過去の雑記 01年 2月

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2月21日
恩田陸『上と外4 神々と死者の迷宮 上』(幻冬舎文庫)読了。新刊本を読み終えたのは実に三週間ぶり。わがこととは思えない事実だ。

三巻刊行時には随所で不安が囁かれていたが、どうしてどうして立派に持ち直している。冒頭、千華子がお父さん評をするあたりから恩田節全開で、本筋とは関係ない言葉が楽しめる。本筋の方も、最終回前の盛り上げるだけ盛り上げればよいパートだけに、とんでもないテンションの高さ。これがテンションを維持して着地するなら見事な作品になるだろう。いや、わりと手放しで絶賛。前巻刊行時、登場人物がカタカナの日本語で喋っただけで見限りかけた人がいたけど、その人もいまごろ心の底から反省しているに違いない。

残業は当分無い、はずだったのに理不尽な理由で残業。まあ、そういうこともあらぁな。とかなんとか思っていたら、幸運をつかみ損ねたことに気づかされる。ちっ。

風呂に入りながら、松山巌 編『偽書百撰』(文春文庫)読了。架空の書物の内容紹介を100編収録。出来の悪い駄洒落、パロディがあまりに多く、全体としてはつらめ。ただ、5本ないし10本にひとつ、「これは」というもの(『珊瑚物捕帳』など)がある。退屈で眠りかけたところに目の醒める作品があり、それでいて概ね退屈なので長湯にならない。風呂で読むエッセイ本としては、実に良いバランスだった。

2月22日
井上雅彦・編<異形アンソロジー タロットボックスII>『魔術師』(角川ホラー文庫)を読み終える。前半を読んでから半月近く間が空いてしまったのは、コンセプトアンソロジーの読み方としては失敗か。
今日読んだのは、ボーモント「魔術師」からの5本。<魔術師テーマ>という枠を考えると、やはりボーモントが飛びぬけている。どさ回りの老魔術師の心の動きを描いて余すところが無い。名作には名作と言われるだけの所以があるらしい。
アンソロジー全体としては、並の上、あるいは上の下というあたり。粒が揃っているのは確かだが、功為り名遂げた作品が多く驚きが少ない。惜しい。

ついに、ついに、残業せずに帰ることに成功。感無量である。感激のあまりカートゥーンをぶっ続けてみてしまったり。ケンケンとブラック魔王は往年の声優を使っているのに、トム&ジェリイはなぜ声優を変えているのか。「こんちトムさん、また何か企んでいるようで」ってー、ナレーターの名調子が聞けないのは、あまりにも哀しい。

そういえば「バイファム13」も見た。思い出は思い出のまま置いといてくれればいいのに。

2月23日
「それを観ていないのは根本的に間違っている」と、とある人に諭されていたので、金曜ロードショーで「天空の城ラピュタ」を観る。とても面白かった。

視点人物(パズー)の目的が非常にはっきりしているのが勝因なのだろう。2時間強、ほぼだれることなく観ることができた。物語、演出、映像、演技、すべてにわたって文句をつける気にならない。何より、「飛ぶこと」の表現が素晴らしい。軍の戦闘飛行船、海賊たちのオーニソプター、そして天空城ラピュタ。どの飛行シーンもそれぞれの魅力に溢れている。強いて文句をつけるなら、パズーの設計したグライダーが飛ぶシーンも見たかったというくらいか。もちろん、どのシーンにいれてもバランスを崩すだろうことは承知の上で。

2月24日
勢いで借りてきた「紅の豚」を観る。「ラピュタ」とはまったく別の意味で素晴らしい。
「ラピュタ」のバランスの良さはない。しかし、この作品に込められた無制限の趣味は、半端なバランスを遥かに越えた力を放つ。褒めるとしたらラピュタだけど、好きなのは紅豚だな。

昼遅くから新宿で名大SF研OB-ML関東組の細木さん(8)歓迎会。残念ながら諸事情により主賓は参加出来なくなったが、まあそんなことは些細なことなので、気にせずカラオケに行く。人非人の集団と言われても仕方があるまい。
パセラは昼間から回線が込みまくり。他はともかく、HyperJOYは入れた曲が飛ばされ続けた果てに1時間後にかかるという状態でちょっと使い物にならなかった。うーむ。
しかしHyperJOYはあまりにも魅力的だ。山本正之の強化も目を見張るが、それ以上に驚いたのがSex Machingunsの大強化。ファーストアルバムが全部入っているんじゃないかという勢いだ。試しに歌ってみた分については咽が続かなかったが、楽しかったのでまた歌おう。
二時間ほど歌った時点でみな満足したので、まさみやに移動して飲む。5時半から飲みはじめて、店を出たのは10時半。ちょっとひどすぎる気もするが、楽しかったんだからまあいいや。feel H"の音質がいかにすばらしいかを十分すぎるほど堪能させられた5時間だった。

2月25日
昼から池袋に出て大熊君達の悪企みを見物する。ただ後ろからついて歩いているだけだったが、それぞれの人の悪さが見られて楽しかった。

4時前に悪企みの犠牲者と合流し、お茶を飲む。犠牲者のはずだったお嬢さんは、悪企みを見事に受け流し、さらに攻撃に転じていた。さすが、数々の戦いを指揮してきた歴戦の策士。並の悪企みではどうにもならないようだ。次の機会にはさらなる精進が望まれる。

その後、改装中のジュンク堂に行く。色々と無謀な試みが見られて非常に楽しい。いや、ほんと、それは無茶だろう。

と、ただ笑っていたはずなのにいつのまにか文庫1冊、単行本1冊、まんが5冊を抱えていたのはどういうわけか。なにかに騙されたとしか思えない。
大体、4巻までしか持ってない『船を建てる』の6巻だけ買ってるあたり、どう考えても騙されているよなあ。

ジュンク堂を堪能した後、飲みに行こうという誘いを振り切り、柏に戻っておさんどん。無洗米は楽でいいね。CMは感心しないけど。

そういえば、帰りがけにはむちゃくちゃ久しぶりにスポーツ紙を買ったのだった。横浜は、昨日のオープン戦第1戦、今日の第2戦ともに11得点の猛攻で連勝。2月も終わらぬこの時期に、前評判通りの戦法で、若手主体のチームで、新外国人が活躍し、大勝するというのは、弱いチームにありがちな事態なので、不安は募るばかり。ああ、このままオープン戦優勝しちゃったりするんじゃないだろうな。

2月26日
ブルース・スターリング『タクラマカン』(ハヤカワ文庫SF)読了。収録7短篇中5篇が既読という数字の割には楽しめた。細部はどんどん忘れるようになった記憶力の低下のおかげだね。
本質的にラッカーの短篇である「クラゲが飛んだ日」を除くと、ベストは「聖なる牛」。この世界設定、頭悪すぎ。いや、もうストーリーが無いなんてこたどうでもよくなる。
全般に物語性よりも世界を重視する話が中心。ベタに政治が戦いあうチャタヌーガ三部作はどうかと思うが、他はそれはそれで楽しめる。いや、そらまあもう少しおまけが欲しいところではあるけれど。「招き猫」の設定で往年のツツイが書いていればさぞや面白いものになっただろう、とかね。

いくらなんでも締切間近なのでSF-Online賞に投票する。
SF長篇部門は『永遠の森 博物館惑星』。連作短篇を長篇と言いくるめるのはなんぼなんでも気が引けるが、他に候補が無いものは仕方が無い。全篇を通した仕掛けのある一本筋の通った連作だから、実質長篇と言うことで自分を納得させておく。『猫の地球儀』は最後まで悩んだ末に却下。物語が好きな話は、めったなことではSFのベストに投票する気にならないのだ。 < 歪んでないか?
F/H長篇部門は『レキオス』。はい。これのおかげでSF長篇に心底悩むことになりました。実際、この部門を『月の裏側』、SF部門を『レキオス』にしておけば悩む必要は何にも無かったんだけど、『月の裏側』でベストっていうのは気が引けて。悪くはないんだが、悪くはないんだが。
SF中短篇部門は「無限の暗殺者」。この部門はあまりにも選択肢が多すぎて、趣味を全開にする以外の回答が思いつかなかった。趣味を全開にした上でも、「月の消失に関する説明」「闇の中へ」「バーナス鉱山全景図」「少年の秋」あたりは同程度の魅力を放ってるわけで、一つにするのは本当に大変。「国内は無視」というあまりにも乱暴な条件をいれてこれなんだから、全体を見渡した上で選ぼうとしたらどれほど大変なことになることか。1位で20票行くのか?この部門。
F/H中短篇部門は「無理数の話」。こちらの部門はさらに大変。SFは、まだ徹底的にべたなSFに限るとか、SFM中心に視野を狭く取るとか、身を守る方法が数多くあるけど、F/Hとなると、最低<異形>は全部抑えて、というあたりから始まるので絶望的な数になる。それでも、飛びぬけた傑作があればそれはそれでどうにでもなるのだが、残念なことに、そういった夢のような作品には出会えていない。そんなわけで、敢えてわけのわからない作品にしてみたというのが今回の選択。「フクロウと子猫ちゃん」の方が良かったかなあ。
ノンフィクション部門は『思考する物語』。まともに数を読んでない部門だけに、投票するのも気が引けるが、この作品が評価されることは意味があるはず。
コミック部門は『ディスコミュニケーション 精霊編』。連載中でも投票可能となると選択肢が多すぎて何がなんだか。昨年完結した作品という縛りを勝手に入れて、こいつを選択。三島塔子の完全変形だけでも投票する価値くらいはあるだろう。
映画部門は「マルコヴィッチの穴」。当然でしょう。
他の部門は棄権。例年、努力が足りないとは思っているが、昨年はいつも以上に摂取した情報量が少なかった。深く深く反省するしかあるまい、って今年のこの2ヶ月はそれに輪をかけてるんだよな。来年は投票できないかも。

2月27日
「紅の豚」のついでに借りた「マーズ・アタック!」を観る。なんで今までこれを観ていなかったのか。っつーか劇場でみろよ。>俺

火星人たちの造形をはじめ全篇に漂う金のかかったチープさ。当たるを幸いなぎ倒す救いのない残虐さ。逃げ惑う群集シーンの中に、「ゴジラから逃げる群集」を混ぜてしまうような溢れんばかりの稚気。もう、何もかもが好み。

気に入らないシーンは一切無いっつー状態なわけだが、強いてベストショットを挙げるなら、やはり家族から愛されるマッチョな兄貴が骨になる瞬間だね。ここで快哉を叫ばないおたくは自分を偽っているとしか。

2月28日
近所のうどん屋のメニューに味噌煮込みを見つけてしまったので諦めて食べてみる。

讃岐うどんを看板にしている店にもかかわらず、麺は並の下。味噌煮込み用の麺が出てくることを期待するほど初心ではない(←どんな表現だ)つもりだが、こうぶちぶちちぎれられちゃ煮込みうどんだって食えやしない。さらなる精進を望みたい。

汁はふつう。若干辛さが足りないが、しょせん下総の片田舎のうどん屋に、尾張の味を期待する方が間違いってもんだろう。納得は行かないにしても諦めはつく味だった。

具はかなりの出来。海老天が乗っているというのは根本的に間違っているような気もするが、その天ぷらの出来は十二分なんだから文句は付けられない。これできちんと味のしみたかしわさえあれば完璧だったのに。惜しい。

総体としては60点。どうしても味噌煮込みが食べたいときの代用品としてはぎりぎり合格だろう。でも、次に来るときは天丼にしよう。

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