過去の雑記 00年 6月

雑記のトップへ

前回へ
6月11日
現実に直面した途端にえらい目に遭う。

当然のように野球も現実を忘れさせてくれない。阪神相手の2連敗で借金は3。首位中日とのゲーム差はデッドラインに近づきつつある。オールスターまで、せめて、オールスターまでは夢を見させてくれよう。

やると断言したことは予定より数日遅れる可能性が高いです。と、誰にともなく言ってみる。

6月13日
テリー・ブルックス『妖魔をよぶ街』(ハヤカワ文庫FT)読了。現代アメリカの田舎町を舞台とした、少女の成長譚。<言霊の騎士>ジョン・ロスを主人公に、「言霊」と「虚無」の戦いを描くシリーズとのことだが、ジョン・ロスは能書きを垂れるばかりで役に立たない。
メインのキャラは全員攻撃魔法の使い手だというのに、デーモンは人に悪意を吹き込んで行動を操る能力、ジョン・ロスは未来を夢見る能力、と渋い技ばかり使うため、全体の印象は実に地味。来月にはストーリーを忘れている自信がある。
でもまあ、デーモンが策士だったので、それなりに満足はした。

6月14日
定時間日なので早目に帰宅。特にすべきことも無いので寝てしまおうとしたのだが、どうしたことか眠れない。しばし努力した後、きっぱりと諦めて睡眠誘導のため本を読みはじめる。
てなわけで、田宮俊作『田宮模型の仕事』(文春文庫)をいまさら読了。単行本版同様面白かった。特に、戦車取材で世界中を駆け回る4章と、ポルシェのプラモのデザインのため新車のポルシェを完全にばらす5章は出色。いわゆる社長の伝記とは一線を画す魅力がある。やはりマニア道を極めた人は違う。
イマイやバンダイに比べるとタミヤのプラモは数を作ってないんで思い入れはないはずなのに、「タミヤニュース」「MMシリーズ」「ウォーターライン」なんて言葉が出てくるとそれだけでクラクラきてしまう。戦車/自動車モデラー以外も惹きつける力は、さすが世界のタミヤというべきか。10何年かぶりに、ブラモを作ろうかと思わされてしまったよ。

6月15日
通勤途中に、ターナー『半熟マルカ魔剣修行!』(ハヤカワ文庫FT)読了。すでに世間で散々言いふらされているけど、本当に内容とマッチしない包装(分類/タイトル/帯/カバーアート/裏表紙作品紹介)だね。ここまで意図的なミスディレクションをされると嬉しくなってしまう。
ジュヴナイルスペースファンタジー風の包装の中身は、ほぼSF。世界の危機よりも個人の成長に重点が置かれてしまうあたり、個人的趣味とはややずれるが、それなりに楽しめた。最近の文庫SFの、軽エンターテインメント路線諸作の平均よりは少し上といった印象。間違ったものを期待しなければ腹は立たないだろう。

会社からの帰り道、無性にカレーが食べたくなったので、閉店15分前だというのに高田馬場芳林堂に寄る。マンガを見るだけのつもりだったのに、運悪く、柴田元幸監訳の『英語クリーシェ辞典』なんてものを見つけてしまう。これも運命と諦めとっとと購入。
内容は、題名の通り。クリシェをただ並べるだけでなく、「災難に遭った人を慰める目的でしばしば口にされるが、言われた当人はその災難の後始末に忙しく、そう言われても苛立つばかりということも多い」などと言葉を批評していたり、「特に、陳腐な言い回しを好む人や、何事についてもひとこと言わねば気の済まない人に多用される」などと使われ方を明示していたり、読む辞典として優れている。また、用例も十分にあり、実用としても使えそう。良い買い物だった。

6月17日
週明けに直面する現実に対する茫漠たる不安を抑えるため、撮り溜めていた「六番目の小夜子」をまとめて観る。こういう心理状態だと映像が一番没入できるな。
「小夜子」最大の見せ場、学園祭の芝居は、ほぼ原作通りの展開。正直、生で見るとこんなものかという落胆はあるが、こんなものだろうと納得も行った。

夕方からユタ。最終的な参加者は大森望、柏崎玲央奈、小浜徹也、堺三保、志村弘之、添野知生、高橋良平、林、福井健太、藤元直樹、三村美衣、柳下毅一郎(あいうえお順、敬称略)。一部この記述と矛盾するように見える方もいるが、事実なので仕方が無い。

帰宅後、「六番目の小夜子」の続きを今日の放映分まで。「ホラー」と「青春小説」と「ミステリ」の間でふらふらするのは原作通りだとしても、秋と由起夫の設定を変えてまで、家庭問題を扱おうとするのは感心しない。このエピソードが入り込んだせいで、「小夜子」が第一に「学校の物語」であるという前提が崩れてしまっている。人間ドラマを組み込むこと自体は否定しないが、「学校とは何か」というテーマに奉仕するドラマに絞るべきだったのでは。

6月18日
明日直面する現実に対する確固たる不安を抑えるため、フィリップ・K・ディック『シビュラの目』(ハヤカワ文庫SF)を読み終える。
冒頭の2作をSFMの6月号で読んだときには感心しなかったのだが、まとめて読んで思い直した。これはこれで味がある。確かに、整合性を気にしながら読んでいると違和感を感じる部分(「宇宙の死者」のラストとか)は多い。が、一度そういう物だと思ってしまえば、突拍子もない展開も含めてユーモアと、哀調を楽しめるようになってくる。読んで損はしなかったと思う程度に面白かった。
なお、集中のベストは、ガムの自動販売機が広まりつつあるが故に北カリフォルニアに対する核攻撃を決断したコンピュータの故障を探す「聖なる争い」。話が軸となるアイデアのまわりにまとまっていて、読みやすかったのがベストとする理由。僕もまだ、プロットが破綻しているが故に作品を愛することが出来るほど、SFにすれてはいないらしい。

横浜がやっと連敗脱出。目標はオールスターまでに5割復帰なのだが……。

6月19日
結局、マシントラブルという現実は、専門家でないと対応出来ないものだった。偶然、別件で来てもらうことになっていた専門家に頼んで万事解決。実に喜ばしい。それもこれも日々の努力の賜物だろう。なんだかよくわからないけど。

気をよくしてベア『斜線都市』を読みはじめる。読みづらい……。
文体の硬さはがまんするから、キャラ表くらいはつけてくれないものか。文体が硬いためスピードがのらないというのに、複数視点で多数のキャラが登場すると話に入り込むまでに時間がかかり過ぎる。電車で30分ずつ読むには辛すぎだ。
話の遅さは前作『女王天使』と似たり寄ったり。病理を描かれるのが、個人や社界ではなく、文明である分、こちらの方が面白そうではある。まあ「『女王天使』よりは面白い」なんて、褒め言葉でもなんでも無いが。

6月20日
どうしても本屋に寄りたくなったので、作業を早めに切り上げて高田馬場芳林堂へ。いまさらの田宮模型・編『田宮模型全仕事 ビジュアル版1』(文春ネスコ)と、唐沢なをき『けだもの会社』2巻(SCオールマンSpecial)を購入。

帰りがけに『けだもの会社』を読む。んー、制約の中でギャグを展開する分『電脳炎』よりマシなのか、キャラに頼る所が大きい分『電脳炎』にも劣るのか。どっちにしろ、『ホスピタル』とは勝負になっていない。
とはいえ、さすがは唐沢(弟)。「カカシは土中にひそみスズメを捕まえて体液を吸ういきものである」や「ああどうしよう 今日の取引先の部長はミリタリーマニアでエコロジーおたくでエスニック料理しか食べないギャンブル狂いのサッカーファンでおまけに金髪美人の人妻の下着を集めるのが趣味のフェチ野郎だからなあ」など秀逸なネタは随所にある。また、各話副題の地口も、唐沢(兄)日記のようで良い感じ。これで犬山とトキ課長さえいなければ。< この辺が本音らしい

帰宅後は帰宅後で『田宮模型全仕事』を眺める。模型写真の美しさ、タミヤニュースの抜粋を読む楽しさなど、さまざまなレベルで楽しめる1冊。ではあるが、なによりも強い印象を与えるのが懐かしさであることは否定し難い。写真を眺めているだけで、これは作った、あれも作ったという思いが問答無用で沸き上がってくる。ああ、確かに作ったよ。土のうセットに、ジェリカンセット。テントセットに、イギリス野戦救急兵セット。そして少し豪華な(気がする)ドイツ将校乗馬セット。何もかも皆懐かしい。
懐かしさを喚起すると同時に、模型を作りたいという気持ちを掻き立てる強い力を持っている。資料としても、広告としても素晴らしい作品。

しかし、僕は、なんでこんな(↑)セットばかり作っていたんだろう。印象がないとかではなく、本当に一両たりとも戦闘車両を作らなかったよな、確か。

次回へ

このページのトップへ