過去の雑記 00年 6月

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6月21日
定時間日で早めに退社した割には予定の作業は思うように、というよりはまったく進まず。どうしたもんか。

「きらめきマン」を見る。なんぼなんでもこれは得る所が無いのでは、という気がしてきた(いまさら)。3ヶ月かかってここまでということは、ここまでの作品なのだろう。いまさらタイマー設定を変えるのも面倒なので録り続けるつもりだが、まめに見る気は無くなった。

6月22日
ちょっと油断しているうちにフレックスぎりぎりの電車にも、本当にぎりぎりの1分後の電車にも乗り遅れ、全くもってぎりぎりの電車で出勤。30秒遅かった。「もっと電車よ真面目に走れ」

アンソロジー『震える血』(祥伝社文庫)読了。エロティックは良いんだが、あからさまなどんでん返しがある話ばかりでは飽きがきてしまう。89年の刊行ならもう少し鋭い作品が集められなかったのか。えーと、とりあえずガートン「お仕置き」の迫力とマキャモン「魔羅」の頭の悪さは評価できた。

『斜線都市』は上巻まで。驚くほど『女王天使』と作りが似ている。て、ことは駄目なのかも。『火星転移』のように何かの間違いで面白い部分があるかもしれないという儚い期待を抱きつつ、粛々と下巻を読もう。

6月23日
泥沼、横浜は読売相手に二度逆転されながらも奇跡の勝利。読売の貯金はほぼ横浜1チームから奪ったものなので、ペナントの興味を持続させるためにも、読売に勝つ義務があるのだ。がんばれ金城、がんばれ多村。しかし、この二人が揃ってスタメンとは、開幕前には予想もしなかったよ。正直、金城の三塁はまだ不安いっぱいなので、なんとかして貰いたいところであるよ。

『斜線都市』読了。結局、「『女王天使』よりは面白い」の域を一歩も越えることが出来ていなかった。これなら、90%以上の部分においてさらに退屈ではあっても1点破天荒な部分のある『火星転移』の方が百倍マシだ。社界の設定は割と楽しいのに、それがまったく活きていない。根本的に人を書き分ける才がないのだから登場人物を絞るべきだったのだろう。何もかもを書こうとする姿勢それ自体は評価出来なくもないが、人には出来ることと出来ないことがあるのだ。

ふと思い立ち、EmEditorのシェア版を試す。矩形コピー機能など便利な機能はあったものの、全体の使用感が今一つ肌に合わない。面倒な手続きを踏んで(*Niftyのパスワードを忘れたので、Nifty経由振り込みが出来ない)感覚に合わないソフトを使うよりは、機能は限定されても慣れ親しんだフリー版の方がよかろう、と結論しシェア版をアンインストール……したら、フリー版を再インストールするはめに。関連付けがどうなるか、までは考えてませんでしたね。で、フリー版を再インストールしたのだが、どうも雰囲気が変わったような気がする。気のせいかも、と思いながらも色々試したが、結局そもそも変化したかどうかすら確かめられなかった。違和感それ自体は、そのうち無くなるとは思うが、無駄に費やしてしまった作業時間は結構痛い。

6月24日
ダサコンスタッフ会議があったので、それを見物(今回はスタッフではなく見物人なのだ)するため渋谷へ。集合場所のBook 1stで吉田音『Bolero』(筑摩書房)など数冊を購入。いくら雨降りとはいえ、プラスチック袋に入れた本を紙の手提げ袋に入れ、さらにそれ全体をビニール袋で覆うというのは過剰包装では。いや、便利だしありがたかったんですが。
全員が揃った後、デパート最上階の食堂で会議を見物。何やら色々決まっていたようである。メールのやり取りだけでも話は進まなくもないが、顔を揃えて話をする方が圧倒的に速いというのは否定し難い事実のようだ。生会議だと、メールだと書けないような煮詰まっていないアイデアでも、提出して人のリアクションを得ることが出来るというのが重要なポイント。あ、でもそれだけならチャットでじゅうぶんなのか。
2時間そこそこで決められるところまでは決まった感があったので、抜け出して帰る。そのままいれば飲み会になって、多分徹夜カラオケだったりするんだろうとは思ったが、翌日中野君とゲームをする予定があることを考え自重したのだ。なんて自制心が強いんだろう。> おれ

帰りがけにSFM8月号のスラデック特集部分を読了。エッセイ2本、邦訳作品解題、作品リスト、ほぼ全てにわたって、SFセミナーの合宿企画の成果が利用されている。これだけ再利用されているのだから、あの企画は成功だったのだろう。< その場での受けの方が重要です
スラデックの特集としては過去最大のものだけあって、収録作品はパロディ、不条理、論理、ペーソスというスラデックの4要素をあますところなく伝えている。このうちの「不条理」を代表する「マンサード・エリオットの短く幸せな妻」は不条理なので何が書きたかったのかさっぱりわからないが、他はすんなりと楽しめた。造語センスにまでディックらしさが横溢する「宇宙靴セールスマン」も悪くないが、私的ベストはやはり「月の消失に関する説明」。胡散臭い論理の連続で自閉症的な世界に閉じこもっていく様は、完璧なまでの心地よさ。もう少し胡散臭ければ論理に価値が無くなる。もう少し論理的であれば主人公の心理から遊離する。スラデックは奇跡的なまでのバランス感覚で、胡散臭さを制御している。非常に頭の良い作家であることを再確認しつつ、受けるわけがない作家であることも再確認した。

一旦帰宅後、御近所の方のお誘いに甘え、割引セール中の焼き肉屋へ。名大SF研OB-MLでの飲み会も、スタック会議流れの飲み会もけってこちらに参加した理由は「ただ焼き肉が食いたかった」だけではない。万が一、その後のカラオケがあっても、西葛西なら夜中に帰れるという深遠な計算があってのことだ。なんて計算高いんだろう。> おれ

こんなに自制心が強く、計算高いのだから、気がつくとわずか3人で朝まで歌っていたというのはきっと何かの間違いに違いない。間違いであってくれ。あってくれってばよう。

6月25日
まあ、朝になってしまったものはいまさらどうしようもない。とりあえず衆院選の投票にいったあと若干の仮眠を取る。このところ対戦相手には不義理を重ね続けているような。

昼前に中野君が到着。プレイ時間が莫大な点、ゲームのセットアップに時間がかかる点、双方ルールを忘れはじめているというのに日本語ルールが存在しない点など、いくつもの不安を残しつつ、"Chariot Lords"を始める。本来4人用のゲームであり、せいぜい3人用のデザインしかされていないのだが、敢えて二人でプレイしてみる我々の勇気。褒めるものこそあれ、貶すものはいないに違いない。
とりあえず利害関係が適当に配分できそうな、赤(アッシリアなど)+白(ヒッタイト、ユダヤなど)と青(エジプトなど)+黄(カルデアなど)に分けてプレイ。序盤、奇跡的なプレイ順もあって僕がプレイする赤+白が大きくリードするが、青黄の地中海岸ユニットが出そろってくると状況は一転。アッシリアのまずいプレイなどもあって六ターン(全十ターン)終了時点で百点以上の大差がついてしまった。獲得可能VP的には逆転も決して不可能とは言えない状況ではあったが、残り時間を考えるとプレイを終えることが出来るかどうか微妙だったので、投了する。一応、全力は尽くしたつもりだが、正直睡眠不足による集中力の欠如が影響した面はあったかもしれない。中野君には申し訳ないことをした。
二人プレイをやってみての結論は「出来ないことはない」というところ。シリア〜小アジア方面のバランスが若干悪いように感じたがこんなものかもしれない。最大の問題は、プレイ時間だろう。慣れてプレイしても二人だと、十時間弱はかかりそうだ。これでは日曜にプレイするのは辛い。

晩飯を食いに行くついでに近所の古本屋を数軒まわり別れる。何もいまさらアンタレス二部作を買わんでもと思うがどうか。> 中野君

再度仮眠を取った後、選挙結果を眺める。サミットを森で乗り切るのは日本にとってあまりにもリスキーだと思うので、今回の結果はやや不満。努力が足らんぞ、民主。
そんな中、名古屋の民主完全勝利はちょっと痛快。民社王国愛知健在なり。いや、当選した中に民社党出身議員がいるかどうかは知らんけど。

6月26日
そういえば書くのを忘れていたがSFMに署名記事(スラデックの作品リスト)が載った。フォームは牧眞司さんのものだし、それに合わせ込む作業はSFM編集部でやっていただいたものだし、自分のリストという権利があるかどうか微妙な気はするのだが、内容に間違いがあった場合の責任は僕にあるのだから、と名前を出していただくことにした。それでも執筆者紹介に載る権利までは無いような気がするけど。

なお、このリストの元の形はこんな感じ(S-JISテキスト)。作品リストが時系列順か、アルファベット順かという点が最大の差。眺めたり読んだりしたりする分には前者の方が便利だが、ある作品の邦訳の有無を探すなどの場合には後者の方が便利なわけで、両者は補完的なものと考えるべきだろう。というわけで、SFM掲載版の使い勝手が悪い場合は、上記リンク先のテキストファイルをご利用戴きたい。

6月27日
ふと思いついたのだが、「舌禍の(代)議士」というのはどうか。

クラーク『失われた宇宙の旅2001』から「前哨」を読む。こんな話だったっけ?テーマは覚えていたが、ストーリーも語り口も全く覚えていなかったという事実に愕然としてしまった。思わず作品集版をチェックしてしまったが、訳が違うだけで同じ作品だった。おかしいなあ、こんなに記憶力が悪かったはずはないのに。

6月28日
横浜は抑えの乱調で、勝ち試合をむざむざ捨てそうになりながらも、踏みとどまっての5連勝。薄氷の勝利は良いんだが、おかげで一月ぶりの勝利を失った、斎藤隆はあまりにもかわいそうである。だからサヨナラの歓喜のシーンにいけしゃあしゃあと参加していないで、少しは反省していたまえ、福盛。

6月29日
諸般の事情で、宇宙ステーション利用計画ワークショップの特別講演を聞く。面白い。

一本目は、京都国立博物館館長、中川久定氏による「人間は宇宙を目指す 〜夢想のユートピアから現実の21世紀へ〜」。ユートピア文学に見る飛翔/宇宙のイメージという話題から、宇宙ステーションを利用した心理学実験に繋げる力技は、さすがに強引にすぎるのではとも思うが、繋げられる各々と話題はいずれも興味深い。特に、前段で紹介されたヴノワ・ド・マイエ(?)の「ティリヤド」(1748)はステープルドンもかくやという壮大な宇宙論で、実に面白そうだった。
惑星が水分を失っていくうちに可燃性物質に火がつき、恒星となる。恒星は渦を引き付け、太陽系を形作る。太陽はやがて燃え尽き、渦に引き寄せられて水を湛えた惑星となる。惑星と恒星の終わりなき輪舞。
国書あたりからの刊行を希望……、と書こうと思いつつ調べてみたらマイエのユートピア小説を収めた本を見つけてしまった。うーむ、実物を読むのは幻想が壊れそうで嫌だなあ。

二本目は、京大教授、佐藤文隆氏による「ISSの新たな利用の展開について 〜物理世界の拡大〜」。万有引力定数は、普遍定数で最も精度が悪いという話題から、Gは誘導量ではないか、時間変化をしているのではないか、などの異説を紹介したり、重力下の結晶では陽子が電子雲の中心から垂れ下がるか(概算ではボーア半径の10-22倍となったらしい)、自由落下する電子から電磁波は出るか(不定だそうな)、地球上で重力による空間曲率は見えるか(時間軸方向と空間方向を比べると曲がっている)、ISS中の水滴は潮汐力で引き伸ばされるか(直径6mの水滴なら、それとわかる歪みを示す)などなど、さまざまな思考実験を行ったり。一見宇宙ステーションとは何の関係も無い話題を、「宇宙ステーションの役割は、これら思考実験に背景イメージを与えるだけでも価値がある」とまとめるのだからすごい。このあとの、野心的なISSミッション例を紹介し、民衆レベルにおける科学の役割(「腑に落ちる快感」を与えるための娯楽としての科学)を訴え、科学者の自信の再生を主張し、専門分野に特化することの危険性を説くという話の流れも見事。さすがは佐藤文隆。

いや、しかしこのワークショップで、こんな面白い講演が聞けるとは。嬉しい不意打ちだった。

6月30日
久方ぶりに明日を気にすることなく早目に帰宅。あれもやろう、これもやろうと考えるうちになにもせず一日は終わる。なべて世はそんなもの。
せめて翌日の山本正之コンサートに向けて体調を調えておくため、とっとと寝ることにする。

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