱ佐渡さんは良いわ。このレベルで他の演奏会もやってくれればもう文句なしです。それにしてもこの演奏会、「21世紀への第九」と銘打たれているのですが、21世紀になったらどうすんでしょうか? ぜひとも来年も何らかの形で続行して欲しいと切に願います。
 さて、この次の日は朝比奈&大阪フィルの第9に行って来ました。この1年に渡って進められていたベートーベンチクルスはどういった形で締めくくられるのでしょうか? お楽しみに。


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