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5月21日
東大SF研のファンジン、「すん」連載のラファティ「地球礁」(柳下毅一郎・訳)を読了。
邦訳のあるラファティの長篇(他は『悪魔は死んだ』『イースターワインに到着』『トマス・モアの大冒険』)では最もわかりやすい面白さだった。話が「プカの子供たちが地球人相手に暴れる話」と簡潔だったことが(訳文の出来不出来をおけばリズムが性に合ったことを除くと)楽しめた最大の理由かも。話の把握に汲々とせず、語りを楽しめたおかげでラファティをラブレーの流れで語る牧眞司の言葉を初めて実感できた気がする。なるほどこれは、「ガルガンチュア物語」を読んでいるときの気分に似ているかも。(5月25日修正)

5月22日
いつまでたっても、SFセミナー当日の雑記の続きを書く気力が発生しないので、ここで書くべき事を書いておこう。
既にさまざまな場所で公開されている情報であり、何をか今更の感がある話だが、秋口に河出から文庫で、年代別SF翻訳傑作選アンソロジーが出版される。1940年代から1990年代までの6冊。現時点では、収録作品の公式発表は成されておらず、具体的にどのようなものになるかはわからないが、編者が中村融と山岸真なのだからどんなに過剰に期待しても大丈夫だろう。ああ、今から秋が楽しみだ。

という話を山岸さんから伺ったのは、SFセミナー本会の休憩時間であった。僕が、スラデックの部屋に行かざるを得ないため、ライヴ・スキャナーの部屋に行けないことを知ってわざわざ教えてくださったのである。なんとありがたいことだろう。

そんな事があっただけに、ユタで聞いた、どこかのパーティーで山岸さんが「林は何故スキャナーの部屋にこなかったのか」と怒っていたという話が全く解せないのである。
# 最後の段はネタにするため一部事実を改変しています。

5月23日
「ぼうけん!メカラッパ号」の多分第3話を観る。おそらく毎回任務に失敗するのであろう、謎の悪役が登場。早速、失敗してくれた。また、謎のヒロイン、タライラもきちんと抜け駆けしてくれる。お約束の展開は気持ちいね。

5月24日
祝!対読売戦、今期初勝利。ただでさえ繋がりの悪い打線が、主力の故障でずたぼろになっている中、小宮山が打線の援護を当てにしない好投で、勝利をもぎ取った。工藤といい、小池といい、星野といい、今期パリーグから移籍してきた主戦級投手は本当に良い働きをしている。主にセントラルを観戦する者としては嬉しいことなのだが、パシフィックファンはどう思っているのだろう。

何はともあれ、対読売初勝利に気を良くして、SRW4を久しぶりに進める。クェス・パラヤ面をクリア。必要なフラグをすべてたて、無事ヤクト・ドーガを手に入れた時点で恐ろしい事実に気づいた。モビルスーツが余っている。育てているMSパイロット9人に対し、前線で使用する気になるMSは11機。F91に乗せるパイロットがいないなんて贅沢なプレイができるとは。世の中何が起きるかわからないね。

5月25日
今さっき読み返してみたら、21日の記述がかなり失礼に読めたので修正。元の文章の
(訳文の出来不出来をおけば)楽しめた最大の理由かも
の()内は「楽しめた」ではなく「最大の理由」にかかる。つまり、「『地球礁』が他の既訳長篇に比べて面白かった理由には、訳文のリズムが良かったことがあるが、それは考慮外とすると、話が簡潔だったことが最大の理由」ってのが書きたかった内容になる。
これはこれで、他の長篇の訳者に失礼だったりもするのだが、正直な感想と言う奴なので仕方が無い。

所用で検索をするうちに、ジェイムズ・H・シュミッツのファンサイトを見つけた。少し嬉しい。

先日、星間宇宙船に、「牧眞司さんのパネルで代島さんが宿題に出していたのはSF版異色作家短篇集ではなく、SF版魔法の本棚では無いか」という主旨の書込みをしたのだが、SF-OnlineやSFマガジンのレポートを見ても「異色作家短篇集」と書いてあるので不安になる。一応、代島さん本人から「魔法の本棚」の方が良いという確認は戴いたようなのだが。セミナースタッフが商業誌に書くレポートで「異色作家短篇集」と書いてあるんだから、発言上ではそうなっていたんだろうな。
星間宇宙船5月27日の鈴木力氏による書込みで確認ができた。発言上は明らかに「異色作家短篇集」だった、ということだ。そう言われてみればそんな気がしてきた。また、直後の代島正樹氏の書込みにより、「意図は「SFの本棚」であった」というフォローも戴くことができた。完全に的外れだった訳ではないようで、一安心。

古沢嘉通さんのサイトの5月25日付MEMOを読んでいたら、耳に痛い(目に痛いが正しいのか)話が書かれていた。
〈リストについて〉という部分だが、これがもう思い当たる節のあることばかり。(海外サイトの既存リストに邦訳の情報だけを加えて)「ネットで公開することに意味があるんだろうか」とか、「リストだけ作って、中身(原書)の評価をしないと(実際に読んでみないと)、恥ずかしいんじゃない?」とか一つ一つ胸に突き刺さる。ラファティだって少しずつ原書を集めてはいるけど、ほとんど読んでいないし、ましてや紹介なんて何もしていないものなあ。うむ、とりあえず読もう。

などと考えていたら、〈さらにリストについて〉で褒められていた。嬉しい。
って、そんなことで満足しちゃいけない。ラファティ関連リスト群が第一稿以来、たいして進歩をしていないことは、自分が一番よくわかっているのだ。利便性を高める方法についてはいくつも思いついているのだから、あとは実行するだけのはず。とりあえず、このタニス・リーのビブリオの完成度を遠くの目標において頑張ろう。

#というような決意表明はこの雑記上で周期的に行われているが、実現した例は極度に少ない。さて、これはどうなる。

5月26日
NACSIS Webcatで調べものをするうちに、上智大学の図書館にはThe Reproductive SystemとRoderick 2部作(共にスラデック)のドイツ語版が収蔵されていることを知る。なぜドイツ語版。
ちなみに東大文学部はThe new Apocrypha(スラデックのオカルト批判本)のPanther books版が収蔵されているらしい。ペーパーバック版も出てたんすね、これ。

給料日明けの金曜ということで、気持ち良く散財をするため高田馬場芳林堂へ。
まずは3Fでバース『レターズ』「世界の文学」のバックナンバー6冊を購入。他に文庫で欲しかった本が何冊かあったはずなのだが、どれだかわからなくなったので、とりあえず、これで許してやることにする。
つづいて5Fで植芝理一『ディスコミュニケーション 精霊編』2巻、あさりよしとお『宇宙家族カールビンソン SC完全版』11巻、『宇宙家族カールビンソン』1巻(以上アフタヌーンKC)、長谷川裕一『クロノアイズ』2巻(ZKC)を購入。おお、全部講談社だ。他にもいくつか欲しい漫画があったような気がするが、思い出せない。
金を使わない最善の方法は、欲しい本を1ヶ月我慢してみることかもしれない。それで欲しかったことを忘れる本は買わずにすむ。

帰宅後、買ってきた漫画をまとめて読む。
『クロノアイズ』は1巻に続き好調。例によって細かい不整合はあるが、勢いがあるから気にならない。今後は、更に話がでかくなるようで、期待が持てる。『マップス』の焼き直しにならずにどこまで行けるかが鍵か。
『宇宙家族カールビンソン SC完全版』は徳間版未収録の5話を含むSC最終巻。ちゃんと読めて嬉しいねという以上の感慨はない。
『宇宙家族カールビンソン』はアフタヌーン版の冒頭。キャプテン版では少しづつ集まってきたレギュラーキャラ達が一気に集まってきた印象がある。よく考えてみると、最強一家も、宇宙パトロールの面々も、ミドリ先生もいないのだからまだまだ大丈夫な訳なのだが、もう一通り出てきたような気がしてしまうのは、やはりトラとサブだかヤスだかトメだかのコンビが出てきてしまったからだろう。作者はそんなに気に入ってたのか、こいつら。
『ディスコミュニケーション 精霊編』は前巻以上ののりの良さ。なんといっても三島塔子がかっこよすぎ。飛行形態と砲撃形態に変形できるってのはなんぼなんでも卑怯だろう。

5月27日
とある理由で『ライズ民間警察機構』が必要になったので、神保町へ。この本、創元の最新目録上では生きているが、中野・高田馬場・西葛西をまわる程度では見つからなかった。創元の2年前の本を手に入れるのがこんなに難しいとは。

神保町到着後、まずは巷で噂の羊頭書房へ。いきなり『ライズ』入手とは何の関係も無い行動をとるあたり我ながらおちゃめだね。
羊頭書房は、狭い店舗の割には良い本が多い印象。特に、SFマガジンのバックナンバーの豊富さは目を惹いた。ただ、全体的に強気な値付けなので、不用意に行くのはお勧めしない。「SFマガジン」2号、4号、「SFの本」4号、ブラナー『衝撃波を乗り切れ』を入手して計9000円(税抜き)と書けば、価格の概要は掴んでいただけるだろうか。カスミ書房などと同様、どうしても見つからない本を入手する最後の切り札と考える方が良さそうだ。
なお、SFマガジンはあと13冊。ハヤカワHi!の揃いさえあれば秒読みなんだが。

続いて、本来の目的である『ライズ』を求めて三省堂へ。なんと、驚いたことに置いていなかった。まさか三省堂に無いとは思わなかったので少し焦る。
が、次によった東京堂には置いてあったので問題無し。『テレポートされざる者』を入手すべきかどうか悩みながら帰宅する。

なんだかんだで予定外に散財してしまったので、ついでに、近所のCD屋で「怪盗きらめきマン」のシングルを購入。フラランランデヴーの歌詞の素晴らしさに感動する。「おとといあの娘とブラウニー/きのうあいつとブライガー」って何だそれは。

深夜、星間宇宙船を見てみると、鈴木力氏の書込み(27日深夜)により「異色作家短篇集/魔法の本棚」問題がすっきり解決していた。鈴木さん、代島さんどうもありがとうございました。

5月28日
何を思ったか、急にガロイ『模造世界』(創元SF文庫)を読了。目新しい所はないが、しかるべく古びている感じで、楽しめた。
仮想世界を用いた市場調査システムを構築した技術者が、自己の現実性に疑いを抱くという大筋は、ほぼ同時期に出た『仮想空間計画』(創元SF文庫)でも用いられているほど一般的なものではある。『仮想空間計画』が新しめの科学技術的知見を利用して設定のリアリティを増すという方向で勝負したのに対し、こちらは徹頭徹尾SFであることで勝負している。落ちがありきたりなのは残念だが、その辺も含めたチープさが味というものだろう。とりあえず読書欲が減退しているときのリハビリには向いていた。
ところでこの作品、映画「13F」の原作なのだが、これが驚くほど同じ話。仮想世界が構築される理由など設定は、割と違うのだが、物語の流れは見事にそのままになっている。長篇1冊を、2時間の映画にちゃんとまとめた脚本家の腕は賞賛されてもいい。
あの映画で面白かったのは「仮想の30年代アメリカ」の美しさという美術の部分なんだけど。

5月29日
<異形コレクション>『宇宙生物ゾーン』を半分ほど読了。どこをどう読んでもSFとしか読めない作品が並ぶのは心地よいのだが、やけに古く感じた作品が多い。文体やアイデアはさほど古いわけでもないので、構造が問題なのだろう。「意外な結末」は基本とはいえ、<異形コレクション>という器で大量に読むと古くさく感じるのを否定できない。中でも石田一「破滅の惑星」には驚かされた。これは結末の付け方だけでなく、語り口も、アイデアも十分に古い。2000年にもなって、これじゃ駄目だよ。
読了部分(258ページまで)で1作を挙げるとすれば、山田正紀「一匹の奇妙な獣」か。短編として楽しんだとは言い切れないが、これを包括するという長篇に期待したくなるだけの力はあった。

5月30日
今日も今日とてSRW4。ロザミア出撃イベントの発生に失敗してしまった。そうだよ、ロザミィを出撃させるためにも、Sガンダム(or ヤクト・ドーガ)は手に入れちゃいけないんだ。4年前にプレイしたときも同じ失敗をしたような気がするぞ。こんな成長が無いことではいけない。そりゃ、4年前にプレイしたゲームのこんな細部を覚えているというのもどうかと思うけど。
このままだとロボット図鑑が100%にならないはずなので、スーパーロボット編でやり直すのとは別に、さらにもう1回やり直す必要が出来てしまった。いやすぎ。

5月31日
『宇宙生物ゾーン』読了。後半はあまり古さを感じなかった。めでたい。
全体を通じて最も面白かったのは、堀晃「時間虫」。名著『マッドサイエンス入門』で紹介されたDitch Sunshineの"EMIT"によく似たアイデアの短編。てなわけでアイデアの独創性には若干の疑問があるが(笑)、排泄物が腸壁を遡る描写などの迫力はさすが。ショートショートのページ数であっさり終わってしまったのが残念だ。
(笑)はDitch Sunshineが誰かを理解した上で解釈すること。
他では、ひかわ玲子「話してはいけない」と、竹河聖「古いアパート」を楽しく読んだ。

録画しておいた「きらめきマン」8、9話を観る。大ネタそのものは良さそうなのに、料理の仕方が肌に合わない。雰囲気には慣れたはずなので、この感想は自分でも不思議。2週間も間を空けたのがいけなかったのだろうか?

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