万表(ばんぴょう)
嘉靖大倭寇の初期段階で対策にあたっていた武官。字は民望で寧波の人。指揮僉事だった父が早く亡くなったため17歳で職を継いだが、おおむね泰平の世であったため戦闘に参加する機会はなく、もっぱら軍需の輸送などに従事し、軍事・経済に関する鋭い意見を述べることもあった。

彼の晩年になって浙江沿海は密貿易が盛んになり、王直陳思盻を倒して海上を制覇すると、その情勢を詳細に記した『海寇議』を著して王直らの討伐を唱えた。この意見が受け入れられて王直の拠点・烈港が官軍に掃討されるが、それをきっかけに「大倭寇」の嵐が江南を襲うことになる。

「大倭寇」が起こると万表は家財を投げ打って決死の士を募り、少林寺の僧兵などもこれに参加、蘇州に倭寇が押し寄せた時にこれと戦っている。この戦いで万表は流れ矢に当たり、「我が家は代々力戦して国に報いてきたが、私一人は筆を持つばかりで戦う機会がなかった。晩年になって一つ矢傷を負うとは、また美なることではないか」と息子に遺書を書いたが命は落とさずに済んだ。

その後も倭寇の長期化につれて地元の貧民などがそれに加わって行くことに気付いて対策を具申したり、胡宗賢に王直説得の使者役に同郷の蒋洲を紹介するなど倭寇対策に尽力している。蒋洲が日本へ出発する前に亡くなったというから嘉靖34年(1555)没と思われる。

主な資料
「寧波府志」「キン県志」人物
万表「海寇議」
黄宗義「南雷文約」

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