過去の雑記 00年 7月

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7月21日
晩飯を食いに入った王将でふと思ったこと。この1週間で、いちばん栄養バランスが良さそうな食事がこの店のメニューというのは、けっこうやばいことでは。

SRW4の42話「オルドナ=ポセイダル」のCパターンをプレイ。切り捨てるルートだと思うと実に楽にプレイできる。「宵越しの銭は持たねえぜ」とばかりにユニットを改造し、「経験値のことなんざ気にするけぇ」と効率だけを重視した用兵を行い、まだあと3アマンダラは倒せる程度の余力を残してクリアした。そうか、次の面のことさえ考えなければこんなに楽なゲームだったのか。

7月22日
なぜか部屋にあった(ありがとうございます、と誰にとも無く言ってみる)ビデオでチェックしそこなっていたアニメを見る。「スーパーミルクちゃん」には感心することしきり。全般に既視感の使い方が実に上手い。中でもOPは見事。昔のアニメのOPをつなぎあわせた映像には元ネタ追求欲をいたく刺激された。あー、あの、東京タワーに腰掛けた二人に向かってカメラが回り込むOPって何だっけ。

ふと気がついたらオールスターをやっていた。お察しの通り、最近野球は見ていなかったわけだが、いつのまにかR・ローズは首位打者になっていたらしい。他の野手陣も石井琢が.29台、鈴木尚も.29台、谷繁で.26台と軒並み率を上げている様子。それでああまで勝てなかったとはなんだかなあ。得点効率の悪い野球はマシンガン打線の売りなのだから仕方ないとはいえ、もう少し何とかならんものか。
まあ、フレッシュオールスターでは湘南組が活躍していたようなので、後半戦に期待しよう。目標は貯金4で3位だ。

7月23日
やっとのことでローレンス・ノーフォーク『ジョン・ランプリエールの辞書』(東京創元社)読了。大傑作。「エーコ+ピンチョン+ディケンズ+007」という大盤振る舞いの帯も、十分納得できる出来。

18世紀イギリスはジャージー島に住む青年、ジョン・ランプリエール。古典文学の豊穣さに耽溺する彼が、熱中のあまりローマの神々の幻影を見た事からすべての歯車は動き出す。彼が記すことになる1冊の固有名詞辞典と、全ヨーロッパを揺るがす大事件をつなぐものとは一体何か。

まず、何より目を惹くのが、その饒舌な筆致だ。その素晴らしさは、例えば第二章「ロンドン」の冒頭数ページを読めばわかるだろう。1787年当日の実際の資料から再現されたというロンドン市街の描写からは、まさに現実のものであるかのようにその喧騒が伝わってくる。ロンドン港に居並ぶさまざまな船舶、町の居酒屋で繰り広げられる乱痴気騒ぎ、大資産家の邸宅に並ぶ古典文学の数々など、豊富な知識と大量の資料に裏打ちされているらしい細部の描写は、本書の大きな魅力となっている。

また、饒舌な筆致で描かれる背景の中に置かれた登場人物達も魅力的だ。浮世ばなれした知識だけは豊富だけど、世間知らずでお人好しの愛すべき眼鏡くん、主人公ジョン・ランプリエール。絶世の美女、崇高なる女神として彼のまえに登場するヒロイン、ジュリエット・カスタレイ嬢。謎の協力者としてランプリエールをさまざまに翻弄するトリック・スター、セプティマス・プリシープス。その他、敵にしろ、味方にしろ、ただの脇役にしろ、すべての人物が自立した存在感を持っている。

そして、それら素晴らしい背景と、人物達によって描き出される物語がまた素晴らしい。緊密に張り詰められた伏線から決まる豪快な真相は、読み手を呆れさせること請け合いだ。さまざまに提示されていく謎が、その豪快な真相の元に次々と解けていく快感は何物にも代え難い価値がある。

確かに、読みはじめるには勇気が要る。ピンチョンの難解さは無いとはいえ、二段組600頁にわたって詰められた饒舌さは、読み手に大きな覚悟を要求する。しかし、いざ読みはじめてしまえばそんなことは気にならないはず。読み終わるまでの数日ないし数週間。至福のときが味わえることだけは確実だ。
過去読んだ<海外文学セレクション>(全体の1/2くらいか)でもダントツのベスト。

7月24日
<SFバカ本>『リモコン変化』(廣済堂文庫)読了。読む価値無し。

普通どんなに酷いアンソロジーでも一、二作は読むべき作品があるものだが、驚くべきことにそれすらない。最上のレベルの作品で、「読んでもいい」程度ではアンソロジーとして失格だろう。

『リモコン変化』の一月前に出た『彗星パニック』は読むべき作品が複数あったのだから、一部とって置けばよかったのに。

7月25日
給料日だったので、帰りに高田馬場芳林堂に寄りいろいろと買い込む。ハードカバー2冊、文庫4冊、マンガ単行本1冊、同文庫1冊、雑誌3冊買って、買うべきと感じるものの1割も買っていないのだから、始末に負えない。これで、半分は積読になるのかと思うと余計に……。

帰りの電車で、今日買った『落語百選 秋』(ちくま文庫)から「死神」を読む。なるほど、この噺だったのか。先日『宵闇眩燈草紙』を読んで以来の疑問が解消した。これでやっと、人から「『布団をひっくり返す』ってなんですか」と聞かれた時に、安心して嘘八百を並べ立てることが出来る。よかった、よかった。

帰ると、Zero−CONのプログレス3号が届いていた。今回はファンジン大賞授賞式も、星雲賞授賞式も一企画として他の企画と重なる時間帯にある。SF大会という場は、ついに星雲賞すらも共有できないほど肥大化してしまったようだ。SFの浸透と拡散、ここに極まれり。
# SF大会の内部で拡散してどうする。

wiredでこんな記事を見つけた。ベンフォードは自称世界最初のコンピュータウィルス作者らしい。これから、ベンフォードに言及する時は、「世界で最初にウィルスを作ったベンフォード」と呼ばなきゃいけないな、きっと。

7月26日
目が覚めたら午後になっていた。特にこのような事態に陥る理由が見当たらず、まったくもって解せないのだが、だからといって会社に行かずに済むわけでもない。既に、全日有給を取る必要がある時間帯になってはいたが、会社に行って20分ほど作業をして帰る。ああ、有給を取った日にスーツを着ちまうとは、一生の不覚。

どうも出だしが悪かったかその後もテンションが上がらず。なんだかうだうだして一日を潰してしまった。やったことというと、SFMをぱらぱらと眺めたことと、『落語百選』を読み進めたことと、水着を買いに行ったことくらいか。我ながらあまりに日常でしかない日常に愕然とするような一日だった。

7月27日
所用で国際展示場駅近くのビルに向かう。途中なぜかダフ屋を見かけた。どうやら「21世紀夢の技術展」のチケットを取り扱っているらしい。……ダフ屋が出るほどの催しだったのか。
ああ、なんか行きたくなってきたな。どうしよう。

昨日作った麦茶を飲む。むぅ。三ツ矢サイダーの空きペットボトルにいれた麦茶は、三ツ矢サイダーの香りがするなあ。ファンタグレープの空きペットボトルに入れた方はどんな味がするのか、かなり不安。

ところで、一昨日の記述は実は何の裏付けも取っていない気分だけの記述なので信じないように。僕が参加した大会(はまなこん、CAPRICON、やねこん)では、星雲賞授賞式はオープニングないしエンディングの一部だったように思うが、参加していない大会の方が圧倒的に多いので、中には今回のような扱いの大会があっても不思議ではない。裏付けも取らずに偉そうな傾向分析をするのはどうかとも思うが、なんとなく無責任なことを言ってみたかっただけなので別にいいのだ。< 良くないです

7月28日
昼休みに寄った近所の書店でハヤカワ文庫の最新目録を見つけた。3冊ほど適当な本を見繕い買うついでに目録を貰う。さまざまな言葉の語源を集めた本だの、各地の迷信を集めた本だの、どうでもいいような本をこうやって買ってしまうから積読が増えるのだな。

プロ野球は後半の第一戦。横浜は、ホームランでしか点が取れなかったとはいえ、なんとかヤクルトを下して勝ち星スタート。広島が敗れたため、いきなりAクラスに浮上した。Aクラスとは言っても借金3。首位とのゲーム差が8.5という事実を考えると、今年度のペナントは望むべくも無いわけだが、できれば一度くらいは読売を驚かして欲しいところ。そのためにも、がんばれ中日。

7月29日
今日からついに夏休み。あれもやろうこれもやろうと計画だけは小学生の夏休み計画のように立派だが、きっと2割も達成できないのだろう。いいんだ、わかってるんだ、どうせ僕なんて。< 見苦しい

少なくとも最低限の成果はあげようと、昨日貰ってきた目録をチェックする。前回派手に落ちただけに今回はほとんど無いだろうとたかをくくっていた文庫SFの目録落ちだが、意外に多かった。
今回の目録落ちは以下の16作23冊。
大半は、2年間の勤めを終えた初版売り抜け型の新刊と、新刊分と入れ替わるシリーズ物の旧刊で数の割には印象が薄い。その点からすると、数はともかく中身は予想通りといえる。ただ<デューン>がついに目録から消えたというのはインパクトが大きいかも。これだけのメジャータイトル(国内海外共に、オールタイムベストの常連だ)すら目録落ちするわけか。おそるべし時の流れ。
なお、今回の再録はソウヤー『ゴールデン・フリース』と、ベア『タンジェント』の2作。新刊と合わせると18作22冊の追加、差し引き2作増の1冊減となった。

7月30日
「海だ、海です、海だっ、なもぉ〜〜ぅ」「海になったら、はじめましょぉ〜ぅ」というわけで新間正次です。< 誰がわかるのだ

というわけで海である。この前行ったのが大学4年の夏合宿だからかれこれ6年ぶり、ってそんなに遠ざかっていたのか。茅ヶ崎はどうだ、伊豆の方が、いっそ新潟は、という二転三点する議論の末、我々が選んだ海水浴場は、横浜海の公園。「横浜市内の海水浴場」という響きに一抹の不安を感じつつ、南に向かう電車に乗った。東京駅を出た時には街場に出かける家族連ればかりだったが、横浜駅を過ぎる頃から次第に雰囲気が変わり始める。待ち合わせ場所の新杉田駅に到着した時にはすっかり海水浴になっていた。よーし、良い感じだ。
新杉田駅に集まったのは、細木さん(8)、田口さん(9)、林(10)、住田(11)、堀川(12)の5人(括弧内は名大SF研暦での入学年度)。30も間近の男ばかり5人で海水浴というのも色気の無い話である。
モノレールに乗ること20分、たどりついた海の公園は、人口密度も適度(座る場所に困らない程度)、設備も適度(売店、コインロッカー、無料シャワーと有料の温水シャワー)、海の透明度も我慢できる程度(飛島には劣るが内海よりは数段マシ)、というなかなかお手頃な浜だった。これは拾い物。我々は喜び勇んで海に入って行った。そして、現実を知ることになる。そうそう、うまい話は転がっていないのである。
行けども行けども水深が深くならない。水際から50mは離れたかというのに、まだ膝まで水が来るかどうか。遠浅といっても限度というものがあるだろう。これは、泳ごうとするとかなり大変なのではないか、そんな思いが皆の心に浮かびはじめたとき、住田が叫んだ。
「クラゲだ!」
そう、いつのまにか周囲には大量のクラゲが浮かんでいる。平均で、3平方メートルに1杯というところか。やっと、胸元まで水が来たというのに、これではとても泳げたものではない。撤退だ。われわれは拠点を変え、別方面から遊泳を試みることにした。
途中、砂浜では自転車に乗らないように、という謎の注意を受けつつ(なぜこんなところまで折り畳み自転車を持ってくるか。> 堀川)30mほど南に移動。しかし、クラゲの思い出は消し難く、しばしSRWについて語り続けた。
30分も話し込んでいただろうか。やっとここに来た目的を思い出したので、海に再度勝負を挑……み失敗。クラゲは減ったがその分浅くなっていた。遊泳区間を区切るブイまで歩いて行けるほどの遠浅である。とてもじゃないが、泳ぐという気分にはなれない。15分ほど海の生き物(主にクラゲ)と戯れたところで諦め、再度砂浜でSRW談義などをする。
そうこうするうちに時は過ぎ、潮が満ちはじめた。家族連れが潮干狩りをしていた浅瀬もいつしか完全に海中に没している。これは泳ぐ最後のチャンス。群がるクラゲをものともせず、もっとも深いと思われる方向に歩き続ける。いつまでも膝に達しないと思っていた水面も、ついに太股を越え、腰を越え、胸元に達した。さあ、泳ごう。クラゲには目を瞑って。勇んで平泳ぎを始めようとした僕に立ちふさがったのは、思いもよらない障壁だった。波が高い……。折からの強風にあおられて、波の高さは平均で50cmを越えようかという勢い。とてもじゃないが、顔を水面から出して泳ぎ続けられる状況ではない。かといって、透明度は我慢できるといっても我慢するのがやっとのレベル。水中で目を開ける気はさすがにしない。しかたなく、しばし背泳ぎの真似事をした後、意気消沈して砂浜に戻ったのであった。むう、この敵はいずれ必ず。

みなが海に対する敗北を認めた時点で撤収。サンプルよりも実物の方が遥かにでかい穴子丼に驚愕したり、自分が参加メンバーの中で最も貧乏であるという事実に愕然としたりした後、帰宅する。そうか、みんなだからあんなに余裕があるのか。

帰宅後、しばらくしたら、全身を猛烈な痛みが襲った。太陽に曝露していた表皮が全体に赤く変色し、熱を持ったようになっている。明らかに、紫外線曝露による火傷である。大学までは、この程度の日照で酷い目に遭うことはなかったのに。目前に30の大台が迫っているという事実を、思いもよらない形で見せつけられた夏の一日。

7月31日
日焼け跡はより痛くなりつつある。

萩谷朴『語源の快楽』(新潮文庫)を読了。知ったかぶりをする際のネタ本として読みはじめたのだがこれがなかなか。定説を一刀両断にしつつ、素人目には定説と優劣のつけかねる独自の説を提唱したり、語源と直接関係のない著者の思い出話が延々と語られたり、およそ豆知識本とは思えない。語源を紹介される言葉の方も半ば以上が古語と、ありがちな語源紹介本とは一線を画した作りになっている。全面的に信用するのは躊躇われるが、主流の古典解釈だけが全てだと思い込まないようにする解毒剤としては優れているし、何より読んで面白い。

エリック・マコーマック『隠し部屋を査察して』(東京創元社)読了。海外文学セレクションの第1回配本、『パラダイス・モーテル』において、その語りの怜悧さと、騙りの豊穣さと、落ちのあっけなさで読者を驚かせたマコーマックの第一短編集。異様なシチュエーションだけは十分に楽しめるが、正直、「だからなに?」という印象が残る作品が多い。中では、さまざまな資料を用い悲惨な落盤事故のおきた炭坑町のその後を描写する「一本脚の男たち」、辛辣冷徹怜悧残酷な宗教改革者ジョン・ノックスの新大陸での行状「海を渡ったノックス」が良かった。SF風の作品としては、巨大な「刈跡」が地表を次々と刈り取っていく「刈跡」、男性版『スキップ』、「ジョー船長」などがあるが、さほどぱっとしない。
多分、読者を選ぶので、とりあえず『パラダイス・モーテル』を読んでみてからにした方がいいかも。『パラダイス・モーテル』が肌に合わなかったのなら、読む必要はないだろう。

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