過去の雑記 01年 3月上

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3月 1日
先日来買い込んだまんがを読みたおす。芦奈野ひとし『ヨコハマ買い出し紀行』8巻(アフタヌーンKC)、竹本泉『てきぱきワーキン▽ラブ』6巻(ビームコミックス)、内藤泰弘『トライガン・マキシマム』5巻(ヤングキングコミックス)読了。

『ヨコハマ』はアルファさんの南関東漫遊記。なにげなく崩れている富士が良い。良い。うん。

『トライガン』がガントレット&ミッドバレイ篇決着。だあ、ミッドバレイもったいないなあ。かっこいいのに。

『てきぱき』は最終巻。盛り上がりもへったくれもない淡々とした最終回は、いかにもこの作家らしい。もっとも期待してなかったシリーズなんで終わったことへの感慨は皆無。とりあえず、コピー地球シリーズ最新作『トランジスタにヴィーナス』に期待するだけだし。いつ雑誌が潰れるんだろう。どきどき。

3月 2日
さらに漆原友紀『蟲師』1巻(アフタヌーンKC)、佐藤マコト『サトラレ』1巻(モーニングKC)を読了。あまりにもいまさらではあるが、素晴らしいファンタジーと、素晴らしいSFだ。

蟲師・ギンコが出会う妖異の姿をイメージ豊かに紡いでいく『蟲師』、サトラレというワンアイデアを徹底的に突き詰めていく『サトラレ』。ともにジャンルの方法論を最も純粋な形で踏襲しながら、新しい物語を作り出している。クリシェでもなんでもなく続巻が待ち遠しい。

3月 3日
一週間ぶりに都会の書店でお買い物。身の回りではどうしても見つからなかった結城心一『ももえサイズ』(零式コミックス)を購入。都会はいいなあ(遠い目)。

その後、一月ぶりにユタ。参加者は我孫子武丸、SF人妻、大森望、久世信、さいとうよしこ、堺三保、雑破業、志村弘之、添野知生、高橋良平、田中啓文、林、福井健太、藤元直樹、宮崎恵彦、柳下毅一郎、山本和人(あいうえお順、敬称略)。なんか信じられない人数なんですけど。

聞き取れた範囲での主な話題は、ティーンズルビー文庫のとある新刊、壮大な時刻表トリック、サブカル世界遺産、HyperJOYのすごさ、ダダの靴下、アシモフ三部作、駐車スペースの有効活用、学研まんがの功績、ジュブナイルに騙される、「俺にだって守るべきものがある」、30過ぎてカッターシャツが無いからといって礼服を着ないことの是非、オープン戦、F・ワンゼブンなど。納豆が食べられるようになってしまったエセ関西人では現役関西人のギャグについていけないとか、滑っても滑っても前に向かうことの尊さとか見所も多く充実した例会だった。
結婚式の司会を頼むなら誰に頼むべきかについてレクチャーを受けたのも収穫か。なぜ、僕がSFの文脈で結婚式をせねばならないのかというあたりにそこはかとない疑問は残ったが。っつーか、結婚式ネタを僕にふられても。
しかし、なにより思い知らされたのは普段人当たりの良い人の批判の痛烈さ。あの攻撃的な言動で知られる人が思わずフォローに回るんだからなあ。世の中というものは本当に恐いものですね。
ああ、上の方で人のギャグをあげつらっているが僕のネタフリもひどいものだった。久しぶりにこういう場に参加したのでネタの切れ味が鈍りまくり。実戦の場では、もっと神経を研ぎ澄ませておかないと。いや、何が実戦なのかはよくわからないが。

帰宅後、『ももえサイズ』読了。過剰に詰め込まれた異常な引用の数々。最後までついてくる奴は誰もいないだろうという読者置き去り感覚がすばらしい。おたくのダメ選民意識を見事にくすぐってくれる。その引用を惜しげも無く使い捨てる潔さ、数回前どころか前回の引きも見なかったことにしかねない投げやりな展開、まさにエロマンガ掲載ギャグの王道。手に入れるための努力に十分見合った感動を与えてくれる逸品だった。

3月 4日
昨日の横浜・ヤクルトは、序盤無警戒に走られまくって大量失点、中継ぎがふんばりなんとかゲームを作った9回裏、2点返した後の6連単打で3点入れて逆転勝利という、運頼み以外の何物でもない形で勝利したらしい。監督は森に代わっても、横浜らしさは今のところ喪われていないようで喜ばしい限り。願わくば、この大味な野球が今シーズンいっぱい続きますように。

というわけで、野球関係書籍をいくつか買い込んだ。いまさらながら小関順二『2001年版 プロ野球 問題だらけの12球団』(草思社)は秀逸。扇情的なタイトルとはまったく無縁の、冷静な戦力分析の書だ。世代間のバランスに重きを置いたチーム分析は説得力が高く、ペナントへの興味をかきたててくれる。これで名鑑を読むのにも熱が篭ろうってもんだ。

田中啓文『銀河帝国の弘法も筆の誤り』(ハヤカワ文庫JA)読了。結局、「脳光速」(なぜ一発変換するかIME95……)が一番楽しめたというあたり、僕は田中啓文の良い読者とは言えないのかも。地口主体の作品は努力が努力に見えてしまうのがどうも。グロテスクなガジェットの大量投入は好きなんだが。

目黒三吉(原作:奥瀬サキ)『低俗霊DAYDREAM』1巻(角川コミックスA)も読了。霊がなんにも低俗じゃない気がするんですがいかがなもんでしょう。それぞれに辛いところに入り込みやすい作家同士の合作なわけだが、奥瀬サキのギリギリの痛みも、目黒三吉の心地よい虚ろさも鈍っているんで今一つ入り込めない。先鋭を武器にする作家の作品は、純粋なところで楽しみたい。それが作家自身を傷つけるものなのだとしても。

3月 5日
中村融/山岸真・編『砂の檻』(河出文庫)を読みはじめる。エリスン、ディレイニーと並ぶと、ゼラズニイって印象薄いなあ。中村融の評、「結局、未完の大器のまま」って部分には思わず肯いてしまったよ。

3月 6日
中村融/山岸真・編『砂の檻』(河出文庫)の続きをニーヴンまで。ディッシュ最高。ラファティなんぞ足元にも及ばぬ出来ですね。< 信仰はどうした

谷川渥『幻想の地誌学』(ちくま学芸文庫)読了。全体は、大きく読書ノートの前半と、幻想地図論の後半に別れる。どちらかといえば、ひとつの主題のもと、次々と連想を展開する前半の方が好み。

小関順二『2001年版 プロ野球 問題だらけの12球団』(草思社)も読了。歪んだプロ野球のシステムに対する改善案は、ちょっと性善説にすぎるかも。現実的なのは、読売や大リーグがスター選手を奪うスピードより速くスターを輩出し続けるという案くらいか。

3月 7日
例によって一瞬の差でバスに乗り損ね、無機材質研究所のバス停に佇んでいたまさにその時、目の前に次のバスが現れた。ここでの選択肢が、「そのバスに乗り込む」以外のものであり得ようか。もちろん、他の選択肢などありえない。というわけで、すぐさま並木一丁目停留所にいたバスに乗り込む。そう、東京駅行きの高速バスに。

上野駅で降り、しばし駅構内を見てまわった後、せっかく東京まで来たのだからと、池袋(あるいは興がのったら中野でパルタのレイトショー(*))まで行こうと決意する。思えば、これが間違いの元だった。

山手線の電車に乗り、なかなか発車しないのを訝っていると、不穏なアナウンスが流れはじめる。「先ほど、恵比寿駅で人身事故が発生しました」。おい。

しかし、だからといって常磐線に乗り換える気にはならない。わざわざ高速バスに乗ってきたのだ。せめて都会の本屋なり、パルタのレイトショーなり、ここまで来た価値のあるものに触れて帰りたいじゃないか。「京浜東北から埼京線に乗り継げば大丈夫さ」というアナウンスを信じてそのように移動しようとしてみた。が。

北に向かう京浜東北線は予想外の混み具合。埼玉方面に向かう客に、本来山手線に乗るべき客までいるのだから、そら混みもするだろう。ともかく、赤羽。赤羽まで出れば。そう信じて<異形コレクション>なぞ読んで混雑に耐えていると、不安を煽り立てるアナウンスが流れはじめた。「恵比寿駅の事故に伴い、埼京線も運転を見合わせております」。予想外に継ぐ予想外の展開に呆然としながら、他に対応策も無くそのまま乗っていると、まさに赤羽につかんとする頃に「埼京線が新宿までの往復運転を開始した」との情報が入った。ラッキー。そのまま赤羽で降り埼京線に乗り換えて、これで池袋まであと少し。安心しきったまま次の駅に着いたところで、新たな悪夢が押し寄せてきた。「電車が詰まってるんで当分停車するぜ。次に動くのはいつだろね」。

待つこと30分。ようやく池袋駅に着いたのは上野を出てから実に80分後だった。まさか、つくば・上野より、上野・池袋の方が遠いとは。世の中は不思議に満ちている。

新宿まで乗っていく勇気もわかなかったので、そのまま池袋で降りグランドオープンなったジュンク堂を見てまわる。パルタはまたこんどで許してやらあ。さすがに前回訪問から二週間と立っていないので、(少なくとも1、3、B1は)ほとんど変わっていなかったが、見落としを確認するだけでも十分楽しめたのでまあ良しだ。文芸のフロアに青林堂を並べるのはわかりにくくないか?とか。

油断して買わされた『山形道場』を読んだりしつつ飯を食って帰宅。上野・池袋間はなんの因果か立ちっぱなしだったので帰りは座って行こうと、空いている車両に乗ったら、一面に嘔吐物が広がっていて結局座り損ねたり、ましてや常磐線に日暮里から乗って座れるわけが無かったり色々なのだった。いや、目的は果たしたんで不満はないんですけど。

*)今考えてみると、パルタのレイトショーって土曜からだったような。

中村融/山岸真・編『砂の檻』(河出文庫)読了。うーむ。60年代は無駄にカッコ良いなあ。もう、50年代までとは明らかにステージが違うというか。いや、50年代への信仰を捨てたわけじゃないですが。
ベストを挙げるなどという冒涜的なことはできないというほどの秀作ぞろい(秀作が入手難というのは60年代ベストの強みかも)だが、敢えてあげるなら、ディッシュ「リスの檻」、ヴァンス「月の蛾」、エリスン「「悔い改めよ、ハーレクイン!」とチクタクマンはいった」あたり。スタイルは偉大だね。
ラファティも悪くないけど、この中にあるとちょっと軽い。このラインナップと互していこうとするなら「日の当たるジニー」クラスでないと。いや、それでは内宇宙物じゃなくなってしまいますが。

問:「町かどの穴」は内宇宙物だとでも言うのか?
答:わりと

3月 8日
井上雅彦・編<異形コレクション>『帰還』(光文社文庫)をいまさら読み終える。ふつー。

一作を選ぶなら、五代ゆうのグロテスク童話「或るロマンセ」を推す。お友達に囲まれて過ごしながら、愛する母の帰りを待つかわいそうな少女の物語。世界が見えた瞬間、プラスチックを思わせる不思議な文体が効いてくる。

他では、石神茉莉「竜宮の匣」が気になった。ネタはありきたりだが、ラスト1行の違和感が全てを救っている。普通、こう展開した話を、この器で、こう落とすか?

3月 9日
大きな鍋が現れた。これでパスタを茹でるのも、カレーを作るのも自由自在だ。コンロの口が一つしかないという事実はいかんともしがたいけどな。

3月10日
先日来、自宅で使用しているマシンの液晶ディスプレイが不調。下半分だけではあるが、三原色に分裂してしまい文字がいかにも読みづらい。我慢すればなんとか使えるのだが、まとまった文章を打つには、さすがにストレスが溜まる。こいつを買ったのは、修士論文を研究室の机で書くためだったから、97年の1月以来、まる4年間使い続けている計算だ。よくもったもんだとは思うが、さすがに寿命だろう。Pentiumの120MHz、メモリ16M+32M、HD1GBの環境は正直つらくなってきたところだし。第一、いまどきPC98というのもね(そう、FDはCドライブなのだよ)。

というわけで、近所の電気屋にパソコン1個買いに行く。事前情報何もなしでパソコンを買うというのはほとんど犯罪ではないかと思うのだが、事情が事情なので仕方がない。
とりあえず、タッチパッドがついてないノートで、HDが10GB以上で、店頭在庫よりもう少しあるやつという条件で選んだら、Think Padになってしまった。しかも搭載CPUはpentium IIIで、Office2000がインストールされている奴。IBM-Intel-Microsoftとは。少しでもプライドのある人間ならこんなマシンは選べないだろう。どうだまいったか。
帰宅後、マシン環境を整えようとして、はたと今さっき購入したマシンにはフロッピーディスクドライブがないことに気づく。しばしの熟慮の後、PCカード型フラッシュメモリを購入。なんか無駄遣いしているような気がするんだが。
なにはともあれ主要なデータを移し終わり、いざマウスを付け替えようとして重大な事実に気づく。今まで使っていたマウスは98用だ。そうさ、すぐさま電気屋にとって返して、マウスを買い足したさ。無駄足三往復の果てに、なんとか実用可能なレベルの環境構築は終了。全洋画2nd Editionのインストールに失敗(Kernelが落ちてインストールできねえぜ、と怒られた。OSがWindowsMeなのが問題か)したり謎のトラブルはあったが、それも今は良い思い出だ。さあて、新たな環境で、データベースの入力でも……。あ、PC98じゃないから、桐Ver5.0のインストールができないや。いいさ、明日買いに行くさ。

原稿は?

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